吉田羊×國村隼のW主演により、自由奔放な父と、それに振り回される中年の娘の家族の愛憎物語を描くドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京ほか)の第1回が、4月9日(金)に放送された。
原作は、ラジオパーソナリティーでコラムニスト、作詞家と、多彩な顔を持つ「独身のカリスマ」ジェーン・スーのエッセイ。吉田羊がジェーン・スーを演じているのだが、見事な再現度である。
冒頭では、既婚者子育て中の友人からの何気ない一言、母親から電話で言われた言葉、会社での出来事など、「結婚」に関する様々なモヤモヤの場面が積み上げられる。こうした女性たちの気持ちをすくい上げるのが、主人公でラジオ番組『トッキーとヒトトキ』のパーソナリティであるトッキーこと蒲原トキコ(吉田羊)だ。
最初のお悩み相談コーナーで紹介されたのは、おそらく冒頭の映像とリンクしていて、「結婚した友達の話を聞く限り、結婚生活が楽しそうに思えない」「自由や楽しさを手放すことになるのではないか」というもの。同じことを言う友人、知人の顔が瞬時にいくつも頭に浮かぶ。非常にリアルだと思ったら、「ラジオの相談はほとんど実際に過去のスーさんのラジオであったものです。それをスーさんに当時の回答をさらに今ならこう答えると監修して頂きました」(プロデューサー・佐久間宣行氏Twitterより)というから、納得だ。
この相談に対し、「独身って麻薬だと思う。そのくらい楽しいから」という一、寂しさと天秤にかけることを勧めるトッキー。さらに女性が男性に「寄り添う」のではなく「お互いに寄り添えるか」が大事という名アドバイスをする。
しかし、そんなトキコでも、父・哲也(國村)には弱い。18年前に母を亡くしてから、2度ほど同居を試みたがダメだったというが、ときどき外食を一緒にする関係になった現状を見ると、弱さの理由がなんとなくわかる。
墓参りのとき、「人があんまり来ていない」という理由で、桶に残った水を面識のない「川本さん」のお墓にかけてあげたり、宝くじが当たったことを「川本さんのご利益」と言ったり。
墓参りで「いつもサッと来てすぐに帰っちゃうのは良くないよなあ」「ママが寂しがってるよ」と言い、「今度来るとき、おにぎりでも持って来て食べよう」と提案したり、引っ越し先でも亡き妻の写真と、花を飾っているのに、それが妻の苦手だった赤い花だったり。この適当な優しさに振り回され、つい甘やかしてしまうのだろうか。
お墓参りの後にファミレスで食事、黙ってトキコの顔を見る父に、「ロイヤルミルクティでよろしいですね」と呆れながらも笑うトキコ。コーヒーフレッシュが好きではない父のため、わざわざティーパックにお湯を途中まで注ぎ、ホットミルクを注ぐという「曲芸じみた」ことをしてあげているのに、それを父には伝えない。
しかも、年金の額を超える部屋に引っ越したい、さらに前金が必要と言われても、やっぱり受け入れてしまう。これが恋人だったら、スルーすることも、きっぱり断ることももっと簡単だったのだろうか。
最後にラジオで紹介されたお便りが、そんなトキコの気持ちを刺激する。
それは、45歳の既婚者と不倫中の20代の女性からのもので、筋書き自体はドラマチックだが、少々眉唾で、「どこかで聞いたことのある話」である。しかし、悩んだ末に出した「好きだから彼を支えていく」という女性の結論に対し、トキコは少し感情的に言う。
「『好きだから』『好きなのに』と、『好き』という気持ちをピュアなものとしてとらえると、見失うものがある」
これは真実であり、名言でもあるが、と同時に気になるのは、トキコと父母に何があったのかということ。肉親って本当に難しい。
(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)
【第2話(4月16日[金]放送)あらすじ】
ある日、父(國村隼)からの提案で叔母(松金よね子)のお見舞いに行くことになったトキコ(吉田羊)。華道の師範としてバリバリと働き、独身を貫いた叔母は自分で用意したケアハウスに入居した。「外の空気が吸いたい」という願いをかなえるため、トキコはスーパーでの買い物に付き合う。自力で動けない叔母のため久しぶりの外出を精一杯楽しく演出するトキコ。しかしスーパーから戻ると叔母の部屋には見知らぬ女の姿があり・・・。
◆放送情報
番組名:ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
放送日時:毎週金曜深夜0:12~
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送
(テレビ大阪は1話・2話が深夜0:05からの放送)
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信