シックなスイートルーム制作秘話『ラストマン-全盲の捜査官-』

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TBSでは現在、日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』(毎週日曜よる9時)を放送中。事故で両目の視力を失ったFBI特別捜査官・皆実広見(福山雅治)と、そのアテンドを任された刑事・護道心太朗(大泉洋)が、凸凹バディを組んで難事件に挑む痛快ドラマだ。

今回は、皆実が日本滞在中に宿泊しているASTRAL HOTEL TOKYOのスイートルームをデザインした、デザイナーの古積弘二氏に話を聞いた。

設定は“ハイエンドなホテル”のスイートルーム

米連邦捜査局(FBI)の特別捜査官で、アメリカから期間限定で交換留学生として来日している皆実広見。日本の警察庁と米連邦捜査局の連携強化を図る制度『日米刑事共助協定』の始動にともない来日した。皆実は警察庁にとって、VIPゲストなのだ。皆実のことは、丁重に扱うよう各所通達されている。だからこそ、滞在中のホテルもハイクオリティだ。
「皆実の日本滞在中のホテルは、ハイエンドの設定です。とはいえ広さはそこそこにして、現実感を損なわないように考えました。とはいっても、110平方メートル以上ありますのでスイートルームとしては最高級クラスと言えるのではないでしょうか」(古積氏)。

コンセプトは「視覚以外の感覚で感じられる空間」

福山雅治演じる主人公・皆実は過去のある事故がきっかけで両目の視力を失っているというキャラクター。スイートルームのデザインをするにあたり古積氏は、「まず視覚以外で感じる空間をイメージしました。目を閉じて、音や匂い、風などの情報を感じられるところに意識を集中させ、そこにあるものや、起きていることを想像したんです。すると、バルコニーの窓からは、街の喧騒が聞こえるだろうなとか、風がそよいだらレースが揺れる音がするだろうななど、聞こえてくる音から多くの情報を得られることが分かりました。そこで皆実が感じるであろう情報が、引き立つようなレイアウト、デザインを考えることにしました」と、教えてくれた。
リビングの床は大理石の硬さを視覚からも感じるようなメリハリの利いたモノトーンの配色、壁はブルーグレー1色と、視覚情報としての色数を抑えることで、シンプル&シックに。「壁は、壁紙ではなくAEP(水性塗装)を塗って仕上げています。シリアスとユーモラスが混在するドラマの世界観を邪魔することがないよう、また、ライティングや映像で調整することで雰囲気を変えられるよう、色にもこだわっています。塗装する場合、既存の色を指定することが多いのですが、今回は見本にない色をオリジナルで調合して塗っています。高級ホテルという設定で、仕上げが塗装のみというのは、僕としては挑戦だったのですが、間接照明を当てると落ち着いたグラデーションになるし、朝の陽ざしを浴びると明るめの水色にもなる。すてきな壁に仕上がったなと思っています」とこだわりを語った。

『ラストマン-全盲の捜査官-』セット秘話『ラストマン-全盲の捜査官-』セット秘話

大きなダイニングテーブルに込めた思い

セットには、家具メーカーの協力を得て、“ハイエンドなホテル”という設定に見合う高級家具が置かれているという。なかでも中央に置かれている大きなダイニングテーブルは思いを持ってセレクトしたそうだ。
「このドラマの大きなテーマのひとつに、“家族”が挙げられます。ホテルという仮住まいであっても、食卓はそれを最も象徴するもの。人が座る位置で、その人たちの関係性や距離感が表現できたら、という思いから、大きなダイニングテーブルを選びました。食事のシーンなど、バディの距離感にも注目してご覧になっていただければと思います」(古積氏)

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LEDウォールを用いた印象的な場面

古積氏に、印象に残っているシーンを聞くと、「第2話の終盤、バーカウンターで皆実が朝から仕込んでいた肉じゃがの味をととのえているシーン」とのこと。それは心太朗が、魚を持って来るまでのわずかなシーン。皆実以外、誰も部屋におらず、夜景と間接照明が照らされている場面だ。「ひとりのときの皆実は、室内の灯りはつけず暗闇で過ごしているであろうということから着想しました。今回のスイートルームのセットには、ベランダの先に『LEDウォール』を設置しているのですが、スイートルームの照明が消えているこのシーンでは、暮れかけた街の景色が薄暗い室内の床やピアノに映り込んでいます。これは今回のセットプランで最も実現させたいと思っていたビジュアルでした」(古積氏)
※上記の写真は、その後、ベランダで心太朗と一緒に肉じゃがや焼き魚を食べながら語るシーンのもの。
これは従来の、クロマキー合成(緑色のスクリーンを背景にして撮影し、あとから緑の部分に別の背景を合成する撮影技術)や写真幕(背景を描いた布)では実現しづらい表現だ。
「セットの“背景”が、記号的な意味合いだけでなく、表現としての幅の広さを手に入れられたと思えるものでした」(古積氏)

ドラマの中で、心太朗が父親への思いを吐露したり、甥の泉(永瀬廉)の恋愛にまつわる会話が飛び出したりと、登場人物たちの個性があふれるシーンが多いスイートルーム。今後はどのようなシーンが描かれる場所となるのかも、見逃せない!

■番組概要
[タイトル]

日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
[放送日時]
毎週日曜よる9時~9時54分

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