まるで二重底みたいだ。ここが底だと思ったら、さらに床が抜けて、足元をすくわれる。日曜劇場『DCU』第2話は、そんなミステリーらしい展開に大いに翻弄された回だった。
予想外の結末。なぜサンチェスは逃げたのか
北能登の港で変死体が発見された。殺されたのは、地元漁師の島田龍平(須田邦裕)。龍平のもとで技能実習生として働いていたロドリゴ・サンチェス(フェルナンデス直行)に疑いが向く中、真相はまったく別のところにあって・・・というのが大まかなストーリーだ。
サンチェスが犯人でないことは、多くの視聴者の見立て通り。前回と違い、唯我独尊な新名正義(阿部寛)にやたらと協力的な警察側にうっすらと違和感を抱いていたら、犯人は市議会議員の岡部正三(古田敦也)であり、刑事の坂東秀喜(梶原善)はその隠蔽に手を貸していたというのが事の真相だった。
さらにそこに外国人差別という問題も絡ませ、社会派としての見応えも十分。死亡推定時刻や海流から遺体が遺棄された場所を割り出したり、水中ドローンを使ったり、さすが水中捜査のプロフェッショナルという場面もあって、『DCU』らしさも打ち出せていたと思う。
その上で、事件解決と思いきや、重要な遺留品である島田のスマホを持ってサンチェスが逃亡するという予想外の展開が。これには意表を突かれたし、次回への期待が一気に膨らんだ。差別をされている外国人だから、溺れている子どもを救うために危険を顧みず海に飛び込んだから、サンチェスはいい人なのだと思い込まされていた。
けれど、それこそが偏見なのだ。サンチェスの逃亡の理由はわからないけれど、まだ何か隠していることがあるのは間違いない。スマホを奪ったということは、あの中に知られたくない何かが隠されているのだろうか。
日本語学校で物陰からサンチェスと隆子を見ていた女性も気になる。あの女性は、サンチェスが入院したときに、病室に付き添っていた女性だ。彼女がサンチェス逃亡に何か関わっているということか。1話完結と思いきや、連続性のあるストーリー展開に唸らされた第2話だった。
横浜流星の回し蹴りがカッコよすぎたんで毎回入れてください
一方、第1話では刺々しいところも見受けられた新名のキャラクターも、第2話でかなり軟化した。PTSDにより水中に潜れなくなった瀬能陽生(横浜流星)をDCUにとどめるため、陸上での捜査を指示。新名は瀬能の力量を認めており、DCUに瀬能は必要だと考えている。その目は挑発しているように見えて、あたたかい。父を死に追いやった憎き裏切り者というより、まるで瀬能の成長を見守る父親代わりのような目だ。
さらに、リブリーザー試験を受ける成合隆子(中村アン)にお守りを渡したり。メカ操作を得意とする森田七雄(岡崎体育)に活躍の場を与えたり。一人ひとりの部下たちにも気配りを欠かさない。むしろ上司としては理想的なのではとさえ感じられた。死んだ成合(吉川晃司)の妹である隆子にしても、恋人だった黒江真子(市川実日子)にしても、新名に深い信頼を寄せている。はたして新名の真実の姿はどれなのだろうか。
また、瀬能にしても、若さゆえに突っ走るキャラクターが、泰然自若とした新名と対比が効いていて、バディというよりは、いい師弟という雰囲気が出てきた。新名を睨みつける眼光の鋭さは、目力の強い横浜流星の十八番。ふつふつと湧き上がる怒りを、ぐっと低く抑えた声で表現する。
一方、そうは言っても、父が死んでから15年、そばで見守り続けてくれた愛着と恩義もあるのだろう。捜査中も、この2人だからこその阿吽の呼吸が感じられた。このギリギリのバランスが、2人の関係性の見どころだ。瀬能はいつ潜水捜査に復帰できるのか。そして、それは何の事件のときなのか。きっとそのときこそが、15年前の事件が明らかになるときなのではないかと予想している。
1話に続き拡大版ながら、テンポの良さと画のスケールもあり、途中で気が緩むことなく、最後まで一気に引き込まれる。水中事件だけあって専門性が高く、難解なフレーズも出てくるが、人間関係は1話・2話ともにシンプルなので、トリックを見破ることは難しくても犯人を当てる楽しさは十分味わえる。
潜水捜査ということもあって、今後はDCUのメンバーの誰かが命の危機に見舞われることもあるのかもしれない。ちょっと悪趣味ではあるけれど、そんなスリル感もドラマを楽しむポイントのひとつだ。
まずはサンチェス逃亡の真相をあれこれ考えながら、来週の第3話を待ちたい。
とりあえず横浜流星の回し蹴りがカッコよかったんで、毎回入れてくださいお願いします。
(文:横川良明/イラスト:たけだあや)
【第3話(1月30日[日]放送)あらすじ】
隆子(中村アン)のミスにより、ロドリゴ・サンチェス(フェルナンデス直行)が被害者のスマホを盗んで失踪してしまった。しかも、サンチェスには治安を脅かすある重大な秘密が隠されていたことがわかった。
サンチェスを逃したことで新名(阿部寛)は上から厳しく追及される。さらに、この一件が原因でロシア高官の来日が見送られることになり、隆子は重い責任を感じていた。そんな中、大友(有輝)と聞き込みに出た隆子は、サンチェスと同じ日本語学校に通うマリア・シルバ(エレナ アレジ 後藤)を見つけ、焦りのあまり彼女に怪我をさせかねない行動をとってしまう。やがて、新名はミスを重ねた隆子を捜査から外すと伝える。
しかし、自分の犯したミスを取り戻したい隆子は命令に背き、ひとり捜査に乗り出す。そして瀬能(横浜流星)をはじめDCUのメンバーたちも隆子を励まし密かに協力する。そんな中、事態はゆっくりと最悪の方向に進んでいく・・・。
◆番組情報
日曜劇場『DCU』 毎週日曜日21:00からTBS系で放送中。 地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信中。