【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第5回

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【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第5回
【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第5回

第5回 賢さってなに!?

土岐、新宅、天明で「動物と教育」というテーマで語るテイダンの5回目。いよいよ最終回。果たして、今回のテイダンはどんな形に着地するのか?

第1回はこちら:【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第1回

第2回はこちら:【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第2回

第3回はこちら:【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第3回

第4回はこちら:【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第4回

チンパンジーの知能実験から見えてくるもの

天明:新宅さん、動物園にお勤めになっていた時、飼育係と動物の関係性を築くのって難しかったりしましたか? 何が一番大事なんですか?

新宅:教えるっていうポイントで言えば動物園じゃなくて大学の時にやっていたことで面白いなと思ったのが、チンパンジーの知能を研究していて、チンパンジーはめちゃくちゃ賢いんです。ちなみに動物の学習実験ってどうやってやると思います?

土岐:学習実験っていうと?

新宅:いろんな課題与えて答えさせる実験あるじゃないですか。

天明:ボードのスイッチ押させたりするやつですよね。

新宅:行ってみるまでわからなくて。「明日その実験やるから」って言われて翌日行ってみたら「今日はやらない」って。「何かあったんですか?」って聞いたら「チンパンジーの気持ちが乗ってないから今日は無し」って(笑)。

天明:チンパンジーもやる気がない時があるんだ(笑)。

新宅:やる気がある時以外に強制的に無理やりやらせると、わざと嘘ついて適当に答えるから正確なのが出ないと。だからそういうのを見極めて今日はやるとかやらないとかが決まるんです。

天明:人間と同じなんですね。

土岐:確かに。

新宅:そこでパソコンでタッチパネル使っていろいろ答えられるような、人間の言語の問いかけに対して人間の言語で答えるっていう、今それをiPadみたいなものをやらせるんですけど、ほぼほぼ、なにこれ人間?っていうくらいに普通に会話できるようになっていくわけです。

土岐:すごい!

新宅:外国人と話してるくらいの感じですね(笑)。

天明:完全に知性と個性を持って会話しているんですね、チンパンジーたちは。

新宅:冗談言ったりもしてくるし。

土岐:ユーモア!

新宅:そうそう、ノリで嘘ついたり。人間と変わらないじゃんって気持ちになるんですけど、実験が終わるじゃないですか。終わると群れに帰しますが、普通考えるのは人間とほぼ同等の学習能力と言語能力を持ったやつが戻ったらリーダーになると思うじゃないですか。その子は何なら下の方だったんです(笑)。

天明・土岐:えー!

新宅:人間の英知を持ってすれば皆を取り仕切ったりできると思いがちですが、やはり価値観が全然違って。チンパンジーにとって人間の言語というのは別にどうでもいいんですよね。

天明:人間の賢さっていうのは、サルたちにとってはあまり価値が無いと。

新宅:動物は学んだことを仲間に教えることができないので広まってもいかないんです。自分は人間の言葉を何百個もしゃべれるからみんなに「これはペットボトルだよ」って言って、みんなで一緒に「ペットボトル」みたいなことはやらないですからね(笑)。自分だけのものでおさめちゃう。それこそ猿の惑星みたいな感じに知識が広まっていくのかなって思いましたけど、動物の場合は無いんです。

天明:面白いですね~!

新宅:人間との差は大きいし、同時に人間の教育システムというのがどれだけすごい装置なのかって思います。パソコンの仕組みを知らなくても使えるじゃないですか。これは動物にはできない。作る段階でもすごいし、作ったものを使いこなすのもすごい。人間が2万年以上かかって到達した文明、例えば足し算も私たち簡単にやってますけど、そこにたどり着くまでに何万年もかかっていますからね。それを45分とか1時間の中で数万年かかったことを授業という形で教えて、全員に共有できるわけじゃないですか。その知識の広がり方と共有の仕方の加速度は、やはり動物たちが、ちょっと学んだり教えたりというのと量も質も全然違うので。それは人と他の動物が変わって来る大きなきっかけになったんでしょうね。

天明:改めて、人間ってすごいんですね。

新宅:動物も似たようなものあるけど、できそうでできないんですよね。

天明:さっき犬や猫が人間を喜ばせるためにいろいろやるってお話で、人間の子供も親の期待に応えようとして頑張ったりするけど、そこが反発の材料になることもありますね。

新宅:実は人間の言葉を覚えたチンパンジーが人間の言葉を使わないということにすごいショックを受けて。つまり彼らはやれるのにやらない、やる能力がありながらやらない。人間が価値を置いている学問は、動物の中ではあまり大事なことじゃないんじゃないかという気がして。大事なのはもっと感情的なもの。相手を思いやれるとか。それは実験や研究ではできなくてもエピソードを集めるしかないんですけど。死んだ時に何をどう悲しいと思っているのかとか。それは実験じゃ解明できないのでエピソードを集めて。そういうのを知りたくて動物園に就職したんです。そっちの方が私は価値があるんじゃないかと思うんですよね。

天明:人間側の理屈を押し付けがちですよね。

新宅:人間の価値観みたいなものを動物に押し付けて「できた、できない」、「すごい、すごくない」ではなくて。もっと心の奥深さみたいなものが本当に人と違うのか、もしかしたら人より上なのか。そこはまだ手付かずになっているところかなと思います。だから人間同士の教育も、親の価値観で押し付けるということにどれほどの価値があるのか。何かの芽を摘んでいる可能性も当然あるわけですよね。

土岐:その価値観を受け継いだとしても、その表現方法が親と違うってこともありますよね。

新宅:あるでしょうね。そういうのっていろんな要素が入るでしょうし。人との運命的な出会いがあったり、自分自身による働きかけがあったり。どうアウトプットしていくのかが問題です。

天明:親から具体的なモノとして継承されていなくても、価値観は受け取っているような気はしますね。たぶんそれはみんなそうだと思いますけど。土岐さんのさっきの話もそうですよね。アウトプットの仕方は違うけど、音楽に対する姿勢とか取り組み方、見ていて何かしら親から受け継いでいるんでしょうね。

新宅:たぶん突き詰めていくと大事なのはそこかもしれないですよ。例えば知識の量をどれだけ持っているかではなくて、学問の本質や学ぶ面白さみたいなものを知っている。自分の周りにそういう人がいると、到達点や面白さに気付きやすいというか、近道なのかもしれない。

天明:もしお子さんが動物学をやらなくても、たぶん新宅さんの価値観みたいなものはちゃんと受け継いでいるんじゃないですか?

土岐:いまこうやってじっくりお話を聞いて、新宅さんのお話の中に文系の要素というか、文学的なものがたくさんあるから。だから何の不思議もないというか。突然理系のお父さんから文系の子ができたってことでもない気がしましたね。

天明:そうですね。実はちゃんと受け継がれるんだなと。

新宅:そういうカッコイイ言い方があったんですね(笑)。

天明:新宅さんのお話を聞いていつも思うのが、動物を通して人間を見ると、人間をもうちょっと柔らかく把握できるというか。新たな発見がいつもありますよね。

土岐:確かに。

新宅:それは僕がアホだからなんですよ(笑)。言葉でうまくまとめる仕事の人が言うと。

天明:得意な人いますよね。

新宅:たくさんいるじゃないですか。そういうのが苦手だし、まとめるのではなく結論が出なくてもいいと思っていて。でも知りたいことが山ほどあった時に、動物と比較したり、動物だとどうなんだろうというのは専門用語とか学術と関係なく、ある種子供でも自分のものにできるじゃないですか。自分はこの動物見てこう思うなということをそんなに難しくなく考えたり。

『SAFARI』から感じること

天明:音楽もそういう力あると思っていて、土岐さんの『SAFARI』がリリースされた時のインタビューをいくつか読んでいた時に、「音楽で今の東京の感じを閉じ込める、パッケージするというのが、自分の子どもの頃からそうだった」と。「全然体験してない昔の東京を、音楽を聴くと疑似体験できた。そういう風に『SAFARI』という作品の中でも今の東京を閉じ込めたい」っていうお話をされていたと思うんですけど、最初『SAFARI』を聴いた時に、夏の東京の感じってこういうのだなって、直感的に伝わってきました。

土岐:今は写真や映像があるから、何年代の東京はこんな感じでしたってあるけど、それだけだと想像できないものがあって。それってやっぱりその時代の感覚だと思うんですね。音楽も一つの感覚。これは悲しい曲ですよと思っても、悲しい曲と言っちゃうとそう聞こえるけど、そう言わなければ人それぞれ受け取り方が違って。その人の景色で受け取るわけですよね。だから全部が同じように方向づけられないです。でも自分なりに今の気持ち、今の東京の雰囲気というものを細かく言葉を選んで作っていくと、受け手が全く同じものではないけど、その人なりの今の景色みたいなものを焼き付けてくれるんじゃないかなって気がして。

天明:確かに。

土岐:でも答えはわからないから、写真や映像みたいに完璧ではないんだけど、写真や映像みたいにリアルで具体的なものじゃないものを伝えたいわけだからそれでいいやと思ってます。

天明:僕が見ている東京と土岐さんが見ている東京は違うんだけど、でも同じニュアンスを共有できるっていうのは不思議なんですよね。

土岐:具体的な言葉や固有名詞を使うと想像力をそぐみたいな考え方の人もいるんですけど、ある程度そういったものをちりばめておくとそれがキーワードになって、点と点が線でつながってそれぞれの似たような経験を思い出すことができるというか。

天明:固有名詞や、具体的な風景が入ると、その曲を自分のものにできるというか。そんなことも含めて、意識して作られているから素晴らしいなといつも思ってます。

土岐:ありがとうございます。

新宅:歌詞って説明し過ぎないのがやっぱり面白いですよね。説明のマニュアルじゃない。だから全員受け取り方変わるけど、たぶん出し手の方向みたいなものはみんな乗っかっていくわけですよね。そこの枝葉が自分の経験や体験と混ざって変わっていく感じ。

天明:そうですよね。不思議だよなあ。

土岐:不思議。「予感」っていう言葉を聞いた時に、みんな大体どんなことを思い浮かべるか。不安な気持ちなのかときめく気持なのか、ということがなんとなく具体的な言葉よりはもう少し広がっている。そう考えていくと、一つの言葉で受け取り方が何通りもあるような言葉もあるんですよね。最大公約数がつかみにくい言葉。だからそういう言葉と、絶対的にイメージできるような言葉を混ぜていくと、聴いた人のオリジナルの景色ができる。だから最大公約数みたいなものをすごく考えます。私的にこの言葉はハッピーだと思ってもスタッフの人に聞いてみると実はそうでもなかったりして。結構不吉な言葉かも、みたいなことを言われちゃうと、これは普遍的じゃないんだって思ったり。どんな解釈をしてもいいけど、ミスリードをしすぎちゃうなと思ってやめることもありますね。

天明:土岐さん自身が独特だもんなぁ(笑)。

土岐:感覚がちょっとね(笑)。

天明:えー!?っていうことがよくあります(笑)。

新宅:それもやっぱり、動物だともっとステレオタイプなんですよね。こういうの入ってきたらこっち、こういうのがきたらこっちという。意外とデジタルなんです。ハッキリしてる。でも人間って根本がそういうところアナログっぽくて。微妙ですよね、受け取り方とかも。

天明:どっちとも取れるとか。よく日本語って単語の文字列が違っていても、ちゃんと言葉として認識できるじゃないですか。それってデジタルっぽくない、すごくアナログな感じしますよね。自分で調整してそう思い込むみたいな。

新宅:アナログの良さってチューニングの雑さですよね。自分だけのチューニングができたりするじゃないですか。その辺の楽しみは残しておきたいですよね(笑)。

天明:今日の記事も「動物と教育」というのがテーマですけど、学校の先生とか検索で引っかかってくるかもしれない、期待していた内容と違うかもしれないけど、教育の現場で良きヒントになる気がします(笑)。

新宅・土岐:(笑)。

天明:教育ってデジタルであるべきじゃないですよね。アナログ的にチューニングを合わせるタイプの子供たちがいると思うのでね。あんまり0か1かということに教育の現場がならないでほしいなとすごく思うんですよね。

新宅:そこは教える側のスキルが問われますよね。相手の才能を引き出すというのは、引き出す側のスキルが問われるわけで。それが下手な先生と呼ばれる人が増えてきちゃうと暗記的な教育とか塾っぽい感じの、目標がこれを全部覚えればいいという一番簡単なものになっちゃいますね。

天明:いま子どもたちゲームするでしょ。だから暗記とか答えが出るものってなめちゃうと思うんですよね。すぐわかっちゃうし。時間をかければできるって思っちゃうから、しっかり勉強しないような気がするんですよね。

新宅:僕がこの世で一番嫌いな言葉の一つに「雑学」という言葉があって。「雑学」とか「トリビア」って言葉大嫌いなんです(笑)。と言いつつそういう本をたくさん出してて(笑)。

天明・土岐:(笑)。

新宅:誰よりも片棒を担いでるんですけど(笑)。

天明:自分でそれを生業としてやってるなって自覚してるという(笑)。

新宅:雑学ってよくネーミング付けたもんだなと思うんですけど、やっぱり雑な学問ですよね(笑)。本当に。それ以上深まらないし、あれは何のためにあるかっていうと人に自慢したいためでしょ。卑しい気持ちがどこかにちらついているので、何かをきっかけに好きになってそれを掘り下げるようなものが本当の教育であり学問であると思うので。ああいう見せびらかしたり自分を背伸びして教養あるかのように振る舞うような、ショートカットするツールみたいなものは邪道っていうか、学問や教育ではないですね。でもそれをきっかけにすることが好きになったり、歴史が好きになったり動物が好きになったりするならいいですけどね(笑)。

第1回はこちら:【テイダン】土岐麻子×新宅広二×天明晃太郎:テーマ「動物と教育」第1回

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