freee佐々木CEOが明かすユニコーンの育て方

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「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

「NEXTユニコーン」の雄と目されるクラウド会計ソフトサービスのfreee。創業者でもある佐々木大輔CEOに新規株式公開(IPO)に対する考えを聞く。また同社が本社を置く東京・五反田にスタートアップが集積しているのは「ナゼ?」を考える。

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奥平:ではお金まわりの話を伺いたいのですが、夏頃に(調達されたのは)65億円ですよね。トータルでは160億円くらい調達されたと。

佐々木:そうですね。

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瀧口:160億円というと、かなりの規模になるんでしょうか?

奥平:結構日本のスタートアップだと大きい額ですよね。

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佐々木:日本の中では大きい方ですね。

奥平:(日本では)50億円超えると、おお、という印象ですね。それまでの企業は、これまで数えても両手はないくらいの数じゃないですか。今回でいうと当然、業務提携のような含みだと思いますが、それぞれどういうことをやろうというお話をされているんですか?

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佐々木:LINEさんに関しては今LINE Payというものを展開する中で、中小企業の加盟店獲得を積極的に進めていきたいと。その中で単純に決済機能を入れていきましょうということだけではなくて、バックオフィス全体を効率化するために決済を入れましょうと、もう少し大きな価値にして提供するということをやっていきたいと進めています。

奥平:LINEの加盟店開拓に乗っかるというと言い方は悪いですけど、うまく活用して加盟店がお金を受け取るのはLINE Payで受け取れるようになるし、その処理はfreeeでやる。そういったコラボレーションですね。

佐々木:そうですね。

奥平:三菱UFJ銀行とはどうなんでしょうか。

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佐々木:もともとfreeeの中に、どこの会社にいつ、いくら支払わなくてはいけないというデータはすべて入っているので、そこから自動で銀行振込ができるということをずっとやりたかったんです。それを何年か前に三菱UFJさんと実現して。そういった形で割とこれまでも、銀行とのコラボレーションの中ではイノベーティブな部分も一緒にやってきているので、これからもそういった新しい取り組みを一緒にやっていきましょうという流れですね。

奥平:今スタートアップ企業の資金調達環境が非常に良くて、新聞でも追い風と言われていますが、実際調達されている肌感覚として調達環境は良くなっていると感じますか?

佐々木:良くなってきていると思います。今まで日本でユニコーンが出てこなかったのは、やはり未上場の会社がお金を集められなかったことが一番大きいと思うので、未上場でもお金は集められるし、お金を集められたらいろいろな人にいろいろなことをあまり言われずに、しっかりと自分たちの経営にフォーカスできるという形も作れますし。そういう経営スタイルを取りやすい環境になってきていると思います。

奥平:シリコンバレーだと比較的大きい資金調達はベンチャーキャピタルが受けるのが一般的で、日本だとどうしてもベンチャーキャピタルにそこまでお金が無いので、事業会社が主導になっていくというところが大きな違いとしてあると思いますが、良し悪しがあって、事業会社が入ることによって協業が進む一方で、それ以外の可能性を排除してしまうということもあるかと思いますが、それはどうご覧になりますか?

佐々木:そういう側面もあるかもしれませんが、意外と資本が入っているから取引できません、パートナー組みませんというのは、実際はそれほどないですね。

奥平:三菱UFJの資本が入っているから、ほかの二つの(巨大)銀行がだめということにはならないと。

佐々木:だめということはないですね。もちろん株主になっている会社の方がやりやすいということはありますけど、資本というのはいろいろなところにつながっている側面があって、例えば僕たちの投資家の一つで未来創生ファンドというところがありますけど、そこはトヨタと三井住友銀行さんがやっていたりするんですね。

奥平:そういう意味では三井住友銀行も間接的に入っていると。

佐々木:だからお金っていろいろな関係があるので、そういう意味では一つ資本関係がここにあるからどうだってことではなくて、結構なんだかんだいろいろなところでつながっているように思います。

奥平:先ほどおっしゃったように、日本だとどうしてもこれまで資金調達の手段が他にないので、IPO(株式公開)せざるを得なくなり、IPOしたことによって自由度が下がって、本来もっと成長できる会社が四半期決算を気にしなくてはいけないとか、株主さんへの還元をどうするかという方へフォーカスが行ってしまうと、成長軌道からそれてしまうという残念なケースもあると思うのですが、そういう意味ではまだまだ上場はしたくないという感じですか?

佐々木:そうですね。もちろん選択肢の一つとして持つべきだとは思いますが、できれば未上場でいたいです。

奥平:どこまでも未上場で行きたいと。例えば初期の社員の方ですとか、株主に対する還元、いわゆる現金化の手段として上場するという側面もあると思うんですが、そこはどうお考えですか?

佐々木:そろそろそういうことも考えていかないといけないんですけどね。ただ、やはりそういった意味でもうちは投資家側も長いスコープで投資を考えてもらいたいということは納得済みだし、逆にシリコンバレーではむしろ理解されやすいので、そういったことは前提としてはやってきていますね。

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瀧口:ユニコーン企業が出やすい環境というのは、どうしたら作ることができるんでしょうか。例えばアメリカだと120社、中国は70社、日本は。

奥平:えーと・・・、1ですかね(笑)。オフィシャルになっているのは。

瀧口:日本のユニコーン企業が出てきづらい環境というのは何か(原因が)あるんでしょうか。

佐々木:やはり今までだとお金が集めにくかったことが一番大きいんじゃないでしょうか。

瀧口:上場しない限りお金を集めづらいから小さい規模でも上場してしまおうと。

佐々木:あとは世の中が赤字に対する耐性が薄いことも大きいかもしれませんね。

奥平:最近も上場して赤字だと言って株主のプレッシャーがかかっている会社がありますけど(笑)。

佐々木:そうですね。怒られていますよね。

瀧口:それで株が下がったりしますしね。でも最初から赤字を出すと明言しているにもかかわらず、株が下がるというのは不思議だなと思ってしまいますね。

奥平:あれは私はコミュニケーションの仕方にもやや問題があって、そうは言いつつも少しオブラートに包んだ形で物を言っているので、きちんと伝わっていないのかなという気がします。でもやっぱり経営者としてはそういうフェーズに入った場合、向こう5年間は赤字ですと宣言して上場するのは勇気がいるじゃないですか。

佐々木:でも結構海外の会社はしているんですよね。

瀧口:すごいですね。5年間は赤字です、でもうちの株を買って下さいって堂々と言える。

佐々木:何年までは赤字ですって言っていますね。

奥平:その場合は、その代わりとしてものすごくビックピクチャーを示して信頼を得なきゃだめですよね。経営者なり、経営ビジョンに対する。なかなか日本の会社でそれが今できるところがどれだけあるのかというのはありますね。