【ネタバレ】『天国と地獄』奄美大島で日高と東朔也に何があったのか?

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【ネタバレ】『天国と地獄』奄美大島で日高と東朔也に何があったのか?
【ネタバレ】『天国と地獄』奄美大島で日高と東朔也に何があったのか?

いよいよ深い霧が晴れ、真実が見えるようになってきた。最大の関心だった東朔也の正体が明かされた日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系/毎週日曜21:00~)第8話。最終章に向けて、さらに物語が加速する今、残る大きな謎について考察する。

※以下、<>内は入れ替わった後の人物名

【1】湯浅=東朔也だった

陸(柄本佑)が包帯を外して、湯浅(迫田孝也)の手のひらにホクロがあるか確認するところで終了となった前回。1週間、視聴者はモヤモヤを引っ張られることになったが、その手のひらには大方の予想通りホクロがあった。

これで、湯浅は見た目も中身も東朔也であることがほぼ確定した。また、彩子<日高>(綾瀬はるか)の回想で、湯浅が日高(高橋一生)の胸ぐらを掴んで「お前が15分先に生まれてくりゃ、お前の人生は俺のものだったんだよ」と訴える場面も。

父についたか母についたかで天国と地獄のような差がついてしまったことに湯浅がやりきれない恨みを抱いていたこと。それに日高が負い目を感じていたことも、ほぼ間違いない事実となった。このあたりも、大方の視聴者にとっては読み通りと言えるだろう(以降、湯浅ではなく朔也と表記する)。

また、やはり朔也はかつて清掃員として日高の会社が入っているビルに出入りしていたことも明らかになった。この予期せぬ再会が、生き別れの兄弟に何かを引き起こしたと考えられる。

河原(北村一輝)の捜査情報が確かならば、日高と朔也は居酒屋で飲んでいたこともあるらしい。これが再会を祝す親睦の場なのか、運命を呪う因縁の場なのかはわからない。ただ、2人で奄美大島に行く計画も立てていたぐらいなのだから、一定期間はお互い連絡がとれていたと思われる。

それが、現在の彩子<日高>の様子を見る限り、もう朔也とはコンタクトがとれていないようだ。つまり、何かのきっかけで朔也は日高と交流を絶った。両者の間に何が起きたのだろうか。

【2】東朔也に何があったのか

殺害された3人にも共通項が判明した。これまで犯人は私腹を肥やす悪人どもに正義の裁きを与えるために犯行を行っており、その選別はある意味ランダム(強いて言うなら『暗闇の清掃人 φ』になぞらえるために姓名に数字が入っている人)の可能性もあったが、久米幸彦(加治将樹)はかつて朔也と接点があり、幸彦の犯した失敗を押しつけられる形で朔也は職を追われていた。

また、朔也の派遣登録情報を見ると、前歴に「エンタープライズデンデン」とある。これは第1話で遺体が発見された田所(井上肇)の経営する会社だ。つまり、朔也にとってはかつての雇用主にあたる。ここでもきっと何らかの理由で田所と接点があり、理不尽を味わわされたのではないかと推測される。

四方(小笠原治夫)がかつて父(浅野和之)を裏切った相手であることも踏まえ、殺された3人に朔也は少なからず怨恨を抱いていたというわけだ。これで殺人の動機は揃った。

ここからは仮説だが、警備保障会社での勤務態度を見ても、ある時期までは生活や環境に恵まれていなくても、朔也は真面目に正しく生きていたのだろう。それが、末期の膵臓がんに侵され、余命わずかと知ったとき、ついに世の理不尽さに恨みを抱いた。厄介者の父を見捨てることもできず、母(徳永えり)からの施しも遠慮するような思慮深い少年だった朔也は、自分の人生を呪い、社会を憎んだ。そして、残り少ない命を報復のために使おうと殺人計画を企てた。

「どんな事情があれ、ここを譲ったら、すべてがなし崩しになる。死守すべきルールっていうもんが人間にはあると思わない?」

朔也はそのルールを踏み越えてしまった。もう二度と戻ってこられないところまで。

【3】日高は会社の仲間を守るために罪を犯したのか

ルールを踏み越えたのは朔也だけではない。日高もまた同じだ。これまで日高は、朔也の殺人計画を止めようとしているのか、サポートしているのか断定できなかったが、今回の幸彦殺しでサポートしていたことが確定的になった。

幸彦殺しではこれまでと違い、犯人と激しく争った形跡が残されていた。逆を言うと、田所殺しと四方殺しではその形跡は見られなかったということだ。これは以前、久米家に侵入した彩子<日高>が正彦(菅田俊)にしたように事前に眠らせておいたからだと考えられる。つまり、彩子<日高>は兄の犯行を幇助していたことになる。

ただ疑問なのが、久米家に日高<彩子>らが張り込んでいたため、急遽正彦からターゲットを幸彦に変更したのだとしても、それを彩子<日高>は知る由もないのだから、あとからいつものように犯行の形跡を消すことはできない。そうわかっていながら、朔也は証拠を何一つ消すことなく、あろうことか指紋まで大量に残したまま犯行現場を立ち去った。つまり、朔也は証拠を隠蔽する気がないらしい。残り少ない人生だし、捕まっても構わないと考えているのだろうか。

ならば、彩子<日高>のやっていることは、朔也に強要されているというより、むしろ自主的に行っていることとなる。ただの負い目で、生き別れの兄のためにそこまでできるだろうか。単に兄に同情しているだけではない動機が日高にもあるのかもしれない。

そもそも、現在コンタクトをとれていないことから見て、朔也は入れ替わりの事実を知らない。つまり、あの犯行の夜、久米家の前で朔也が目撃したのは、他ならぬ弟ということになる。もし日高と朔也が共犯関係なら、あそこで踵を返す必要がない。つまり、朔也自身も日高が事件に関与していることを知らないと考えられる。

そこで浮かぶのが、朔也の一連の犯行の最大の目的は、日高に対する復讐という説だ。同じ日に生まれたはずなのに、天国と地獄のように明暗が分かれてしまった双子の弟。成功者となった優秀な弟に自分ができる最大の復讐は何か。それは、血のつながった兄が殺人犯となることだ。

この事実が明るみになれば、日高の社会的地位は地に墜ちる。寿命の限られている朔也なら、どんな刑罰も怖くない。しかし経営者である日高にとって、会社を危機に晒すことは、そこで働く社員の生活を危機に晒すこととなる。歩道橋の落書きも、殺人の協力を仰ぐ指令ではなく、朔也からの犯行声明。会社で働く仲間たちを守るために、日高は殺人幇助という罪をかぶってきたのではないだろうか。

だが、殺人幇助も立派な犯罪だ。どんな理由があっても許されるものではない。この物語は、死守すべきルールを踏み越えてしまった2人の男に、「風紀委員」とも揶揄される正義感の強い彩子がどんな言葉を与えるかが焦点なのかもしれない。繰り返されてきた彩子の「べき」という口癖。抗えない運命に心が折れそうになったとき、人はどう生きるべきなのか。最後に彩子が発する「べき」が、この物語の最大のメッセージとなる予感がする。

【4】どれが伏線で、どれがミスリードか

ただ、依然として謎の部分はある。気になるのは、第一の犯行とされた一ノ瀬(小山かつひろ)殺害だ。これは、犯行時期のズレが不自然だったことから考えても、河原の推理通り別人の犯行と見て問題ないだろう。ただ、それが十和田(田口浩正)なのかは疑問が残る。なぜなら十和田の死亡推定時期は11月下旬。一ノ瀬殺害事件が起きたのは12月16日だ。一ノ瀬が殺された頃には、すでに十和田はこの世にいない。いくら十和田の遺体が見つかるのに3ヶ月もかかったとはいえ、3ヶ月で死亡推定時期が2週間〜4週間近くもズレるものなのだろうか・・・?

第1話で九十九(中尾明慶)が明かした、かつてボストンで日高が連続殺人事件の容疑者に挙げられていたことや、第4話で優菜(岸井ゆきの)から語られた近所に住んでいた嫌われ者のおじいさんの死亡事故に関しては、日高の人物像を混乱させるためのミスリードとジャッジしてもいい気がする。日高がかつて女性に入れ替わったことがある説もこの局面まで来たら消えたと見ていいだろう。

予想通り、奄美大島の石が入れ替わりのキーアイテムだったようだが、これを日高がどの時点で知っていたのかはまだわからない。1話で彩子と入れ替わった直後、「どこまでついてるんですかねえ、私は」とつぶやいていたことから、彩子と入れ替わったこと自体は思いがけない出来事であったのだと考えられる。

何より最大の謎は奄美大島で何があったのか、だ。朔也と行く予定だった奄美大島への旅行をなぜ日高は取りやめたのか。そして、後日、なぜ1人で奄美大島を訪ね、東朔也と名乗ったのか。

おそらく奄美大島に行く直前に朔也の病気が判明、旅行は中止に。そして、病床に伏した兄の代わりに、母の生まれ故郷を見届けに行った際、その感傷から(あるいはそこでシヤカナローの花の伝説を知り、自らの境遇を重ねて)東朔也と名乗ったのではないかと思うのだが、はたして真実はどうだろう。

日高<彩子>が見た「西」という表札の掲げられた廃屋の存在も気になる。朔也と陽斗の母の名は、茜。一般的に夕日の色を茜色と表現する。東が日出る方角なら、西は日の沈む方角。あの廃屋は、亡き母の生家だった説も有力だ。

第1話のトップシーンが奄美大島の海であったことから考えても、この物語は奄美大島からすべてが始まっている。そこで日高は何を見たのか。そして、朔也は今改めて奄美大島で何をなし遂げようとしているのか。

すべての答えは、奄美大島の海に眠っている。

(文・横川良明/イラスト・まつもとりえこ)

【第9話(3月14日[日]放送)あらすじ】※15分拡大スペシャル
※<>内は入れ替わった後の人物名

歩道橋から転がり落ちた彩子<日高>(綾瀬はるか)と日高<彩子>(高橋一生)。警察は、連続殺人事件への関与が濃厚な日高陽斗と東朔也に緊急配備をかける。その東朔也=師匠は日高の双子の兄で、陸(柄本佑)ととある場所に向かっていた。一方、河原(北村一輝)は捜査一課とは別に単独行動に出て・・・。

◆放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
毎週日曜21:00よりTBS系で放送
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi」でも配信