「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
ビッグデータ分析のトレジャーデータの創業者、芳川裕誠さんは三井物産の投資担当としてシリコンバレーに赴任。世界に挑戦するためそのシリコンバレーで起業する道を選んだ。日米のスタートアップ事情に詳しい芳川さんに、世界で通用するベンチャーを育てるために何が必要かを聞く。
奥平:後編は人となりをうかがうということで。
瀧口:芳川さんヒストリーの部分をうかがっていきたいと思います。
奥平:そもそもどういう経緯からレッドハットで働くことになったんですか?
芳川:当時の(レッドハットの)副社長さんに誘っていただいたんです。アルバイトで入ったので最初はお手伝いや教材の翻訳をしてたんですが、いつの間にかテクノロジーの講師みたいな勉強もさせてもらったり、お客さん向けのエンジニアの仕事もしたりするようになって。最終的には事業開発のチームにも入れてもらいました。
芳川:結構日本のメーカーさん、アメリカのメーカーさんと切った張ったをやる経験もさせていただいて、本当にいい経験でしたね。卵からひよこが孵ると一番最初に見たものを親と思うみたいな話で、それに近くて。レッドハットが僕の職業の原体験になっていますね。
奥平:今の話をうかがうと、特に起業志望、海外志望だったというよりは、アルバイトで入った所に流れでそのまま居ついたという感じですよね。
芳川:そんな感じですね、面白かったので。就活もしたんですけどまあいいやと。誘っていただいた会社も他にありましたけど、このままレッドハットの方が絶対楽しいと。レッドハットに僕がいたのが2001年~2002年くらいからですが、ちょうどLinuxがテイクオフする時だったんですよね。
奥平:ちょうど(レッドハットの)急成長時期を見ておられたと。
芳川:そうです。それを見ちゃうとやっぱり。ちょうど就職氷河期みたいなところもあって、他の会社に行ってもな、と思う部分もあったので。
瀧口:レッドハットには何年ぐらいいらっしゃったんですか?
芳川:バイトの時期も含めて足掛け7年でしたね。
瀧口:その後三井物産に行かれて。
芳川:そうですね。
奥平:また不思議なキャリアチェンジですよね。
瀧口:どういう経緯だったんでしょうか。
芳川:またこれも面白くて。僕を誘ってくれた方が三井物産が投資した先の日本企業の社長さんになったんです。その会社が三井のベンチャーキャピタルのオフィスでインキュベートされていたので、そこに遊びに行ったりしていて、(三井物産の)投資担当者と仲良くなって。それで実はIT業界の経験者を採用するという話があって、じゃあということで僕が手を挙げて。そうしたらすぐにポジションを作ってくださいましたね。
奥平:それはシリコンバレーで働くという前提で入られたわけではなかったんですか?
芳川:全然。VCってちょっとかっこいいじゃないですか。やったことがない業界だったので、チャレンジしようかなと思ったんですよね。でもふたを開けてみると当たり前ですけど、僕ソフトウェアしかわからなくて、業界として。いろいろな半導体の投資やWEBサービスの投資も関わりはしましたけど、やっぱり自分の力が生きるのはソフトウェアだなと。その中で日本にソフトウェアインダストリーってあまりないんですよね。もちろんゼロではないんですけど、なかなか難しいなという中で、シリコンバレーの駐在の話をいただいて向こうにいったわけです。
奥平:行かれたのは何年ですか?
芳川:2009年です。だから最悪の時ですね。
奥平:リーマンショック後で、ほぼみんな瀕死みたいな時ですよね。
芳川:ありとあらゆる老舗、老舗中の老舗みたいなベンチャーキャピタルが解散したりということがあったり。新しい投資が打てる環境では必ずしもなかったんですが、その分いろいろなネットワーキングもできたし。いろいろな勉強もさせてもらったので良かったと思いますね。2009年に行った時に、つぶれそうな会社に追加投資ということはありましたけど新しい投資はあまり打たれていなくて。ただ綿々と続いていたのが二つあって。
一つがビッグデータ、データのテクノロジー。オープンソースを中心としたデータのテクノロジーの会社がどんどんできていった。もう一つはクリーンテックです。環境系のテクノロジー。後者は僕は門外漢ですけど。
奥平:でも前者でよかったですよね。後者はその後大変な目にあいましたから。あれはオバマ大統領の時でクリーンテック振興もあって補助金も入ったからクライナー・パーキンスのような老舗VCもたくさん投資して火傷してますもんね。
芳川:大火傷ですね。バッテリーのテクノロジーとか、空のテクノロジーとか巨大な倒産も。
奥平:ソリンドラとか。ソリンドラはオバマ大統領が視察に来た太陽電池工場ですが、つぶれてしまいましたね。その中でビッグデータを。