ついに、最終回を迎えた『俺の美女化が止まらない!?』(テレビ東京)。斉藤晴臣/ハル(楽駆)による世界にひとつだけの成長物語は、愛にあふれたラストとなりました。
男なのに、"可愛い"が好きなのはおかしいの?
実は、大手家電メーカーの跡取り息子だった九井恭平/恋々乃(阪本奨悟)。東京生まれの彼が、わざわざ下宿をしているのは、父親・恭太郎(神尾佑)の呪縛から逃れるためだった。
私は、ちゃんと逃げられた恭平がえらいなぁと思う。子どもの頃からいちばん近くにいる親って絶対的な存在だから、結局言いなりになってしまう人が多いんじゃないかな。でも、恭平は負けなかった。
恭平も、分かっている。すべての人が女装に理解があるわけじゃないことを。正直なところ、私もこのドラマを観る前は、「女装男子って、ちょっと変わってるのかな?」なんて、しょうもない先入観を持っていました。
だけど、女装カフェ&バー「スピカドール」のみんなが、すっごくキラキラしていて。少しずつ、少しずつ彼らのことを理解する気持ちが深まっていった。今では、みんなのように輝きたい。みんなみたいに、優しい人間になりたいなぁと憧れを抱いています。
恭平の父も、彼が恋々乃としてたくさんのお客さんに笑顔を届けているところを見たら、「変な店」「男のくせに、女の格好なんかして!」などと罵ることなんて絶対にできなくなるはずなのに。
もちろん、息子の女装をすぐに認めろとは言いません。私だって、同じ状況に置かれたら、初めは戸惑ってしまうかもしれない。
でも、ちょっとは理解しようとしてほしかったな。せめて、少しの時間でもいいから、「スピカドール」で働く息子の姿を見てほしかった。その上で、無理なら仕方がないけれど、知ろうとする前から突っぱねるのは、すっごくもったいないな・・・と悔しくなりました。
そもそも、男性が"可愛い"が好きでなにが悪いのだろう。恭平は、恋々乃になることで、明るく前向きに生きられるようになった。それって、すごく素敵なことなんじゃないかな? と思うんです。だって、恋々乃として可愛い洋服を選んだり、メイクをしている時の彼は、とっても輝いていたから。
結局、恭平と父親が仲違いしたまま終わってしまったのは悲しいけれど、「スピカドール」という居場所が、彼にはある。
「誰がなんと言おうと、僕は僕だ。恋々乃も恭平も、大事な自分だって。自分だけは、自分を肯定する」
親だから、我慢をして一緒にいなければいけないわけじゃない。自分を偽ってまで、会社を継ぐ必要もない。それぞれが、いちばん自分を好きだと思える場所で、輝けばいい。恋々乃/恭平と、父親との確執の裏には、そんなメッセージが込められていた気がしました。
苺美の誤解が解けて、本当によかった・・・!
その一方、原口苺美(鞘師里保)に正体がバレ、軽蔑されてしまった晴臣は「こんなことになるなら、女装なんかしなければよかった」と「スピカドール」をやめることに。
たしかに、晴臣は苺美の信頼を裏切ってしまった。でも、決して彼女を傷つけようとしたり、からかおうとしてついた嘘ではなかった。真面目に向き合いたいと思った結果の嘘だからこそ、もどかしいんです。
そんな晴臣を救ったのは、親友の恭平でした。晴臣が、どうして本当の姿を隠してハルとしてデートをしたのか。デートをするまでの間、どれだけ努力をしていたのか。そのおかげで、ちゃんと誤解を解くことができて本当によかった。
そして、晴臣も親友として、恭平の本当の気持ちを問いかけに走りました。ウェディングドレスを着て走る晴臣は、ドレスの裾もメイクもボロボロだったけれど、世界一美しかった。綺麗は、外見だけを取り繕っても意味がない。心がともなって初めて、美しくなれるのだなと改めて感じました。
苺美とデートをすることも決まり、親友もできた晴臣。第1話ですべてを諦めてうつむいていた彼に、教えてあげたいです。うつむいていたら、何も見えない。一歩踏み出せば、世界は変わるんだよ、と。
文:菜本かな
◆番組情報
『俺の美女化が止まらない!?』
動画配信サービス「Paravi」にて全話配信中
(C)テレビ東京