日経電子版、日経産業新聞と連動してイノベーティブな技術やベンチャーを深掘りする動画配信サービス「Paravi(パラビ)」オリジナル番組の「日経TechLiveX」。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
今回は、5月25日配信の「イノベーションを起こせ!"KDDIのスタートアップ連携"成功のヒケツ」(後編)。スタートアップとの連携に本気な大企業1位に選ばれたKDDI。後編では、「∞(ムゲン)ラボ」の卒業生であり、ソーシャルギフトサービスのギフティを創業した太田睦代表取締役を迎え、スタートアップ企業の視点でKDDIの支援プログラムの「強み」や「弱み」について議論する。スタートアップ企業への緊急アンケートも実施した。
瀧口:こんにちは。日経CNBCキャスターの瀧口友里奈です。そして、一緒に司会進行していただくのは、日本経済新聞編集委員の奥平和行さんです。奥平さん、よろしくお願いします。
奥平:よろしくお願いします。
瀧口:こちらの番組は革新的なテクノロジーや今後成長が見込まれるスタートアップ企業に迫る「日経TechLiveX」です。この番組は日経産業新聞、そして日経電子版と連動して動画配信サービス「Paravi(パラビ)」オリジナルコンテンツとしてお届けしています。
さて奥平さん、今回のテーマですが、前回に引き続き「イノベーションを起こせ!"KDDIのスタートアップ連携"成功のヒケツ」についてお送りしていきます。KDDIは経済産業省などが調査したイノベーション企業ランキング、つまりスタートアップとの連携に本気で取り組んでいる企業の第1位に選ばれているということなんですよね。
奥平:トヨタとかソフトバンクを上回って1位になったと。その路線を引っ張ってこられた高橋さんが4月に社長になられたので、前回はその話を伺いました。
瀧口:そして今回は前回もご登場いただいたKDDIビジネスインキュベーション推進部部長の江幡智広さんにお越しいただいています。江幡さん、引き続きよろしくお願いします。
江幡:よろしくお願いいたします。
<江幡智広プロフィール>
1993年DDI入社。移動体通信事業の営業企画部門を経て、2001年からは国内外の社外パートナーとのビジネスデベロップメントを中心に活動。Google、GREE、Facebookなどとの事業・資本提携を手がける。現在「KDDI Open Innovation Fund」を活用した投資を含むビジネスデベロップメントの責任者として活動。2013年にはインキュベーションプログラム「KDDI∞Labo長」に就任。
瀧口:そしてもう一方、KDDIのスタートアップ支援プログラム「∞ラボ」の1期生で、見事に成長を遂げられている、ソーシャルギフトサービスを手がけるギフティの太田社長にもお越しいただきました。太田社長、よろしくお願いします
太田:よろしくお願いします。
<大田睦プロフィール>
2007年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア)に入社。システムエンジニアとして官公庁プロジェクトのシステム開発に従事したのち、2010年にカジュアルギフトサービス「giftee」を運営する株式会社ギフティを創業、代表取締役に就任。
<KDDI∞Labo1期生 "gifttee"とは?>
奥平:早速なんですが、瀧口さん、「giftte」って使われたことありますか?
瀧口:使っています。例えば、コーヒーだとかドーナツだったりとか、そういったちょっとしたものなんですけど。
奥平:どうやるんですかね?具体的にぜひ教えてください。
太田:この「giftte」は、デジタルのチケットを相手の方に送ってお店で受け取っていただくっていう形のサービスになります。
奥平:住所とか知らなくてもいいということですか?
太田:そうですね。メールとかLINEで送るような形になりまして、まず商品を選んでいただきます。先に決済をしていただく必要がありますので、「決済に進む」を押して、オーダーを確定するっていうワンタップで、ギフトが作られます。ギフトですので、一緒にギフトカードを添えて送ることができるようになっています。シーンとしては「ありがとう」とか、「おめでとう」「お疲れ様」とか。
瀧口:かわいいデザインが多くて、毎回迷ってしまうんですよね。
奥平:利用者の声ですね(笑)。
太田:ありがとうございます。今、こういった「サンキュー」のカードを仮に選んでみました。これで一応完成になりますので、作成していただくと最終的にURLが生成されます。これを相手の方にメールとかLINEなどで送っていただきます。
奥平:利用実績って、今、どれぐらいになってるんですか?
太田:そうですね、今は会員数が大体90万人くらいです。
奥平:送り手として、登録している方?
太田:送り手として登録している方が90万人くらいおりまして。結構、会社内で使われることもあるので、資料を取り寄せてもらった方に「さっきありがとうね」って送ったりですとか、あとは夫婦間で大事なプレゼンがある旦那さんに「がんばってね」っていう形で送ったり。
奥平:微笑ましくて良い話ですね。
<KDDIから受けたサポート>
瀧口:素敵ですね。江幡さんはどのようにご覧になっていましたか? 大田さんは「∞ラボ」の1期生ということですよね。
江幡:そうですね、サービスとしては非常に面白い仕掛けで、デジタルとリアルのお店のつながりができあがってくるところもありますし。太田さん自身もいろいろお話させていただく過程で、すごく優しそうに見えるじゃないですか(笑)。多分優しい。だけどすごく強い信念を持っているんですよね。それをお話させていただく中で感じることができたので、ファンドからの出資を含めて今でもお付き合いさせてもらっているという感じです。
奥平:KDDIから受ける支援には、「∞ラボ」だったりファンドだったりいくつもあると思うんですけど、実際にどういうサポートを、特に「∞ラボ」で受けられたんですか?
太田:そうですね。我々のサービスのビジネスモデル上、多店舗展開しているブランドさんと、いかに提携するかが非常に重要なんですが、創業期ってまだ実績もないですし、信用もないじゃないですか。そういったときに、実際にKDDIの担当の方と一緒に営業に行ったり、KDDIの名刺を出していただいて、「支援しています」と、ひとこと言っていただいたりというだけでも、全然違ったなという印象です。
奥平:大手の壁は、単独でやると相当高かった?
太田:そもそも会えないですね(笑)。会ってもくれない。アポが取れない。そこはご紹介いただくような支援もあったり、あとは顧客基盤を持つので、送客しますというキャンペーンをご提案いただいたりですとか、そういった形で最初の大きい壁をいくつか一緒に超えてきたっていう感じですかね。
奥平:プロダクトサービスとしてはある程度完成していたけれども、実際それを広げるための、パートナーシップで困っていて。
太田:そうですね。
奥平:そこで大きな助けになったと。
太田:もちろんそうですね。
<KDDIのスタートアップ支援 緊急アンケートの調査結果発表!>
瀧口:今回、番組で緊急アンケートを実施させていただきました。
奥平:ついにやってしまったと。KDDI連携支援先にずばり聞きました。「KDDIの良いところと悪いところを教えてください」。
瀧口:ということで、答えていただいたのは主にKDDIの「∞ラボ」に参加されたスタートアップ企業の方なんですけど、現在はKDDI以外からの支援を受けていらっしゃる方も含まれています、ということで。
奥平:質問の中身は評価できる点と、改善の余地ありの点と。要はマルとバツについて、それぞれ3つ選んでもらったという仕組みですね。
瀧口:そうですね。では、ご覧いただきましょう。まずは評価できる点からですね。
奥平:3位から行きましょうか。「人材の紹介機能が充実している」。やっぱり紹介機能ですね、今、太田さんがおっしゃった通り。次に「スタートアップの自主性を尊重する」。尊重されました?
太田:はい、されました(笑)。
江幡:隣だとちょっと言いづらいですよね(笑)。
太田:いや、実際にされました。
奥平:長期的な視点で支援している。
江幡:短期的なシナジーではなく。
瀧口:長期的に見ていくのが大事と。
奥平:「支援先間の横の連携が活発」。やはりイベントや勉強会で横のつながりって生まれるものなんですか?
太田:そうですね。本当に同じ時期に同じようなステージにいるベンチャーが一緒にやってますので、すごく励みになりますし、負けられないという競争心も生まれるところはあると思います。
奥平:実際に、お互いビジネス上で助けたり助けられたりというケースも出てきているんですか?
太田:事業モデルは結構バラバラではあるので、一緒に連携したりすることはあまりないんですが、抱える課題が似てきたりするので。
奥平:お互い相談するところで気づきがあったりとか?
太田:そうですね。
瀧口:続いて2位です。「トップの関与が明確」とありますが。
奥平:多分、高橋さんのことですね。高橋さんは、確かにものすごく強く関与されているし、そこは実際、支援先の方もそう感じておられると。
太田:そうですね。
奥平:「対等の立場」、これも重要ですね。いわゆる大企業とスタートアップ、あまりにも企業規模が違うんで、ともすると上から目線。・・・これも隣にいると聞きづらいですね(笑)。
太田:本当に、対等な立場で支援していただいてるなと思います。先程の自主性を尊重するというところもそうですし、スタートアップがなんで起業したのか、なんでこのサービスをやっているか、というところを非常に尊重していただいているなと感じました。
奥平:江幡さんに伺いたいんですけど、当然、江幡さんのチームの中でも人の入れ替えがあって、これまで関係していなかった方が入られたりすると、「∞ラボ」のパートナー企業と、必ずしも対等でいけるかどうかって微妙なところもあると思うんですけど。
江幡:スタートアップの方々が本当に正しいゴールを持って、そこに向かって強い意志を持って推進しているかみたいなところが曖昧になっていたりすると、結構僕らも言う時がありますね。
奥平:厳しくおっしゃる時もある。
江幡:逆に言うと、僕らが一生懸命教えてもらうことも出てきちゃうわけですよね。分からないこともたくさんありますから。
瀧口:そして1位は「KDDI以外の企業との提携にも寛容」です。
奥平:さっき冒頭で見せていただいた画面で、決済でいうと、au決済以外のライバルの決済も入ってましたよね?
太田:そうですね。
奥平:そういうのって素人的なイメージでいうと、当然支援している側は嫌がるんじゃないかと思うんですけど、全く問題なかったですか?
太田:私も、そこについては最初、おそるおそる聞いたところはあるんですけど(笑)。やっぱり我々がやりたいのは、こういったカジュアルギフトの文化を広めていくっていうところ。これをやりたいのであれば、一つのキャリアに縛ることってナンセンスだよね、とKDDIさんから言っていただいたところがあって。
奥平:他社とも組みたいんです、というのは問題なかったんですか。
江幡:ないですね。例えば僕らがまたM&Aという方向にもっていく話があるのであれば、それはそれでまたシナリオをもう一回書き直すと思いますし。現在では太田さんのところのサービス「giftte」自体が一番伸びるやり方をやるべきですから。その過程において、伸びるはずの選択肢を排除する必要性って全くないですよね。
瀧口:そして一方では、改善の余地があると考えられる点も伺いました。
奥平:これ、初めて伺います。
瀧口:ドキドキしますけれども・・・こちらです。
奥平:逆に「トップの関与に関してはもっと高めるべきだ」という意見もあるんですね。そして、やっぱり出ました。「担当者の経験能力にばらつきがあるため底上げを図るべきだ」。当然、会社なので人事ローテーションもあるでしょうから、ばらつきも出ますよね。
江幡:出ますよね。ただ基本的にはやりたいっていう人、ベンチャーと一緒に伴走するっていうか、関わりたいっていう人間に立候補してやってもらってはいるんですけど。
奥平:2位は「提供するアセットを増やし魅力を高めるべきだ」。例えば、太田さんのところで言うとau系のサービスで告知をしてもらったり、パートナー先の紹介を受けたりとか、そういうのをもっと増やしてほしいっていう意見もあるんですね。
太田:そうですね。
奥平:やっぱり「支援先間の横の連携」っていうのは、「∞ラボ」のプログラムを重ねる中で横連携を増やすなり、あるスタートアップの失敗なり成功なりを仲間で共有して、次のステップに行きやすくしますよね。その辺は気を配っておられるんですか?
江幡:そうですね。実際のプログラム活動の中で、実は太田さんに来てもらったことが何度かあって。卒業した後に、採択するチームに向けて、太田さんがどういう活動をしてきたかとか、「∞ラボ」に関わらず、ある意味創業者として、こういう信念を持って事業をやっていくんだとか、そういう話をいろいろとしてもらったりもしてますね。
瀧口:そして1位は「資金提供のハードルを下げるべきだ」。
江幡:それはそうですね。
瀧口:皆さん望むところという感じはますけど。
奥平:皆さんお金で苦労するから。・・・だそうです。
江幡:分かりました。
奥平:でも、慈善活動じゃないですからね。ある程度は厳しくチョイスをされるんでしょうけど。
江幡:そうですね。「∞ラボ」自体は採択するイコール資金を提供するということは基本的にはやってないんですね、僕ら。そこがちょっと他のプログラムと違うところでもあり、ある意味そこから成長してもらう。「giftte」がまさにそうですよね。卒業した後に一緒に歩む道を少し相談しながら、出資もさせていただくみたいな感じですかね。
奥平:ある種いい方のポイントでもありましたけど、縛りが弱い、他社との連携にも寛容だという表裏ですよね。
江幡:そうですね。
奥平:最初からお金入れてると、当然縛りますからね。
江幡:そうですね。
瀧口:この絶妙な距離感という感じはしますね。
奥平:結構おもしろかったですね(笑)。
瀧口:こういった改善の余地があるところを見ていただきましたが、アメリカのシリコンバレーでは、どのようにこういったところを改善しているのか、という話をシリコンバレー支局の重森泰平さんに聞いてみたいと思います。中継がつながっています。重森さん?
重森:はい、こんにちは。
滝口:こんにちは、瀧口です。
重森:はい、お疲れ様です。
瀧口:先日は、シリコンバレーでどうもありがとうございました。
奥平:行ったんですか?
瀧口:そうなんですよ、ゴールデンウイークのお休みで。弾丸で2日間しかなかったんですが、シリコンバレーに行ってきました。これはちょうどその時の写真です。「インポッシブルバーガー」って、ご存知ですか?
奥平:何がインポッシブルなんですか?
瀧口:これ、完全に植物性のお肉なんですね。お肉ではない、お肉。
奥平:お味の方は。
瀧口:限りなくお肉に近い食感で、ビル・ゲイツも出資している会社ということで。
奥平:その話も聞きたいんですが、重森さんが待っているので行きましょう。
瀧口:そうですね。では、重森さんお待たせしました。
奥平:ここまでKDDIのスタートアップ連携の話を伺ってきたんですが、そちらで大企業とスタートアップの連携イノベーションっていうのをご覧になっていて、日本との違いを感じられる部分はありますか?
重森:やはり足りないものは、人も会社も含めて買ってくるという動きが、ものすごく早いと感じています。
奥平:要は、M&Aであると。
重森:そうですね。私も、こちらでいろいろ提携先を探す仕事をやってるんですけど、ちょうど1週間前に、私がいいなと思っていたAI系のスタートアップの会社が、シスコに買収されてしまいまして。失敗しました。
瀧口:例えば、Facebookなども大胆なM&Aが目立ちますよね。
重森:そうですね。Facebookの、年に1回の開発者会議に5月、出席したんですけど、非常に象徴的だなと確かに思いました。この会議では毎年新しい機能を発表するんですが、話の半分はFacebook本体、それ以外は彼らのグループであるInstagramですとか、WhatsAppっていうチャットのアプリ、それからoculusっていうVR、バーチャルリアリティーカメラですね。こういったものの新機能の発表をマーク・ザッカーバーグさんが誇らしげに話されているんです。でも、よく考えるとこの3つとも全部自分で作ったわけではないんですね。
奥平:買うことによって事業範囲を広げていくという、シリコンバレー企業の戦略だと思うんですが、一方で、ここ最近の流れを見ていると、大きくなり過ぎたテクノロジー企業がなんでもかんでも買っちゃうとか、へたするとライバルを買って潰してしまうとかそういう話もあります。その辺に対する風当たり、受け止め方はどうですか?
重森:ものすごく強いですね。特にFacebookは独占問題も含めてプライバシーのデータの問題がやり玉に挙がってしまいました。ただデータが集まることで、より便利になっていろんな機能がつくことで、便利になっていく。なかなかユーザーの利便性を損ねているとも言いがたい部分もあるので、規制をしようにもどのようなところでどう規制をしていくのか、まだ答えが出ていない状況だと思います。
ただ、Facebookみたいに何万人も自社にエンジニアがいるという会社ですら、外部の企業、スタートアップを買ってきて新しいサービスを作っているということは、我々自身もよく考えなきゃいけないところだと思いますね。
瀧口:そのFacebookがデートサービスを展開していくという発表がありましたけど、デートサービスといえばTinder(ティンダー)というイメージがあります。そういったところでも情報量を圧倒的に持っているという強みがあるんでしょうか。
重森:ティンダーは私使ったことないので・・・(笑)。確かにFacebookでこれだけ私がいろいろ書き込んだり、奥平さんとか瀧口さんともつながってという、中の情報を出してデートアプリなんかを作られてしまうと、他の企業はもう一つこれを作ろうなんて思わないと思うんですね。新しいチャレンジをしにくくなるというか、する気をくじいてしまうような抑制が進んでいるという風に見ることもできるかもしれません。
滝口:そちらでCVCを展開している日本の企業で注目されているところはありますか?
重森:ここはちゃんとしっかりできているなと思うのは、建設機械を作ってらっしゃるコマツさんですね。ここは非常にシュアなオープンイノベーションをされております。最近では、ドローンを飛ばして測量した上で建機を回すということで、効率的に建設できるということをやろうとされています。こういう将来が来ることを想定して、「じゃあドローンってウチに無いよね」とドローンの会社を探しに来るということで、スカイキャッチという会社と提携をされて出資もされて、今新しい建設の仕組みを作ってやられています。
奥平:何が足りないか目的意識を明確にするというのは、この番組の前編でも江幡さんに伺いましたけど、ガラケーの時代でも、そのネットサービスが始まるのでどういう顧客体系を提供するかっていうところからKDDIも始まっていると。
江幡:そうですね。
奥平:そこは相通じることあると思います。
江幡:同じかと思います。
瀧口:ありがとうございました。
重森:またインポッシブルバーガー食べに来てください。
瀧口:はい、ぜひお願いします。みんなで食べに行きます。ありがとうございました。
<KDDI 200億円CVC設立 参加企業の目利き力活用>
奥平:江幡さん、KDDIは2011年からファンドを運営していますが、次の展開として4月に立ち上げる新しいファンドの発表がありました。
江幡:そうですね。
奥平:従来より金額が大きいというのは理解をしているんですけど、何か他に変わる部分っていうのがあるんですか?
江幡:今回明確にしたのは、特にテクノロジーの領域において、私たちのグループ企業とも連携をより密にしてやっていこうというところです。例えばIoTの領域であればSORACOMのIoTプログラムっていうようなものを立ち上げて、そこで案件をしっかりと発掘しつつ提携モデルを作っていくと。
奥平:出資先のスタートアップの発掘だとか、メンタリングアドバイス等々を、SORACOMが手伝っていくという、そういうイメージですか?
江幡:そうですね。実際、やっぱり技術的な強化もKDDI単体でやるよりもSORACOMがやる方がよりわかるところも実際ありますし。実はSORACOMの周辺に集まってきている、僕らのところより集まりやすいベンチャーも実際いたりするので、その辺なんかをより広げていこうと、拡大してやっていこうという。
奥平:よくいう言い方ですけど、エコシステムというか、生態系化していこうと。
江幡:そうですね。
瀧口:子供から孫が生まれたみたいな、生態系が広がっている感じがしますね。
奥平:なるほど。KDDIから見ると子どもや孫ですかね。
瀧口:孫世代。太田社長、いかがですか?このエコシステムというか、ファンドの在り方。
太田:一番下の孫になるようなベンチャーっていうのは、創業間もないわけですから、右も左も分からないという中で、実はそのベンチャーが抱えている最初の課題って、もしかして大企業であるKDDIさんの担当の方もわからない。それをSORACOMさんとかはそこを経験されていますので、非常に良いアドバイス、相談相手になるんじゃないかと。
瀧口:より一層強くなっていくKDDIのスタートアップとの連携について、高橋社長に奥平さんが聞いてくださいました。そちらをご覧いただきましょう。
(VTR)
高橋:傘下の会社が我々と一緒になって、またベンチャー企業の育成に関与していくっていうのは、一段階スケールが上がったんじゃないかなって思いますね。例えば、我々がSORACOMをM&Aにかけて、SORACOMの経営者に心に余裕が出てくるので、我々のアセットを使ってグローバル展開をやっていきたいということ。また彼らが中心になって新しいベンチャーと一緒にやっていったりということが生まれてくるので、それはいい循環だと僕は思う。
奥平:KDDIはもともと京セラから生まれた会社で、ある指標で見ると京セラを抜く存在にまでになっています。その順で言うと、次はKDDIの投資先のどこかスタートアップがKDDI本体を抜く可能性があるんですか?
高橋:それを言うと、みんなベンチャーに響きますよ。僕たちは実は京セラさんに作ってもらった会社で、それがいつの間にか通信というアセットを使いながら、今は京セラさんよりもちょっと大きな会社になったよね、と。同じように僕たち投資をかけてるんだから、「君たちが僕たちを抜く存在になれるんだよ、世の中は」と言うと、「がんばろう!」ってみんな言いますよ(笑)。
奥平:副社長の立場と社長になられた今でも、言い方は変わらないですか?
高橋:そりゃ変わんないでしょう。変わらない。
(VTR終了)
瀧口:まさに、エコシステム。
奥平:おっしゃってましたね。いや、これやはり何度か申し上げてますけど、大企業とスタートアップの問題というと、大企業からすると「ヒト・モノ・カネ」をそこに費やしてるので、短期的にシナジーとか求めがちだと思うんですよね。
先程の太田さんの話を伺ってると、太田さんの会社を大きくするために、他の企業と組んでもいいよって、本来的にはそうあるべきだと思うんですが、なかなかそうならず、「まずウチにどういうメリットがあるの?」となってしまいがち。そこに対する非常に示唆に富む発言というか、重要なアドバイスじゃないかなと私は聞きました。
瀧口:はい。そしてどうでしょうか。近々スタートアップ連携において、何か耳寄りな情報などありましたらぜひここでお願いします。
江幡:昨年の秋からスタートさせた中で、一番今面白いなと思っているのは、テレイグジスタンスという会社の遠隔制御のロボットですね。僕がここにいて、北海道のロボットが僕と同じ動きをするというのもできますから。
奥平:代わりに遠隔で働いてくれるとか。
江幡:少し時間がかかるとは思っているんですけど、世の中の、これまで想像できなかったことが変えられるような存在になるかなと思っております。
瀧口:すごく未来感がありますね。
奥平:次回はそのお話も、ぜひ伺いたいなと思います。
瀧口:さて、次回は遠隔医療や名医の検索サイトなど、ITを活用した最新の医療サービス、「メドテック」に迫ります。江幡さん、太田社長、今日はどうもありがとうございました。
全員:ありがとうございました。
(C)Paravi