TBSでは、毎週金曜よる10時から山田裕貴主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』を放送中。同じ電車の車両に乗り合わせた見ず知らずの乗客たちが、未来の荒廃した世界へワープし、生き抜くためにサバイバル生活を繰り広げる予測不能のヒューマンエンターテインメントだ。
ついに乗客たちが荒野の世界から現代へと戻ってきた今、主人公・萱島直哉を演じる山田裕貴はどんなことを思っているのか――。
――これまでの撮影を振り返って感じたことを教えてください。
『ペントレ』の現場は、キャストもスタッフさんも、口を揃えて「過去一番過酷」と言っています(笑)。そのことに対してヤバい…と深刻になっているというより、作品で紗枝(上白石萌歌)が言う、「やれるだけやってみよう!」の気持ちで必死に頑張ってきました。
直哉というキャラクターは、少し前の自分を見ているような気がします。だから、学びというより、こんなことを思っていたな、こんなことを感じていたなと僕は自分を振り返っているような感覚があるんです。
直哉は“母親がこうだった”“弟がこうだった”と他人ばかり意識して、自分の自由を生きてなかった人物。僕も以前は人のことしか気にしていなくて、「誰かがそう思うんだったらそれでいい」という考え方をしていたんですが、いい意味でもっとワガママに生きようと考えるようになったんです。僕が楽しくないのであれば楽しくないですしね。
そうやって僕が正直に生きようと思うようになったきっかけは、多くの方や作品と出会い、いろいろな考え方を吸収していく中で、シンプルに肩の力を抜いていいんじゃないかと思ったんです。

――特に印象的だったシーンはどこですか?
白浜優斗を演じる赤楚(衛二)くんはセリフがないときの表情が特に素敵ですね。影を感じる表情とか。赤楚くんとは、「僕たちは、直哉と優斗の両方の面をそれぞれが持っているよね」と意見が合うなど、心の奥底で繋がれたうれしさがありました。
上白石さんのお芝居は、6号車の人たちによって紗枝が船に閉じ込められたときの叫びがとても印象的でした。紗枝と直哉の間には、恋なのか愛なのか分からない関係性が育まれているので、直哉が「よく頑張った」と言った後の紗枝の表情だったり、安心して泣き崩れる顔だったりが印象に残っていますね。
第8話で加藤(井之脇海)が玲奈(古川琴音)に、もし玲奈がこの世界に残るなら、「生きて生きて、生き抜いてほしい」と言うシーンも好きです。
玲奈はずっとツンケンしていますが、紗枝に水を渡そうとするけど行けないみたいな、本当は寂しいんだろうなという感情がとても伝わってきました。
米澤大地を演じる藤原丈一郎くんは、本人から芝居経験が浅いと聞いていたので、第6話のような場面で涙を流せたことには感心しました。彼と話して思ったのが、苦労してきている分、人の気持ちを分かることができるのだと。だからこそのお芝居だったんだなと思いました。
江口和真役の日向亘くんと佐藤小春役の片岡凜ちゃんも、まだ自分で表現できない部分を、自分で悩んで考えながら演じていた様子が印象に残っています。
田中弥一を演じる杉本哲太さんは、『ペントレ』の世界観やキャラクターを壊さないまま自由にお芝居をされていて、素敵だなと。僕があこがれるお芝居スタイルで、ベテランの妙を感じました。
そして寺崎佳代子役の松雪泰子さんが放つセリフは、やはり説得力がすごいなと思いました。以前舞台をご一緒したときにも感じたのですが、今回改めて思いましたね。
登場人物みんな、好きなキャラクターですし、好きな出演者です。キャストだけでなくスタッフの皆さんとも、長い期間、同じ時間を過ごしてきたので、すべての方たちに感謝を伝えたいです。
――直哉のバディである優斗を演じたのが赤楚さんでよかったと思ったことがあれば教えてください。
どの俳優さんも“相手のお芝居を受けて返す”ということはしていると思います。でも僕が赤楚くんに感謝しているのは、それ以上のゾーンに踏み込んでくれたことです。俳優としてだけではなく、人としての心を開いてくれました。彼自身のことや僕自身のこと、生きてきた環境や人生観を話す機会があって、彼が感じる愛や孤独への感覚が僕と似ていたので、とても深いところで繋がれた感じがしました。
彼がすごく真っ直ぐな目で、「この作品で山田くんに出会えてよかった」と言ってくれたことで、「本物のバディ」の領域に辿り着けた気がしました。彼からそういう言葉をもらえたことは、本当にうれしいことでした。
――すべての撮影が終わったとき、どんな気持ちになっていると思いますか?
終わったら、まずは「僕は何ができたのだろうか?」と考えると思います。
水もない食料もないというところから始まったこの作品を観て、今それがあるということがどれだけ幸せなんだろうと、視聴者の方に思い返してほしいとずっと考えていました。でも実際思い返してもらうことは難しい。僕にできることはこの先、そういった「願い」や「祈り」のようなものを、お芝居に込めていくことだと改めて思いました。
今まではいただく仕事があるかぎり、全力で突っ走るということを続けてきました。これからは、自分がどうしたいのか、どんな俳優になりたいのか、自分が本当は何をやりたいのか、自分に問いかけたり、自分の声を聴いたりする時間も、もっとつくりたいと考えています。
――この作品に携わって感じたことを聞かせてください。
温かい人たちに触れられたことですね。キャストやスタッフさんも同じように大変なのに、「撮休(撮影が休み)の日、大河ドラマの撮影だったんでしょ?」と心配してくれる方が多くて。そういう温かさに触れて、自分ももっと温かく、みんなが「この人ホントに楽しいな」と思える人になりたいと思いました。ただ頑張ればいいというものではないぞ、と(苦笑)。
また、樹海や崖、山で撮影をしていたので、荒野から戻ってきた世界を街中で撮影していると違和感を覚えるようになっていました(笑)。今まではそれが普通だったのに、慣れというのは怖いですね。現代の人は今の何でもある世の中に慣れてしまっているんだろうなと、この作品に携わって感じています。自分の本当の幸せを確かめようと思わせてくれたこの作品にとても感謝しています。

――改めて9話の見どころをお聞かせください。
赤楚くんとも「9話って最高だよね」という話をしました。
全部に100%の力を注いでいたし、全部100%になれと思って演じてきたので、選ぶのは難しいのですが、強いて挙げるなら、「この世界は最低だ」と言うシーンがすごく印象に残っています。僕も実は、人に諦めていた時期がありました。どれだけ相手を信じたいと思っても、伝わらなくてもどかしい気持ちになることが多かったんです。かといって、そういう人を無視したくない。このシーンでそうなると思っていなかったんですが、自然に泣きそうになってしまって…。僕の魂がそうさせたんだろうなと感じています。
■番組概要
[タイトル]
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
[放送日時]
毎週金曜よる10時~10時54分