益田ミリの同名人気漫画を原作とし、原田知世が主演を務める連続ドラマ『スナック キズツキ』(テレビ東京)の第7話が11月19日に放送された。今回のゲストは、広告代理店営業部の佐藤悟志(塚地武雅)とその妹で専業主婦の香保(西田尚美)の母・ヨシ子(丘みつ子)。もしかしたら40代~50代の人にとっては、最も身につまされる話が今回かもしれない。
娘が子どもの受験を無事終え、温泉旅行に誘ってくれたが、同居中の独身の息子を置いていくことがどうしても気になってしまう。
「子どもじゃないんだから」「俺のことなんか気にしないで芝居でも旅行でもどんどん出かけたら良いんだよ」と息子は言う。
また、娘も「お母さんも好きなことしたら?」と言う。親が数日出かけたところで、イイ大人である息子はたいして困らないことも、親に好きなことをしてほしいということも、紛れもなく本心だろう。実際、似たような言葉を親に言ったことがある人は多いはずだ。
母が子ども第一、家庭第一で頑張って来たからこそ、子どもはそんな母に好きなことをしてほしいと思う。しかし、それが親をキズツケることにはなかなか思いが至らない。
家族最優先の母には、おそらく趣味を持つ暇はなく、子どもが自立し、夫を亡くしてから時間だけが無尽蔵にある状態が突然やってくる。そこで「好きなことをして」と言われても途方に暮れてしまうのだろう。
さらに、仲の良い友人が体を悪くしたり、田舎に越したりして、一緒に出かけられる相手がどんどんいなくなる。そこでも子どもは良かれと思って「新しい友達を作ったら」などと簡単に言う。
これらは家族仲の良い家庭、子ども思いの親ならではのあるあるだろう。
おまけに、町内の自治会長は独身である息子を心配し、町内に越してきた女性を紹介、その独身の娘との見合いを勧める。
そんなヨシ子がたどり着いたのが、スナック キズツキだ。ヨシ子はママ・トウコ(原田)の作るオレンジジュースに続いて、生まれて初めてオニオングラタンスープをいただく。
そして、トウコがもらったというシャンソンのチケットをきっかけに、トウコのアコーディオンの演奏で、自分の思いをシャンソンにのせて歌うのだ。
家族のために生きてきたヨシ子のたどり着いた現在は、ちょっと孤独で寂しさもあるが、そこに後悔はない。「かわいそう」でもない。
そして、初めて入ったスナックで、初めてオニオングラタンスープにチャレンジしたり、初めて会ったトウコの前で歌を歌うという不思議な経験をしたり、人生まだまだ何があるかわからない。
今回のヨシ子の物語を見て、自分の親にもそんな経験や場所があれば・・・と、つい考えてしまうが、それもまた、子どもの余計なお世話かもしれない。親のことを子どもが全て知っている、わかっているわけではないのだから。
久しぶりに引っ張り出したレコードを聴こうとする母を見て、思わず口元が緩む息子・悟志の表情に、グッと来てしまった。
(文:田幸和歌子/イラスト:たけだあや)
【第8話(11月26日[金]放送)あらすじ】
今回スナック キズツキを訪れる客は香保の同級生の南裕子(堀内敬子)。言うことを聞かない子供たちにも、ヘルパーの仕事でもモヤモヤがたまる日々・・・。今回の店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、なんと"タップダンス"! おいしいシュークリームとコーヒーに癒され、「感謝の言葉が欲しいわけではないけれど、誰かにわかってもらいたい」という気持ちを、タップにぶつける。
◆放送情報
『スナック キズツキ』
毎週深夜0:12からテレビ東京で放送。
地上波放送後、動画配信サービス「Paravi」でも配信されている。