【ネタバレ】純粋と不純がせめぎ合う『シジュウカラ』第2話

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【ネタバレ】純粋と不純がせめぎ合う『シジュウカラ』第2話
【ネタバレ】純粋と不純がせめぎ合う『シジュウカラ』第2話

純粋ではない。かといって、全てが不純かと言えばそうでもない。ヒロインである漫画家・綿貫忍(山口紗弥加)と、18歳年下の美しいアシスタント・橘千秋(板垣李光人)との関係をどう形容しよう。1月14日に放送された『シジュウカラ』第2話は、それぞれの不純で邪な動機や企み、欲望が見え隠れするやりとりの末に、互いの心の奥底にあった、信じられないほど純粋な部分が共鳴し合う、その瞬間を見る回だった。

こんなにも登場人物たちが綺麗ごとじゃなく、自らの本性をありのままに曝け出しているドラマを久々に見たように思う。忍は、結局彼女の40歳の誕生日がいつだったかも忘れていた夫・洋平(宮崎吐夢)からの、漫画家としての忍の才能を認めず「ここまで漫画できただけでよかったでしょ、忍ちゃんみたいに普通の人が」といういちいちモヤモヤせずにはいられない発言を必死で聞き流しながら、誕生日の夜、翻弄してきた千秋の足を、笑う顔を、濡れ髪と挑発的な眼差しを思い出している。そして突き動かされるように絵を描いて、「新作の評判はパッとせず、次回作は難しい」と言われつつも、「18歳年下の美少年との不倫もの」なら描けると編集者・荒木(後藤ユウミ)に提案する。

取材のためと千秋を夜の水族館に誘った忍は、そこでもまた彼に惑わされ、強く握り合った手の温もりをそのままに、抱いた感情と、想像せずにはいられなかった「その先」を新作のネームの中に注ぎ込む。「怖いんだ、本当のことが。正しくない自分が」とネームの中の登場人物の台詞で自身の葛藤を示しつつ、作業中も、吸い寄せられるように千秋を見つめずにはいられない。さらには漫画の中だけでは飽き足らず、芽生えてしまった欲望は、冷え切った夫婦生活にも歪な変化を生む。

「特に女性が年上の場合の年齢差のある恋愛ってまだ世間一般には珍しくて、いつか捨てられる、相手より先に年取るとかネガティブなイメージが強い」という一般論に対し「いつか捨てられるのは、男も女も関係ないですよ」と微笑む忍の頭には、一回り年上の夫との年の差恋愛の果ての現在の関係と、18歳年下の千秋との今の関係の両方が浮かんでいるはずで、「夫を捨てる」未来をも想定しつつ、千秋との関係が永遠ではないだろうことも彼女はきっとわかっている。

「年下美少年はいつの時代も心のオアシス」と編集者は言うが、このドラマにおける"年下美少年"橘千秋は何か違う。エスカレーターの少し上からじっと忍を見降ろし、彼女が戸惑ったところを見て、何事もなかったように前を向く。水族館の魚を見つめながら、そっと忍の手に触れ、小指を絡ませ、さりげなく握る。忍がこっそり撮った千秋の写真を目撃するやいなや、作業用の椅子を軽く蹴って、自分の方を向かせる。

そんな何を企んでいるのかわからない、スリリングで挑発的な一面をもった彼は、その一方で、調べてきた水族館豆知識を披露したり、朝のコンビニで、苦手であることを忍に知られたコーヒーの味に慣れるために、苦さを我慢して缶コーヒーを飲んでみたり、忍の部屋を見上げて、太陽が眩しくて目をチカチカさせたりと、無邪気で健気な一面も見せる。

最後に描かれたのは、片や夫婦生活と思うようにならなかった漫画家人生という現状から、片や過酷な家庭環境から抜け出し、共に「鳥のように空を飛べたら」と願っていた忍と千秋、二人の姿だった。千秋は、困った母親(酒井若菜)とたまにしか来ない「レアキャラ」の父親のこと、逃げ場がなく居場所もない家庭の中で、与えられた雑誌「スパイス」の中に掲載されていた、忍のデビュー作「うさぎなんて追いかけない」を読み返すことで何度も救われてきたことを忍に打ち明ける。忍の作品は、知らないところで彼を救い、漫画家になる夢を抱かせていた。

自分の物語を拠り所に生きてきた人の存在を知ったことは、何より第1話で飛び立つ鳥を羨ましそうに見つめていた忍自身の心を救った。2人の最も純粋な部分が共鳴し合い、互いの心の中の空洞が、互いで埋まってしまった瞬間だった。辛い過去を語る最中ギュッと握りしめていた包丁をゆっくりと手から離し、千秋は忍の泣き濡れた顔にキスをした。

でも、最後に横並びに座って黙々とうどんを啜る様はなんだか奇妙で可笑しくて、クローズアップされる千秋の咀嚼する表情にはまたも不穏さが漂っている。テーブルの片隅、落ちる寸前のところに置かれた忍のコーヒーカップのように、淵に立つ危うい恋の先には、酒井若菜演じる千秋の母親・冬子という強烈なキャラクターの本格的な登場も待ち構えていて、まだまだ闇と業が深そうである。

(文・藤原奈緒/イラスト・月野くみ)

【第3話(1月21日[金]放送)あらすじ】

夫婦関係に不穏な空気が加速する一方で、千秋(板垣李光人)とは"健全な"関係性を築き、仕事も順調な忍(山口紗弥加)。そんな中、道で並んで歩く千秋と冬子(酒井若菜)の姿を目撃する忍。違和感を覚え、尾行していると、一軒のアパートにたどり着き、忍は千秋の正体に繋がる衝撃の事実に気づく。不安を抱えきれない忍は、おそるおそる千秋にそのことを告げると・・・。遂に千秋の真の狙いが明らかになる。

◆放送情報
ドラマ24『シジュウカラ』
毎週金曜深夜0:12からテレビ東京ほかで放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信