いよいよ残すところは最終戦のみ。長かった演技バトルも最終局面を迎えた『私が女優になる日_』(TBS系/毎週土曜深夜0:58〜放送)。夢叶う者と、夢やぶれる者。その光と影が残酷なまでにくっきりと浮き彫りになる瞬間が今、訪れようとしています・・・!
女王・飯沼愛がほぼ当確に・・・?
今回は、以前審査員として番組に登場した大宮エリーが脚本を担当。プロの俳優を相手に、1対1の会話劇で勝敗を決めるという、ここに来て原点回帰というべきシンプルな内容になりました。
が、だからこそそれぞれの力量もしっかり見えるというもの。やはり唸らされたのは単独首位を走る飯沼愛でしょう。両親の離婚によって離れ離れで暮らす父親という、年頃の女の子にとっては微妙な距離感を、説明的な台詞は一切ないのに、仕草や表情、位置どりで的確に表していました。
特に秀逸だったのは、大宮エリーも指摘していましたが、座ったまま移動するところ。あれ、日常ではよくやりますが、お芝居の中でやろうとすると意外と思いつかないんですよね。あそこで父親と距離をとったことで、離れて暮らす父娘のぎこちなさが伝わってきたし、父親の暮らす安アパートの風景まで目に浮かび上がってきた。これ以外にも、手持ち無沙汰な感じでテレビ台をさわるなど、飯沼は自分の台詞ではないところの受け芝居がものすごくナチュラルになっていて、この演技バトルで彼女がどれだけ鍛え上げられたかを実感させられました。
ここで2ポイントを獲得し、飯沼は合計20ポイントに。最終戦でイレギュラールールが発動しない限り、仮に次戦で飯沼が0ポイント、3位の赤穂華が3ポイント獲得しても、赤穂は19ポイントで飯沼の点数を上回ることはできませんので、3位圏内は確定。ひと足早く新ドラマの出演権を手中におさめたことになります。ちょっと気が早いですが、スポーツ少女らしい負けん気の強さと努力で先頭を走り続けた飯沼に、ひとまず「おめでとうございます」と伝えたいです。
残る2枠を、武山、赤穂、三浦で争い合う!
その分、見逃せなくなったのが残る2枠の争いです。飯沼に次いで順調にポイントを重ねてきた武山瑠香がここに来てまさかの0ポイントで敗北。箱根駅伝で言うところの9区で大ブレーキがかかった状態です。しかも争った相手が、その時点で3位タイだった赤穂華だったことが悪かった。バトル開始時点では4ポイントも離れていた差が一気に縮まり、武山は17ポイントで足踏み。赤穂は16ポイントと逆転のチャンスが見えてきました。
確かにこのバトルに関しては、赤穂が圧倒的に良かった。審査員の塚原あゆ子が指摘した空間の使い方のうまさもそうなのですが、赤穂はいわゆる等身大の女の子役が絶妙にハマるのです。たとえば今回の役に近かったのが、5回戦のステージママのお話。娘を自分の色に染め上げようとするアクの強い母親に、自分の気持ちを吐露する赤穂の演技は、審査員のバカリズムも「本当にこの人、親と話しているの?っていう感じの変なぎこちなさがあって、そこが生々しかった」と評した通り、なんとも言えないリアリティがありました。ちょっと舌ったらずな口調が、体と心のバランスがとれない10代の女の子の心情によく合うんですよね。今まで無敗を誇っていた飯沼に初めて土をつけたのも、このときの赤穂の演技でした。今回の演技は、その再来と言えるもの。
そして、上位争いをさらに面白くさせたのが、台風の目・三浦涼菜です。序盤3回を欠席というハンデをものともせず、ぐんぐん追い上げ、今回の演技バトルで一気に4位にまで上りつめました。これにより1位の飯沼に続く順位は・・・
2位:武山瑠香 17ポイント
3位:赤穂華 16ポイント
4位:三浦涼菜 15ポイント
と完全に団子状態。5位の高倉萌香も13ポイントと可能性はなくもないですが、彼女が3位圏内に入ろうとするには、次戦で赤穂と三浦が0ポイントとなった上で、高倉が3ポイントをとらねばならず、現実的にはちょっと厳しい。つまり、上位3名は飯沼、武山、赤穂、三浦の4人のうちの3人に絞られたかたちになります。
最終戦は、上位4名の四つ巴を希望します!
となると、気になってくるのは次回の対戦カードです。たとえば武山、赤穂、三浦のいずれかが直接対戦することになると、その時点で敗れた者がこの表彰台争いから脱落。ハイリスクですが、最も納得しやすいパターンとも言え、できればそんな好カードを望みたいところ。最終戦がこれまでのような1対1の演技バトルになるとすれば、首位の飯沼から4位の三浦までの上位4名がそれぞれぶつかり合う展開を個人的には希望します。
おそらく最もプレッシャーがかかるのは武山でしょう。こういうポイント争いは、最終的には追う者より追われる者の方が負担は大きいはず。特に今回0ポイントで終わった武山は完全に試合の流れを奪われたかたちになっています。これを取り戻すには、強靭なメンタルが必要。
一方、赤穂と三浦は追う側ですので、余計なことを考えず、持てる力を発揮しやすい。特に、これまでのバックステージのコメントを見る限り、ガッツのある三浦にとっては闘争心が燃える展開。救済措置のため、三浦は審査員から2票とれば得点は3ポイントとなり、まだスコアを伸ばせる余力もあります。誰が笑って、誰が泣くのか、結末まで見逃せません・・・!
僕が石油王なら今すぐ事務所を設立します
一方、高橋七海以降の5名はこの時点で上位3名までに入ることは不可能となり、事実上敗退が決まりました。が、忘れてはならないのが、4位以下の中からも1名特別枠で選ばれるというルール。これに入るチャンスはまだ全員に残されているわけです。
今のところ最も有力なのが、渋谷風花。順位は最下位ですが、審査員から評価されている場面がたびたび取り上げられるなど、番組からの「推され感」もそこはかとなく感じます(笑)。
だがしかし、涙もろくて感情表現が豊かな高橋もいいし、恋する女の子の役がとびきり似合う岡田里穗もいいし、負けてもポジティブな出口真帆もいいし、自信なさげな顔を時折浮かべながらも一生懸命頑張る肱岡加那美もいいんだい!! もちろん辛うじて上位3名への希望を残す高倉にだって精一杯やりきってほしい!!
僕が石油王なら今すぐ事務所を立てて、みんなを迎え入れるのに・・・!!と床をゴロンゴロンとする真夏の深夜なのでした・・・。
ちなみに、彼女たちが出演するドラマのタイトルも決定。企画・原案 秋元康×脚本 徳尾浩司による完全オリジナル脚本の青春群像ラブストーリー『この初恋はフィクションです』だそうです。主演は、この演技バトルの1位。となると、すでに出演権を手中におさめた飯沼とて、まだまだ気は抜けません。彼女のことですから、主演の座を射止めるべく本気を出してくるでしょう。
泣いても笑っても、次回がいよいよファイナルバトル。演技の神様は誰に微笑むのでしょうか・・・?
追伸、最終戦だからって得点が2倍とかそういうのはなしにしてくれよな!
(文・横川良明)
◆番組情報
TBSスター育成プロジェクト『私が女優になる日_』
毎週土曜日深夜0:58からTBSで放送。
動画配信サービス「Paravi」で初回放送分から見逃し配信中。
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