「渡良瀬橋」と「ハエ男」が同時期に誕生した奇跡・・・そして森高千里は、押しも押されぬ人気者へ

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「渡良瀬橋」と「ハエ男」が同時期に誕生した奇跡・・・そして森高千里は、押しも押されぬ人気者へ
「渡良瀬橋」と「ハエ男」が同時期に誕生した奇跡・・・そして森高千里は、押しも押されぬ人気者へ

ア-ティストが認められることを「ブレイクする」といいますが、森高千里の場合、それは「私かオバさんになっても」で果たされました。でも、単に殻を破った(ブレイク)だけではダメで、大切なのはその後です。その時、音楽の神様が微笑みます。"後世に残したい歌ベスト〇〇"といった企画でも"常連"の、「渡良瀬橋」が誕生するのです。今回のコラムでは、「LUCKY SEVEN」について語っていきたいと思います。

動画配信サービス「Paravi」のオリジナルコンテンツ、「もっと観たくなる森高千里 LUCKY SEVEN」のコメンタリ-では、もちろんこの歌のことをご本人に伺ってますが、名曲誕生の裏側には意外なエピソ-ドがつきもの。この曲も例外ではありません。そのあたりは、番組内でご確認ください。

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サウンド的にはデジタルから生楽器主体へと移行した彼女ですが、さらにそれが、等身大のものとして開花するのがこの「LUCKY SEVEN」の時期です。シングル制作においては、大型のタイアップが普通になっていきます。森高が砂浜を走るCMが頻繁に流れた「私の夏」は、全日空沖縄キャンペ-ンのために書き下ろされたものでした。

CMのコンセプトに合わせているだけではなく、彼女らしさをしっかり打ち出した歌詞なのが、たくましいです。描かれているのは、女友達との、気兼ねない気張らない沖縄旅行。男性ファンのみならず、女性ファンが増えていた彼女ですが、まさにこの歌など、女性が聞いてこそ、という内容でもあります。なお、再現ライブにも、多くの女性ファンの姿がみられました。

セットリスト的には、この曲から第二部がスタ-ト、という印象です。さらに「風に吹かれて」、前述の「渡良瀬橋」と、3曲続けて歌われるあたりが白眉でしょう。当日「Zepp DiverCity
(TOKYO)」に詰めかけたお客さんは、自分の思い出とも照らし合わせつつ、歌の世界観に浸っていたのではないでしょうか。

「風に吹かれて」は、初のチャ-ト・ナンバ-・ワンを獲得します。ア-ティストとしての"格"も備わってきたわけです。ただ、"何でもアリの森高ワ-ルド"も、けして忘れることはありません。そう。"もうひとつの代表曲"と言えるのが「ハエ男」。私も思い入れある楽曲だったので、改めてこの作品について伺えたは貴重でした。

「Zepp DiverCity」での再現ライブを観て、この曲を支えていたのが振り付けだったことを再認識しました。みんなノリノリで、会場の一体感が生まれたのは言うまでもありません。ちなみに"ハエ男"の振り付けは、客席でお隣りを気にすることなくやれるコンパクト仕様です。改めて、よく考えられているなぁと思った次第です。

話は前後しますが、「LUCKY SEVEN」のツア-といえば、いきなり彼女がドラムを演奏しつつ登場するオ-プニングも話題でした。1993年当時、初日の綾瀬市文化会館へ出掛けて行って、いきなりこれを目撃し、「カッチョイイ~」と叫んでしまったのを覚えてます。女性ア-ティストでこんなオ-プニングは前代未聞ですし、この時ばかりは「ヤラレタ~」と思ったものです。

彼女はこのツア-の前年に、すべての楽器演奏に自らが携わった「ペパ-ランド」というアルバムを発表しています。その流れもあるツア-なので、ステ-ジでの楽器との関わりも増えたのでしょう。冒頭のドラム演奏をはじめ、ギタ-、「渡良瀬橋」の間奏のリコ-ダ-、そして「雨」では、ピアノの弾き語りも披露しています。ステ-ジ上でご本人が、どんな心理状態だったのか?それを知りたい場面が山ほどあったので、再現ライブの映像を観ながら掘り下げさせて頂きました。

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もちろん引き続き、衣装などの見せ場も備わっていましたが、何より音楽的な意味で、実に変化に富んだ内容だったのがこのツアーなのです。また機会があったら、ぜひ再現して欲しいと思うくらい、全体の完成度が高いです。最後の「コンサ-ト夜」に、この日のすべての歌が収斂されていくかのようなところも秀逸です。

今回、当時の映像のみならず、再現ライブとしても記録されたことの意義は大きいです。というのも、むしろ再現ライブだからこそ、時を越えて訴えかけるセットリストの妙が、伝わりやすくもあるからです。

ノリにノッてる時期の、何をやっても上手くいった結果が「LUCKY SEVEN」だったようにも思えますが、当時の彼女は2年連続の全都道府県ツア-を敢行しつつ、自らの両肩に大きな責任を担う作詞活動など、寝る暇もないくらいのスケジュ-ルをこなしていました。ラッキ-などではない努力の賜物が、まさにこのツア-なのでした。

C)Paravi