『オールドルーキー』芸能マネージャーから転身、スポーツマネジメントのリアルとは

公開: 更新: TBS Topics


TBSで放送中の綾野剛主演の日曜劇場『オールドルーキー』。37歳で突如現役引退に追い込まれたプロサッカー選手・新町亮太郎(綾野)が、スポーツマネジメント会社「ビクトリー」に入社し、奮闘する姿を描いたヒューマンドラマだ。

今作のテーマとなっているのはスポーツマネジメントの世界。その監修として作品に関わっているスポーツビズの山崎隆士氏に、実際のスポーツマネジメントの仕事について、作品の見どころなどを聞いた。

大事なのはアスリートに熱意を伝えること

――実際のスポーツマネジメントの仕事について教えてください。

この作品は本当にリアルにスポーツマネジメントの世界が描かれています。現役選手であれば、最終ゴールは選手が勝つこと。そのために何をすべきかを考えて、より良い環境で競技に専念できるように整えることが私たちの仕事です。例えば、第5話で城(中川大志)さんがアスリートを発掘して、メディアに出したり、スポンサーを見つけたりしていますが、まさにそういうことをしています。

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――これから注目されそうなアスリートはどのように見つけていますか?

私は競泳、フェンシング、競馬などを担当していて、自分が担当しているアスリートの競技は自然と詳しくなりますし、知り合いも増えるので、「とんでもない選手が出てきた!」などちょっとした情報も聞き逃さないようにしています。また、やはりその競技を長年取材されている記者の方の情報量がとにかくすごいので、記者の皆さんに取材したりもしています。

――オリンピックや世界大会は注目していますか?

もちろんです。実力は分かっていても、実はすごく面白いキャラクターだったなどは、大きな大会で注目されないと分からないことが結構あります。そういう時は大会が終わった後に声をかけることもあります。自分が関わっていない競技でも、スポーツ新聞などでの取りあげられ方でその人の人柄が分かる場合もあるので、人気が出そうな人を見逃さないためには、やはりメディアの皆さんからの情報は欠かせません。

――山崎さんは芸能事務所のマネージャーからスポーツマネジメントの仕事へ転職していますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

もともとは人事の仕事をしたくて前職を辞めていて、マネジメントの仕事は他のところではやらないと決めていたんです。でも、今の会社から声をかけていただいて、迷いながらも「今までの経験が生かせるなら」と入社したのですが、最初の頃は全然ダメで本当に苦労しました。仕事に慣れたのは3年目ぐらいからです。

――エンターテインメントとスポーツの世界で、マネージメントという点で違いはありますか?

誠意や熱意を持って、タレントや選手に向き合うことは同じです。将来どうなっていたいかというイメージを持って、戦略を考えるところも同じ。大きな違いは、関わる関係者の数かなと思います。スポーツは、一人の選手に対して、チーム、コーチ、スポンサー、協会、メディアなど多くの方々とやり取りせねばなりません。スポンサー企業への売り込みもマネージャーが直接行う事が多く、当然そのための企画書も作成します。企画書も売り込むアスリートの紹介資料だけでなく、スポンサーになることでその企業の問題点をどのように解決できるのかなども考えて書きます。エンターテインメントの世界とは違い、ビジネス寄りだと思いました。前職での経験は20パーセントくらいしか生かせてないかもしれません。

――もともとスポーツは好きだったのでしょうか?

高校生の頃から毎日スポーツ新聞を買ってチェックするくらい好きでした。一番好きな競馬や、大きく取り上げられる野球やサッカーだけではなく、それ以外の記事も全部読んでいました。また、前職でスポーツ番組やオリンピックに関わらせていただいて、いろいろなスポーツに触れる機会があったのは、今に生かされていると思います。

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――今作でスポーツマネジメントの魅力を改めて感じたシーンを教えてください。

第3話で塔子(芳根京子)さんがマラソン選手の秀島(田中樹)さんと向き合うシーンですね。担当している選手の今までの成績やレース展開を何も資料を見ずに一気に話した後、秀島が今後について迷っている時に、きちんと理由を言って方向性を示すことで、秀島に熱意が伝わるところです。マネージャーの気持ちと熱意がアスリートに伝わって物事が進み始めるところはこの仕事の魅力だと思います。

そして、第5話の新町さんと城さんの熱意がフェンシング選手の三咲(當真あみ)さんにもスポンサーにも伝わって、一度無くなったCM契約を結ぶことになったところも印象的でした。三咲さんがCM内容に難色を示したために契約が無しになったのですが、それでも諦めずにアスリートとスポンサーそれぞれ譲歩してもらって契約をまとめるなんてとんでもないスキルなんですよ。新町さんの熱意があったからこそ、スポンサーももう一回、三咲さんがCMに出てくれるように絵コンテを書き直そうとなったわけで、なかなかできないことですし、究極のマネジメントの形だと思います。

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――新町亮太郎の印象を教えてください。

アスリートのためを思って何事にも真摯に向き合うところは、全マネージャーが見習うべき姿だと思いますし、ずっとこのままでいてほしいです。どこかで大儲けしてやろうという気持ちが入るとうまくいかないので、新町さんの姿は本当に素晴らしいと思います。謙虚さの中にも、一本芯の通ったところは、とても勉強になります。

――最後にスポーツマネジメントの観点から、この作品の注目ポイントを教えてください。

この作品の注目ポイントは、ビクトリーメンバーの、マネージャーとしての気持ちの描き方が本当にリアルなところです。担当変更で悩むことや、自分の考えに疑心暗鬼になることはすべてのマネージャーが経験します。また、どういう考えでアスリートやクライアントに向き合っているかがよく表現されているので、スポーツマネジメントをしている人たちはこういう気持ちで働いているんだと少しでも知っていただけるかなと思います。そして活躍するアスリートのそばにはこういう人たちがいて頑張っているんだと思ってもらえたら嬉しいです。

【山崎隆士プロフィール】
新卒で証券会社に入社し、2年間勤めた後、芸能事務所でマネージャーとして働く。2013年に退社し、2014年にスポーツビズに入社。初めて担当したのは荻原次晴小谷実可子。現在は古川奈穂池添謙一岡澤セオン才藤歩夢本田武史寺川綾、荻原次晴を担当している。

■番組概要
〔タイトル〕

日曜劇場『オールドルーキー』
〔放送日時〕
毎週日曜よる9時~9時54分

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