【ネタバレ】『シジュウカラ』5年後、立場が逆転した夫婦と元カレとの再会

PlusParavi
【ネタバレ】『シジュウカラ』5年後、立場が逆転した夫婦と元カレとの再会
【ネタバレ】『シジュウカラ』5年後、立場が逆転した夫婦と元カレとの再会

千秋(板垣李光人)と別れ、帰宅したら倒れている夫・洋平(宮崎吐夢)を見つけた衝撃の第6話から5年の月日が経った『シジュウカラ』(テレビ東京)第7話である。忍(山口紗弥加)が39歳から「40歳になった」日までを描いた第1話をなぞるように、第7話は、彼女が45歳から「46歳になった」日までを描くことで、物語の、そして、綿貫忍の人生そのものの第2章をスタートさせた。

さて、45歳の綿貫忍は、輝きが増していた。髪型から足先まで流行のファッションに身を包み、華やかに微笑む「純愛不倫の女王」。新しい恋の予感を感じさせる、元カレで編集者の岡野(池内博之)との関係も、どこまでも自然だ。千秋との恋の最中の時折過剰なテンションも、洋平への怒りを沸々と滾らせて誰もいないところで爆発させる不安定さもない。圧倒的に可愛らしくて美しい。彼女は順調にキャリアを重ね、アシスタントも2人抱え、忙しい日々を送っていた。漲る自信の理由は、洋平が倒れ、家計を支えるのが洋平でなく、忍になったというのもあるだろう。「働きますよ、そりゃあ。息子の学費、私が稼ぐしかないからねえ」とマリ(入山法子)に言う彼女の口元は緩み、嬉しそうだ。

何の因果か、洋平が病気で倒れて以降の、忍と洋平の立場は完全に逆転した。忍が外に出て働き、家計を支え、洋平がスーパーで買い出しをし、食事を作って待っている。「家帰ったら美味しいご飯ができてるって、すっごい幸せなことなんだよ。忍ちゃんは、幸せものだね」という恩着せがましい口調は、本質的には何も変わっていないことを示している。洋平が倒れたために離婚話は流れたが、忍は今も、部屋に飾っている自身のインタビュー記事が掲載された雑誌の裏に、離婚届を挟んだままの雑誌「スパイス」を忍ばせているように、夫婦関係は完全に冷え切っている。

しかし、こうもとれるのだ。夕ご飯はいらないことを連絡しない妻と、夕ご飯を準備して待ち続ける夫。洋平の「今日もおでかけですか」という嫌味っぽい言葉。「こんな日に、また浮気してきたでしょ」と叫び、冷蔵庫を開けたまま半狂乱になる洋平。中には忍の誕生日を祝うケーキがあった。また、以前は外から帰ってくるのは夫で、家で迎えるのは妻だったため、執拗に長く続くうがいの音は、夫の専売特許だったが、第7話で響くうがいの音は、同窓会後、岡野と楽しい時を過ごした後、夜遅くに帰ってきた妻・忍によるものであるというのも印象的だ。つまりは、立場だけでなく、これまで妻・忍が、特に悠太(田代輝)が生まれた頃、浮気して帰りが遅い夫・洋平から受けてきた苦痛そのものを、今度は洋平が味わっている。無理やり迫ってくる洋平に対し、「できないくせに」と返す忍と、泣く洋平。まるでホラーを見ているかのような因果応報である。

新しい登場人物である、池内博之演じる編集者・岡野もまた、なんとも魅力的な人物だ。同級生・同世代特有の安心感と共感、元カレとしての色気・包容力を持ち合わせている上に、編集者と作家として妥協しない関係を作ろうと、時には厳しいことを言って、忍を諫めることもできる。誕生日には、真夜中のケーキではなく、お洒落な花束をプレゼントして、そのまま手を取り、一見ふざけているかのような調子で笑い、プラプラと手を揺らしながら、至って本気の目をしてキスをする。それに対する忍の反応もリアリティがあり、ドキリとせずにはいられない。

第7話は忍の「描くこと」に対する慢心の回でもあった。生活のために漫画を描くようになり、仕事に追われ、「忍の漫画に救われた」千秋と出会って変われたはずの忍は、またも方向性を見失っていた。「背景がちょっとおかしいけれど、読者はそこまで気にしないよ」と言う忍の言葉に、アシスタントたちはモヤモヤせずにはいられない。長年の付き合いである編集者・荒木(後藤ユウミ)もまた、「不倫もの」という題材に飽きている上に、だからといって読者に伝えたいことが何かあるわけでもない忍の現状を鋭く指摘する。

そんな彼女の心を変えたのは、同窓会での友人・博士(高野ゆらこ)の言葉だった。離婚してからの苦労の末にカラオケボックスの店長になったという、第3話で垣間見た彼女の人生の続きを垣間見る。忍の漫画は、彼女の救いになっていた。結婚生活の閉塞感への共感と共に、恋のトキメキを思い出させてくれる、忍の漫画は、つかの間、彼女の日常から彼女を自由にした。それを知った忍は、初心を思い出し、「求められているものをちゃんと書いてみよう」と再び心に誓う。

そして、行く先々で千秋との思い出を反芻し、本棚には彼の本が置かれていることからも、忍の心の中には、未だに千秋がいる。そしてやたら明るい音楽に彩られた、山口まゆ演じるみひろと一見穏やかな新生活を送っているように見える千秋の部屋の本棚にも、忍の漫画が掲載された「スパイス」と、『初恋ワンスモア』という、忍との思い出の本のみが並べられている。次回、互いがいないという喪失を抱えながらも、ある程度満たされた順風満帆な人生を獲得しつつある2人が、再び出会ってしまう時、何が動き出すのだろうか。

(文・藤原奈緒/イラスト・月野くみ)

【第8話(2月25日[金]放送)あらすじ】

慢心を恥じ、再び漫画と向き合うことを決めた忍(山口紗弥加)。私生活では岡野(池内博之)と恋愛関係に。一見すると、千秋(板垣李光人)のことは既に思い出になっている様子だが―。そんな時、千秋の妻だという女性・みひろ(山口まゆ)から、忍は衝撃の言葉を聞いてしまう。そして偶然にも、忍と千秋は5年ぶりの再会を果たす―

◆放送情報
ドラマ24『シジュウカラ』
毎週金曜深夜0:12からテレビ東京ほかで放送。
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信