世界で唯一の「立体錯視」研究者!『クレイジージャーニー』杉原厚吉氏インタビュー

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2023年7月30日(月)放送の『クレイジージャーニー』(毎週月曜よる9時)錯視研究の第一人者である杉原厚吉さんが番組初登場!

まるでイリュージョンのように、図形や立体が別物に見える作品を自作している杉原さんは、毎年世界大会が開催されている「ベスト錯覚コンテスト」で4度も優勝。展示会なども行い、唯一の立体錯覚研究者として大活躍している。今回の放送では、杉原さんの活動などを掘り下げつつ、手のひらサイズのものから人が乗れるほどの大きな作品まで、杉原さんがこれまでに作り上げてきた数多くの作品を大掛かりなセットに展示し、MCである松本人志、設楽統、小池栄子が実際に体験している。収録を終えた杉原さんに、収録の感想や“立体錯視”の研究について、最終的な目標などを伺いました。

錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん

収録を終えてみていかがでしょうか?

スタジオに作品を展示して見ていただける機会をいただけてとても幸せに感じております。また、想像以上にMCの方々に楽しんでいただけたようで私も大変満足です。

これまでどのような研究をされてきたのでしょうか?

工学の大学院を修了した後すぐに国立の研究所に就職したんですけど、そこでロボットの目の開発チームに配属され、画像から立体を取り出すためにどんな計算をしたらいいのかという研究をしてました。その中で、不可能図形という“だまし絵が立体になる”ことを見つけて、立体として作れるのに、人が見ると作れそうにないって感じるのはなぜだろうと思ったのと、人間の脳による視覚情報処理にも興味が広がり錯覚の研究をするようになりました。

数理工学が僕のバックグラウンドなんですけど、実際にやっていた研究は、図形とか立体など形をコンピュータで扱うときに、どんな情報処理、どんな計算をしたらいいかという計算方法の開発でした。長い間その研究をやりつつ、“だまし絵が立体になる”というのが面白かったので趣味で時間外に細々コツコツと研究を続けてきたんです。

錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん

それで14年前、60歳のときに早期退職して明治大学に移って独立研究所に所属したんですけど、目で物を見る仕組みを数学使って調べることをメインにやっていいと言われて、錯覚の研究を昼間も堂々とできる環境が手に入りました。

いろんな作品を今までよりもスピードを上げて作って、そのうちの一つが「ベスト錯覚コンテスト」という世界大会で優勝して、大きな研究費をいただけるようになって気が済むまで研究が出来るようになりました。

趣味として錯視の立体を作り始めたのは?

45年ほどですね。でも今回の放送でメインとして展示した“鏡に映して姿が激変するもの”を形にしたものは2015年に1作目が出来ました。そういうものが作れると気づいたのが2014年の春なのですが、数ヶ月かけて紙細工で作って、これならいけると確信を持ってから3Dプリンターのためのデータをプログラミングで作るという工程を経て1年ほどかけて作り上げました。最初にできたのは本当にお粗末なもので、綺麗な立体になるように改良をいっぱい加えていきました。

3Dプリンターができるまでは紙から展開図を切って折ってというやり方で作ってましたが、平面で囲まれた立体しかほとんど作れなかったんですよね。階段みたいなものも作れるんですけど、円錐などはできず・・・それで20年30年やっていたんですけど、3Dプリンターでという便利なものができて大変助かりましたし、作れるものも広がって大変嬉しかったです。

錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん

“世界で唯一の錯覚研究”とのことですが、この研究をしているのは杉原さんしかいないのでしょうか?

そうですね。傾倒的になっているの僕だけだと思います。アーティストの方で錯視をテーマにした作品を作ってらっしゃる方はいて、例えばイギリスにパトリック・ヒューズという方がいるのですが、でこぼこを利用して「逆遠近錯覚」を用いた作品を作られているんです。でも立体錯視を設計・製作しているのは僕だけですね。

最初はご家族や周囲の方々に理解されないこともあったようですが、活動の広がってきたときはどのような反響があったのでしょうか?

最初の頃は立体を紙工作で作って「ほら」と見せるんですけど、普通に見てもらっても錯覚は起きないので、立体をセットして三脚の上にのぞき穴をセットして、うまく場所を調整して、それを覗いてもらって初めて錯覚を楽しんでもらえることもあって中々ハードルが高かったんです。でも実際に映像や写真なども活用し、自分で位置を調整してこの位置から見てほしいと指定ができるような展示なども増えて、じわじわと楽しんでもらえる機会が増えたと思います。見ていただければ、立体錯視の面白さも感じていただけるので、段々と受け入れていただいたなと思います。楽しんでいただいているのを間近で感じて私のモチベーションが上がっていて作品も増えていったので、機会があればぜひ皆様にも実物を見て体験してもらいたいです。

“立体錯視”を作っていくうえで、最終目標はなんでしょうか?

だんだんと錯覚が起こる指定範囲が広くなってきてるんですけど、どこから見ても大丈夫ってわけではないんですよね。今の原理ではまだ無理なのですが、別のアプローチをしてどこから見ても錯視が起き続ける立体をぜひ作りあげたいです。

錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん錯視研究の第一人者・杉原厚吉さん

最後にメッセージをお願いします。

今回放送では映像で立体錯視を楽しんでいただけるのですが、両目で見るものを、直接見るということと撮影した映像を見るというのは結構違うんです。映像では錯覚が起きた状態を完璧に見えることが出来るのですが、直接見る場合はある一定の場所から見ないといけないということもあって、そのピントが合った時の高揚感はたまりません。ですので、ぜひその高揚感を機会があれば実際に感じていただきたいです。

また、この研究してる上でよく人から「(錯覚に騙される)脳って愚かなんですね」「稚拙なんですね」というようなことをいただくのですが、決してそんなことはなく、脳が優れているからこそ足りない部分などを脳内で補強し錯覚を引き起こしているんですよね。優秀すぎている部分があるから、普段の生活で役立ってる機能がたまたま意地の悪いものを見せられて暴走するという感じです。ですので、「脳」についてそういった印象を持たれていた方には改めてそうじゃないんだよということも理解していただけるんじゃないかなと思います。

自信のある楽しい作品がいっぱいありますので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

番組情報

クレイジージャーニー
毎週月曜よる9時から放送中

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