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IGSの適性検査ツール「GROW」は企業向けだけではなく、小学校の生徒の評価やクラス分けにも活用されている。子供時代から社会人として年齢を重ねていくまで1人のデータを蓄積し、その人の成長を支えるビッグデータ起業になる、というのが同社の目標だ。学歴や所属企業を離れ、適正な評価を支えに1個人として自信を持てる人が幸せになる、と福原正大社長は熱く語る。
瀧口:後編もよろしくお願いします。前回会社で使われている適性検査「GROW」のお話を伺いましたが。
奥平:瀧口さんの自己評価と他者評価の差が大きかったという話ですね。
瀧口:それ必要ですか?(笑)
奥平:前回のダイジェストとして申し上げておきます(笑)。
瀧口:そこは流してください(笑)。その「GROW」の学校版があると伺いましたが、どんなものなんでしょうか。
福原:私たちは教育の会社でもあるので、高校生や中学生の子が単に記憶力や計算力、つまり偏差値だけで評価されるということに対してずっと違和感を持っていました。もっと多様な強みというものを子どもたちにも理解してもらって、各々の強さを伸ばせるような教育はどうやったらできるだろうということを考えていたので、小・中・高校生版を作ったということがあります。
瀧口:通常の「GROW」はスマホでできるタイプでしたけど、この「Ai GROW」はどのように使うものなんでしょうか。
福原:同じようにスマホやタブレットで使うことができて、担任の先生や親御さんがデータを見ることができます。
奥平:今はどのくらいの利用があるんですか?
福原:まだ4月に立ち上げたばかりなんですが、3ヶ月で50校を超える学校に導入いただいて、昨年この一部のプロトタイプを作ったものを経済産業省の「未来の教室 ~learning innovation~」というプロジェクトに採用していただいたので、日本中に広まってきているサービスです。
奥平:50校というと、公立もあれば私立もあるということですか?
福原:そうですね。小学校低学年から高校生まで幅広く使っていただいています。
瀧口:親御さんもお子さんも見ることができるんですか?
福原:ご本人が見るかどうかは担任の先生のご判断によるんですが、先ほどの瀧口さんのお話じゃないですけど、自己評価と他者評価がずれた時にしっかりとした説明をしないと本当の強さが分からないんですね。ある面白いことが分かっていて、とても評価の高い先生の子どもたちは自己評価が他者評価よりもかなり高いんです。子供たちがしっかりとした根拠がなくても絶対的な自信を持っているというのはとても良いクラスの特徴なので、そういうことが見て取れますね。
奥平:瀧口さんは良いクラスらしいですよ(笑)。
瀧口:もういい年ですが(笑)。
奥平:スタートアップの経営という観点で見ると、最初のお客さんをどうやって連れてくるかって難しいじゃないですか。特に学校や教育というのは敷居が高くて、さらに個人データを扱うので、ますます敷居が高いと思うんですが、どうやってそこに入っていかれたんですか?
福原:一番最初の話でいうと、スーパーグローバルハイスクールという学校の支援をしていたので、そういった所から資金をいただいたり、今回の「Ai GROW」はかなり経済産業省の「未来の教室 ~learning innovation~」、まさに政府主導の大きなプロジェクトのおかげで立ち上げやすかったということがあります。
瀧口:その「未来の教室」ではどんな取り組みをしているんですか?
福原:21世紀社会は文理融合しないといけない。でもご存じのとおり今って文系、理系わかれてしまって文系の子は理系を勉強しないし、理系の子は文系的な要素がない。これを融合しないといけないというのが一つのコンセプトで、STEAM(スチーム)教育というのに力をいれています。STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)です。
この教育に力を入れることと、ビッグデータとAIの活用を通じて個別化した教育です。今までは一人の先生が40人に同じ授業をしますが、クラス内でも生徒がいろいろと違うわけで、個別でするとこんな授業いらないのに、というものも出てきたりします。個別化を急速に図らせていくという意味においてのテクノロジー利用に、非常にサポーティブな形で経済産業省に入っていただいている形になります。