商社マンが生みの親、スマート保育園の誕生秘話

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商社マンが生みの親、スマート保育園の誕生秘話
商社マンが生みの親、スマート保育園の誕生秘話

「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

「スマート保育園」のプラットフォームを提供するユニファの土岐泰之代表取締役CEOはもともと総合商社出身。創業当初は、資金繰りに加え、アポなしで保育園を訪れて不審者扱いされるなど苦労も多かった。なぜ、商社マンから家族をテーマにした起業家を目指すことにしたのか、創業エピソードを聞く。さらに保育のビッグデータを活用して子供の才能を発掘するなど新たなビジネスモデルの可能性を考える。

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瀧口:それでは前回に引き続き、ITで子育てのスマート化を進めるユニファの土岐社長にお話を伺っていきます。そもそも"スマート保育園"というコンセプトをどうして事業化しようと思われたんですか?

土岐:私自身、子供が2人おりまして。妻も仕事をしていて共働きでいろいろな苦労がありました。そういった自分自身の課題が一つのきっかけです。それを解決しようとするとどうしても家庭だけじゃなくて保育園も含めてこの課題に向き合わなくてはいけないと思い、最初は保育園の写真の事業から動き始めました。

私にとって家族で苦労してきた部分があったので、「家族」というものをそのまま事業のテーマにできればいいなと思ったことが大きいです。さらに妻が働き続けるために私が東京での仕事を辞めて引っ越しをしたり、人とは違う経験をしてきたので「家族」をテーマにした挑戦ができれば自分らしくできるかなと思い至り、この事業を始めました。

瀧口:最初に選ばれたのは写真の事業だったんですね。

土岐:そうなんです。やはり保育園と家族をつなぐものは我が子の写真だと思い、その部分をまずはしっかりとスマート化しようと動き始めたのが約6年前です。そこから始まりましたね。

瀧口:6年前からやっていらっしゃるんですね。

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神先:「家族」というテーマだとなかなか事業として成り立たせるのが難しいと感じることもあったと思うんですが、どういう思考プロセスで事業を見つけていったのか、その辺りのストーリーが気になります。

土岐:実はもともとは"ママが自分で撮った写真をおじいちゃん、おばあちゃんに共有するような家族SNS"みたいなものを作ったんです。そうすると写真がチープなものになっていったり、写真を撮るのも大変だなと。保育園の我が子の写真であればママが見たくても見れないものですし、よく見ると(園では)壁張りだけど写真も売ってるなと思いまして。

園内の写真は大きな価値があると思いますし、みんなが見たくても見られなかったコンテンツがあればそこに集まって来るなと思ったんです。お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、みんなが集まればいろんな形で家族を支援していくようなプラットフォームができるんじゃないかと思い、一番初めに保育園に足を踏み入れたという形です。

神先:最初苦労されたことはありますか?

土岐:たくさんありますね。まず保育園で営業しようとしてもアポなしでピンポンするとただの不審者扱いなんですよ(笑)。「なんかおっさん来た!」みたいになってしまいますから(笑)。いろんな方に紹介してもらったりしないと、ある意味壁が厚い。そこから始まりましたのでどうやって一つ目のお客さんを作っていくか。あとはシステム開発もやったことがなかったので、どうやってエンジニアを集めるか。そうこうしている内にお金もなくなってくる・・・というような感じでした。

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神先:創業は2013年ですか。今ほどスタートアップの資金調達環境も良くなかったと思うんですけど、お金まわりも大変だったんじゃないですか?

土岐:初めは当然私が出して、その後ベンチャーキャピタルにも声をかけたんですが、「保育園? 写真?」という感じでなかなか相手にしてもらえませんでした。その後は友人にエンジェル投資家として出してもらったりしていました。途中で我々が保育園をつかみ始めたり、大手の保育園の顧客が出てきたので、そのタイミングでベンチャーキャピタルも出してくれて。その頃からスピード感が増してきましたね。

瀧口:もともとは商社やコンサルのご出身だったわけですよね。

土岐:商社ではベンチャー投資をしていましたし、コンサルでは大企業の経営コンサルタントをしていて、保育園とは全然関係ないことをやっていました。私自身がずっと人生をかけられるテーマを探していて。儲かりそうな事業はたくさんあるんですけど、自分らしい、これしかない、というテーマは家族というものかなと思い至り、始めた感じです。

瀧口:ベンチャー投資されていた中で、だんだんと「自分がテーマを見つけてやっていきたい」という思いになられたんでしょうか。

土岐:いろんなスタートアップを見ていて、人生をかけて"誰もやっていないけど誰かがやるべきことに挑戦する姿"っていいなと思ったことは大きかったです。ただ自分がやる際にそのテーマ探しは本当に苦労しました。妻の出産や自身の退職という出来事の中で辿り着いた感じです。

瀧口:先ほども神先(孝裕)さんがおっしゃっていましたが、2013年は資金調達の環境もあまり整っていなかったり、そもそもスタートアップという言葉も今ほど・・・。

神先:それほど盛り上がっていなかったなという印象ですね。盛り上がり始めたくらい。

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