カルチャーキュレーション番組"ぷらすと×Paravi"年に1度のイベントとして、今年のベスト映画を決める「ぷらすと的2018年ベスト映画!」の公開生配信が12月22日(土)に東京・スマートニュース本社にて行われた。
年末恒例の人気テーマで、今年公開された映画のベストテンを、ぷらすと映画回出演陣がワイワイと議論しながら決定していく人気回。今回は、MCに西寺郷太を迎え、ゲストに宇野維正、添野知生、松崎まこと、花くまゆうさく、矢田部吉彦、松崎健夫とおなじみの映画好きメンバーが勢ぞろい。アシスタントのぷらすとガールズには池田裕子が出演した。
ルールは劇場で有料公開された映画を1月から挙げていって、それぞれの月でどうしても残したいという作品を選び、最終的に10本を選ぶというもの。さらにベストテンから漏れてしまった作品で、それぞれがどうしても推したいという作品に個人賞を出す。
まずは月ごとからの選定が開始するものの、序盤からゲストたちの議論が白熱!スティーヴン・スピルバーグが『レディ・プレイヤー1』とほぼ同時進行で製作していた『ペンタゴン・ペーパーズ』の話題では、松崎まことが「『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』と同じことを20年たってまたやっている」と称えると、ゲストたちもうなずく。
『ブリグズビー・ベア』では、花くまが「最初の設定が最高」と語ると、松崎健夫も「普通はアレを最後のオチにしてもいいぐらいの物語」と賛同。松崎まことは「思い入れ度が高い映画。見た人の好きさはすごく大きい」と称賛するなど同意見が連発した。
松崎建夫は「『寝ても覚めても』の濱口竜介監督とは一緒に映画を作っていたし、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督とは現場で一緒に助監督をやってもらっていたので、その2人が同じ日に商業デビューする作品をやるなんて、すごいこと。よくぞこんな映画を作ったなと思う」と胸の内を明かすと、宇野も「客観的にこの2つはダントツ」と同意。
同意見が飛び出す作品もあれば、意見が分かれる作品も次々と飛び出していた。宇野が「『グラン・トリノ』以来の傑作」と挙げたクリント・イーストウッドの『15時17分、パリ行き』では、矢田部が「初めてクリント・イーストウッドにガッカリした。『グラン・トリノ』は文句はないけど......」と言葉を濁すと、松崎健夫から『グラン・トリノ』があまり好きじゃないけど、これは傑作」と議論が繰り広げられた。
怪獣映画として『ランペイジ』の話題になると、花くまは「ザ・ロック枠としては、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』がいい」とドウェイン・ジョンソンネタで笑いを起こすが、添野が「僕は『ランペイジ』推し。今年の怪獣映画でベストワン。そもそもそんなに怪獣映画はなかったけど(笑)。でも、自分のベストテンに怪獣映画を入れたいじゃん」と笑顔を見せた。
さらに、『スリー・ビルボード』や、今年を語る上で欠かせない『ボヘミアン・ラプソディー』の映画的な寓話性についての好みの問題、2018年 東京国際映画祭のコンペティションでの芸術性と商業性の話題、映画タイトルに必要とされる分かりやすさ、ネットで映画を製作する人たちが興行へ進出する意義など、ゲストの深い造詣に基づいた様々な話題が続出した。
それぞれの推し映画についても熱いコメントが連発。宇野が、他のメディアでも挙げているという『君の名前で僕を呼んで』について「これは1位でしょ」と断言。矢田部は、第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『顔たち、ところどころ』を「個人的にベスト級」と挙げた。松崎健夫は、『孤狼の血』の松坂桃李を絶賛しつつも、ベストワンとして「『2018年、何を見たらいいんだ?』と聞かれたら、『ワンダー 君は太陽』を見てくれと言う』と激推しした。松崎まことの激推しは『タクシー運転手 約束は海を越えて』。そのタイトルが挙がると、花くまが「トラック野郎オマージュがすごく好き。僕も今日、トラック野郎オマージュの服を着ているんです」と語り、会場の笑いを誘った。『ザ・プレデター』が好きと言う花くまは「それまでのシリーズに思い入れがないんですけど、このメンバーがプレデターと戦うんだと思ったらワクワクした」と熱の入ったコメントをしていた。
また、今年話題となった『カメラを止めるな!』については、『万引き家族』と合わせて、ゲストたちも「当然の候補。今年の映画業界、日本映画を語る上で欠かせない」として推薦。また、『菊とギロチン』を挙げた松崎健夫は、その理由について「ヒット作を生み出している瀬々敬久監督が自己資金で自主映画として作ったところに、今の映画監督たちが本当にやりたいものを作れているのかという現れがある」と語った。インディーズつながりとして『カランコエの花』を強く推す松崎まことは「ロングランしていて、今年のトピックス。39分の中でギューッと作られている」と説明。
そして、アシスタントをしながら鋭いコメントをしていた池田の今年1番は『若おかみは小学生!』。その言葉に、映画好きのゲストたちも納得した様子。『ファントム・スレッド』を今年1番好きと語る西寺は「好きだと言い続けていたらコラムの依頼があったんだけど、"天才仕立て師を巡る過激な愛に、意外にも共感を覚えた。"というキャッチコピーを編集部から付けられたんですよ。だけど、僕は"意外"なんて思っていないということをここで言っておきたい!」と力説し、会場は笑いに包まれた。
イベントは月ごとの選定が終わり、候補の中で見ていないものを省くという段階に。そこで、宇野が「見ていないのが実はありまして、しかも同じ系統で、『パディントン2』と『ブリグズビー・ベア』が......」と話すと、周りから「『ブリグズビー・ベア』はクマの映画じゃないよ!」と総ツッコミを受けて、会場は大爆笑。舌鋒を続けていた宇野も「クマの映画じゃないの? 完全にクマ枠の映画だと思ってた。ゴメン(笑)」と思わず恐縮。すると、花くまが「これだけ辱めを受けたんだから、『パディントン2』はベストテンに入れましょう」とコメントし、会場はさらなる笑いで盛り上がった。
白熱した議論や熱量タップリのコメント、爆笑トークが終わり、ベストテンと個人賞には以下が選ばれた。
【ぷらすと的2018年ベスト映画 ベストテン】
1位:ペンタゴン・ペーパーズ
2位:君の名前で僕を呼んで
3位:ブリグズビー・ベア
4位:きみの鳥はうたえる
5位:万引き家族
6位:菊とギロチン
7位:孤狼の血
8位:タクシー運転手 約束は海を越えて
9位:ブラック・パンサー
10位:カメラを止めるな!
【ぷらすと的2018年ベスト映画 個人賞】
西寺:ファントム・スレッド
宇野:15時17分、パリ行き
添野:ランペイジ 巨獣大乱闘
松崎健夫:ワンダー 君は太陽
花くま:ザ・プレデター
矢田部:顔たち、ところどころ
松崎まこと:カランコエの花
池田:若おかみは小学生!
観客を前にした2時間半にも及ぶ生配信で、今年も大いに盛り上がった「ぷらすと的2018年ベスト映画!」。"ぷらすと×Paravi"ではアーカイブ配信もされるので、ぜひ2018年の締めくくりとして映画ライフのお供に楽しんでほしい。
(C)Paravi