行方知れずの舞(田島芽瑠)から同窓会に行っていると連絡が入るも、同窓会の案内ハガキが届いたことでそれが嘘だと序盤でバレてしまう『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京ほか)第4話。
聡(増田貴久)と幡多(片桐仁)、池上さん(國村隼)で舞が働いているコンセプトカフェもといコンカフェに情報集めに繰り出したところ、彼女は遠距離恋愛をしている彼氏に会いに行くと言って長期休暇を取得中だと言う。
大量の福岡土産を提げて帰宅した舞は、日曜の夜の皆での夕飯に間に合うも、そこで止めどなく溢れるのはきっと予め用意してきたのであろう同窓会エピソードで全て嘘。息継ぎもなしに捲し立てるように一息で言い切る舞の嘘はあまりに空虚で、そんな姿は痛々しく観ていると苦々しい気持ちにもなる。
リビングで起きたことは他の住民とも共有せざるを得ないものの、各個人部屋で起きたことまでは介入できないシェアハウス。帰宅後、逃げ込むように自分の部屋に引っ込んだ舞の何重にも施錠された心の内にある秘密にはそうそう簡単に周囲がアクセスできそうもない。痺れを切らした桜(田中みな実)の正攻法な問いかけでは、さらに舞のガードは強固なものになるばかり。そこで声を上げたのは聡だった。
「ここでは嘘をついても僕は良いと思う。僕たちはその嘘を信じる、いや信じるフリをする。僕にだって隠しておきたいことがあるから。嘘をつかなきゃ生きていけないことがあるってよくわかるから。だってルーザーだもん、負け組だから」
そして、こう続ける。
「自分を守る嘘なら良いけど、自分を傷つけるような嘘、僕は信じてあげられない。もっと自分を大切にしないと」
この聡の言葉は、ルーザーズ全員に響いたことだろう。舞は交際相手に対して「もう少しお金が貯まれば一緒に住んでもらえる」とこぼしていたが、"住んでもらえる"なんて言葉が出ること自体、彼らの関係性が対等ではないことを物語っている。そして、舞もその淡い願いが叶いそうにないことにもどこかで気がついているのだろう。
だけれども、認めたくはないし現実を直視したくはない。周囲に止められるほどに、"知らないくせに外野が偉そうなこと言わないで!"と引くに引けず突き進んでしまう。この人といてもその先に"幸せ"は待っていないとわかっているのに離れられない。自分で自分の心に嘘をつき、感覚を麻痺させながら誤魔化しながら一緒にいるしかない。「若気の至り」とも言えるこんな事態に身に覚えのある人も少なくはないはずだ。確かに、舞に浮かない顔をさせながらも、福岡の楽しい土産話を皆の前で披露させる、そんな"悲しき嘘"をつかせ続ける相手は幾重にも彼女のことを傷つけてしまっている。
そんな時に引き戻してくれるのは、本当に自分のことを心配しながら"それ以上、あなたが傷つく姿を見たくはない"と心から言ってくれる信頼できる人であることは間違いない。そんな相手からの声かけによって、自分自身がいかに不本意に傷つけられているのかふと自覚できたりするものだ。
様々な"幸せ"の形があることを誰よりもわかっており、そんな相手の"幸せ"のあり方を尊重し合えるのはルーザーズだからこそかもしれない。ただ、彼らルーザーズが傷の舐め合いには終わらず、相手の身の上を案じ、それぞれの幸せを願える、そんな"仲間意識"の下に確かに連帯し始めていることに心強さを覚える。
(文:佳香(かこ)/イラスト・月野くみ)
【第5話(5月9日[月]放送)あらすじ】
ある出来事が原因で制服姿の女子高生がトラウマになった安彦聡(増田貴久)。克服に向けての一歩がなかなか踏み出せずにいたが、原因を知る秦幡多(片桐仁)は、半ば強引な方法で、なんとかオンライン家庭教師に登録させる。そんな折、大庭桜(田中みな実)は家の前で、聡の元教え子と名乗る間宮リコ(岩本蓮加)という女子高生と遭遇。聡に会いに来たという。居合わせた幡多は「今はいない」と嘘をついて追い返そうとするが・・・。◆放送情報
ドラマプレミア23『吉祥寺ルーザーズ』
毎週月曜23:06~23:55放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信