新規事業のプロ 守屋実氏が説く、大企業がやるべき3つの断捨離

PlusParavi
新規事業のプロ 守屋実氏が説く、大企業がやるべき3つの断捨離
新規事業のプロ 守屋実氏が説く、大企業がやるべき3つの断捨離

「スタートアップ」が未来を創る――。番組がオフィスに足を運び、話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

フリーランスの守屋実さんはミスミの写真時代も含めて数多くの起業に携わってきた。勝率は決して高くはないが、多くの学びは失敗の中から得られたという。では、成功するための公式はあるのか?豊富な資産を抱える大企業が新規事業でつまづく原因はどこにあるのか?「会社のプロ」ではなく「仕事のプロ」を自認する守屋さんに疑問をぶつけてみた。

20190628_nikkei_07.jpg

20190628_nikkei_04.jpg

瀧口:こちらの本は守屋さんが出された本ですか?

守屋:はい。5月に出版させていただきました。

瀧口:結構最近なんですね。

守屋:まだ出たばかりです。

奥平:本は書く人じゃなくて書かれる人になれという教えがあったと伺いましたが。

守屋:はい。ミスミ創業者の田口(弘)さんに言われた話では「本は自分では書くな」と。自分で書く人間は二流だそうです。

奥平:今いろんな人を敵に回しましたけど(笑)。

守屋:「一流の人間は他の人に書かれるから、自分で書いてる暇があるならば書かれる人間になれ」と。そういうことをずっと言われていたんです。

瀧口:でも今回守屋さんはご自分で書かれたわけですね。

守屋:田口さんにメディアの露出もするなと言われていたんですが、去年2ヶ月連続で2社が上場した時に田口さんに報告しに行ったら「あんた本は出さないのか」と。

瀧口:あれ、おっしゃっていることが(笑)。

守屋:お、これは解禁になったなと。

瀧口:田口さんはご自身でおっしゃったことは覚えていなかったんですかね。

守屋:覚えていなかったみたいです(笑)。

奥平:偉い方は大体忘れちゃいますよね(笑)。

瀧口:『新しい一歩を踏み出そう!』『会社のプロではなく、仕事のプロになれ!』と書かれていますけど、これは守屋さんの生き方を表現されている言葉ですね。

奥平:ミスミのプロになるわけではなくて、新規事業のプロを目指すと。

守屋:そうですね。例えば企業が倒産する平均年齢って23.5歳らしいんです。なので例えば22歳で大学卒業後に設立1年目の会社に入ったとすると、45歳くらいで確率論的には倒産する可能性がある。そうするとその会社のプロとしてその会社のことだけをずっとやってきて、45歳くらいで放出されることになると、たぶん46歳から次の会社のプロにならなきゃいけないじゃないですか。

22歳から新たにプロになろうとする人と、46歳からプロになろうとする人、もしくは定年退職してから次の会社のプロになろうとする人がいると、年齢を重ねるにしたがってだんだん戦いは厳しくなってくる。だとしたら企業に所属していても自分はその仕事のプロになるという、その仕事を一生懸命頑張って動く方がたぶんセーフティだと思うんです。

奥平:実際経団連に加盟しているような重厚長大な会社のトップが「もう終身雇用は無理だ」と言い始めていますので、まさに時代環境としてもそういうことだと。

20190628_nikkei_05.jpg

守屋:たぶん昭和の時代は終身雇用くらいが雇用する側もされる側もちょうどよかったと思うんですけど、平成の時代になんとなく変わってしまって、きっと今後の令和の時代には終身雇用できる人ってほぼいないんじゃないかと。ですので、会社のプロとして一枚の名刺で何の仕事でもしますというより、1個の仕事でたくさんの名刺を持っているほうがいいんじゃないかと。これからはそうなんじゃないかと思いますね。

瀧口:たしかにトヨタがそういう発信をしたことは結構衝撃的でしたね。

奥平:まさに前回名刺入れをお持ちいただきましたが、その世界ですね。

瀧口:この本で伝えたかったことは、その他にも何かあるんですか?

守屋:ある日突然私は何かの仕事のプロです、と言っても誰もそれを認識してくれないと思うんです。例えば弁護士さんだったら弁護士という資格があるので、弁護のプロというのはわかりやすい。でも「新規事業士」という資格はないし、新規事業のプロと言っても誰もわからない。だから自分自身が胸を張って言えるように量稽古をすることは大事ですね。

奥平:プロになれということはある程度の期間言われてきたことですけど、まさに国家資格がない場合に私はこれのプロです、と言うことはすごく難しいですよね。ご自身はどうやって新規事業のプロです、と言えるようになったんですか?

守屋:自分自身の量稽古でいうと、田口さんという方にミスミで出会って、ミスミで10年、エムアウトで10年、合計20年17件の新規事業に携わらせていただいたので、それ自体が量稽古だったんですけど、それ以外で自分でも頑張ったこととしては、量稽古しましたと言ってもそれが人に伝わるか伝わらないか。第一想起してもらえることって大事だと思うんです。

よく僕は仕事のプロをピン芸人に例えるんですが、ピン芸人は芸風がわからないとキャスティングされないと思うんです。自分の芸風をきちんとまとめて人に伝えられるようにするかは結構大事で。それが私流にいうと算数で自分の経歴を表すということになるんです。

瀧口:前回ご紹介させていただいた、「50=17+19+14」こちらですね。詳しくは前編をご覧ください(笑)。そういった表現を身につけていかれたということですね。

PICK UP