動画配信サービス「Paravi」にて、今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材したドキュメンタリー番組『Real Folder』が独占配信されている。本番組の記念すべき第2回目は俳優・黒羽麻璃央への密着取材だ。
若年層を中心に人気急上昇中の黒羽は、ミュージカル『刀剣乱舞』や『テニスの王子様2ndシーズン』、舞台『黒子のバスケ』など2.5次元作品で注目を集めてきたが、近年はミュージカル『エリザベート』、今年に入ってからは『ロミオ&ジュリエット』で主役・ロミオ役に抜擢され、さらにはドラマや映画へと活躍の場を広げている。
その裏にはいつまで経っても「2.5次元俳優」と呼ばれ続けたことへのコンプレックスや葛藤があったと打ち明ける。「なんで僕は普通の俳優って呼んでもらえないんだろう?」「若くてイケメンでキラキラしてるだけの子が演ってるだけのことでしょ?ということに近しいことを言われたこともある」とその当時を振り返る。「今は全くないですけどね。むしろ誇らしく思ってますし」とスッパリ笑顔で言い切った彼は、2.5次元作品に対する一般認知度の高まりに従って、過去のような気持ちは消えたと話す。何より弛まぬ努力が、世間からの評価を変え彼をここまで引き上げてくれたのだろう。
密着中も4つ同時に出演作品を抱えていることからも彼の人気ぶりが窺える。「こんなにやってたら頭おかしくなりそう」とこぼしながらも、そのプレッシャーやハードスケジュールを良いストレッチとして自分に課して飄々としながら楽しんでいる黒羽のタフさ、バイタリティー、相当に研ぎ澄まされたプロ意識も垣間見えた。当然ながら、キラキラしているだけでも、綺麗なだけでもない。彼には、貪欲な野心が確かにあるし、何よりなんだか不思議な"野性味"があるのだ。挑発的な輝きを放つ強い瞳が印象的で、ただそのベクトルは何より彼自身や"まだ見ぬ挑戦"に向けられている気がする。
彼の魅力はまずなんと言ってもその「声」だ。演出家の小池修一郎氏からも「ナイーブな感受性がストレートに出てくるのが面白い。かなり良い線で歌えている、高い音が出るのはすごい強み」と評されていた。ボイストレーナーからも「まっすぐで嘘がない声が魅力的。それが役によって色んな色に変わっていくのに良い声」だと絶賛の声が寄せられていた。
舞台上に響かせてくれる伸びやかで表情豊かな声はもちろんだが、普段の声色とのギャップにも思わず惹き込まれてしまう。おそらくミュージカルや舞台のために声帯を必要以上に震わせないように使わないようにとしてのことなのか、密着中の合間合間でポツリとこぼす声が、どこか少しけだるそうに無骨に聞こえて、なんとも色気がある。
甘いマスクながら、その中に光る"野性味"の度合いがその時々で異なり、シーン毎に、なんなら瞬きする毎に驚く程に顔が変わり(「表情」というレベルではなく「顔」が変わる)ひとつとして同じ顔がない。どこか神秘的で、強い軸がありながら相反するその"イメージの固定されなさ"もまた彼の唯一無二の武器のような気がする。
これは、来年公開予定の主演映画のプロデュースを務める藤井道人監督の狙いでもあったようだ。黒羽を起用した理由を「まだ映画のイメージがあまりついてない人でフレッシュで素敵な俳優さんがいないかな」と思った時に彼の存在を思い出したと語り、「観客も作り手も観たことがないその人を観たいと思う。どんな黒羽さんが生まれるんだろうって気持ちでトライした」と明かしていた。
黒羽が演じる主人公は冴えない目立たない青年で、淡々と流れる時間が描かれドラマチックな展開は用意されていないようだ。彼自身もその役どころを「情けない人。情けなくてダメな人」だと表現していたが、それこそかつて"2.5次元俳優"から連想されがちだった要素は皆無で、そこから対極にいるような存在だ。感情の起伏を徹底的に抑えた役作りが求められ、彼のキャリアの中でも異色の一本になることは間違いなさそうだ。これこそが彼のこれまでの軌跡を表しており、彼自身の努力が黒羽をここまで連れてきたことに他ならない。
黒羽は、俳優という仕事を「精神をすり減らしてやっていく仕事だから、のめり込めばのめり込むほど。すごい仕事だよね、全く知らない人の人生を同じように歩んでいく」と表現した。黒羽が演じる役柄と楽しそうに手を繋ぎながら歩いている姿が、あるいは本気でキャッチボールしている姿が、追い越し追い越されしながら食ってかかっていく姿が、はっきりと思い浮かんだ。
【文=佳香(かこ)】
◆番組概要
『Real Folder』
【配信ページ】https://www.paravi.jp/title/74960
【配信日/出演者】
8月25日(水)18:00~/花澤 香菜
9月8日(水)18:00~/黒羽 麻璃央
9月22日(水)18:00~/ハラミちゃん
10月6日(水)18:00~/三吉 彩花
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