闇医者集団"仮面ドクターズ"が日曜劇場『Get Ready!』(TBS系) 第2話で"生き延びる価値があるのか"問うのは拝金主義に塗れた城和大学の坊城理事長(柄本明)だ。
ジョーカー(藤原竜也)の一人息子(相澤壮太)も坊城の裏口寄付金プロジェクトの標的になっていた。クイーン(松下奈緒)に「トロフィーワイフのなれの果てって感じ。重さだけが残ったね」と言わしめるジョーカーの元妻・千秋(市川由衣)からけしかけられるままに、スペード(日向亘)には「引くほど懐いてない」とはっきりと言われてしまった子どものために裏口入学金の2億円と生きたままの鰻を持参し坊城とわざとらしい生々しいやり取りを真面目に繰り広げるジョーカーって奴はなんとも憎めない。
そして癌を患い余命2ヶ月と宣告された坊城の前に、今度は仮面をつけた交渉人として再登場するジョーカー。まさに当事者として裏口入学金が1口2億円だと知っているジョーカーを前に、「裏口入学など存在しない」と断言し自身の命がかかっていても2億円以上は出さないと頑なな坊城。これはなかなか手強い交渉相手だ。
ただの金の亡者かと思われていた坊城だが、「金のない"理想"など無意味なんだよ」と言って、自身の命よりも重きを置く "理想"を抱いていた。それは、地方に一つでも多くの優秀な病院を作り、一人でも多くの優秀な医者を育てるということ。彼は本気で医療現場における地方格差を是正しようとし、僻地医療の常識を変えようとしていたのだ。
自身の死期を悟った坊城は、恥も外聞も捨て自身の最後の理想を追い求め動き回る。そんな彼のまさに命がけの本気に触れ、天才外科医・エース(妻夫木聡)はオペを受け入れ、さらに坊城のこの心意気を医療の未来を担う若者に、そして今は決裂してしまっている息子の康之(三浦貴大)に聞かせるべく"最期の授業"の場を用意する。
スペードがジャックした大学の配信システムを通して坊城の生きた言葉が伝播する。世の中、善悪や白黒は必ずしもはっきりと明確に分けられるものではなく、1人の人間の中に矛盾なく共存してしまうもので実に多面的だ。特に使命感に駆られ熱量高く取り組む人であればあるほど、様々な障壁が見え、超えなければならないハードルばかりが目の前に立ち塞がる。
この理不尽をどうにか力技でも抑え込むしかないと躍起になってしまうことだってあるだろう。理想の実現に向けて、自身の生活のあらゆるものを切り捨て犠牲にして、そしてさらに自分自身を追い込んで奮い立たせて・・・周囲への叱責は何より自分に対してのもので、馴れ合いに流されてしまわぬように自分自身を自ら孤立化させさらなる自制をかけることで坊城は何とか後ろを振り返らずにいられたのかもしれない。そう思うと坊城は本当に不器用な人間だ。
「過ちに気づけば人はやり直せる。過ちを正す瞬間の風景は鮮やかだ。勇気を持って正したからこそ見える景色もある。だから恐れずぶつかってみて下さい」とは、沢山の過ちを重ねてきた坊城だからこそ説得力を持って届けられる言葉だった。
そして寸でのところで命を取り留めた坊城は命の恩人であるエースに「君は・・・それでいいのか?今の君は間違ってる。君なら表の世界でもっとたくさんの人を救えるはずだ」と問いかける。
坊城を助けた理由を、昔彼に選んでもらった学生がスタンフォード大学で修行させてもらいそれが血肉となっていると明かしていたが、おそらくこれはエース本人のことなのではないだろうか。第2話の冒頭、エースが「懐かしい名前だ」と呟いた"人物"。街中でスタンフォード大学のパーカー姿を見かけると思わず立ち止まって見入っていたエースの過去がやっぱり気になる。
(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)
【第3話(1月22日[日]放送)あらすじ】
闇医者チームは、とある連続殺人事件を追いかけていた。
警察の捜査が近づく中、ジョーカー(藤原竜也)やクイーン(松下奈緒)の反対を押し切って事件の被害者たちを救い続けるエース(妻夫木聡)。
実は犯人の安達(杉本哲太)もまたエースの患者であり・・・彼が連続殺人犯になった隠された理由とは?
そして闇医者チームは警察の目を盗んで、安達を救うことができるのか?
◆放送情報
日曜劇場『Get Ready!』
毎週日曜夜21:00よりTBS系で放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」で配信中。
また、火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』とのコラボ企画Paraviオリジナルストーリー「ゲトレ夕暮れ大暴れ」も独占配信中。