10月29日(日)放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」では「農業高校の里山再生」を特集。
養老孟司さんの一言で始まった農業高校による里山再生。荒れていた学校の裏山を高校生たちが再生、今回の放送ではその途中経過を養老さんに報告へ行きました。さらに、高校生たちが1004枚の棚田が黄金色に輝く白米千枚田へ行き、初めての収穫を体験する様子も紹介しました。
順調なお米作り
栃木農業高校 環境デザイン科の生徒による里山再生はお米作りから。4月、まずは田んぼの土壌作りを機械を使わず人の手で行います。「目がテン!」では高校生たちに田植えを学んでもらうため、石川県輪島市の白米千枚田で体験してもらいました。その後、自分たちの田んぼでも田植えを行い、5月に植えた稲はすくすく育っていきました。
去年、生徒たちが中心となって行ったお米作りは、土壌づくりがうまくいかず稲の穂が実ることはありませんでした。しかし、今年には茎の根元から新しい茎が枝分かれする「分げつ」も起こり順調のようです。
ただ問題も。田んぼの周りを木に囲まれているため日当たりがよくない場所もあり、少し成長にバラツキがあります。そのため、少しでも日があたるよう先生たちと一緒に裏山の木を間伐し、笹なども刈っていきます。
さらに、大切な稲を守るためイノシシ対策も行います。栃木農業高校OBの渡邊秀昭さん指導のもと、機械を使わず昔ながらのやり方で柵をつくります。生徒たちは、手作業の大変さも楽しみながら学んでいきます。
そして、日を浴びた稲は大きく育ち8月には穂がつき始めました。この裏山の棚田の様子に「自分の体を使ってやるのは、知らず知らずいろんなことを学んでいる。そういうことをして育った部分は、測りようがない」「一から始めるのは大切」と養老さん。
裏山にはどんな昆虫が?
少しずつ再生していく裏山で夏の生き物を観察するために訪れたのは昆虫撮影のプロ、Tokyo Bug Boysの平井文彦さんと法師人響さん。2人は6月に高校を訪れ、生徒たちと一緒に昆虫観察をしていました。そのとき、田んぼにはゲンゴロウの幼虫、周辺の沢にはヤゴがいました。8月になった今、生き物はどう変化したのでしょうか?
さっそく柵に止まるシオカラトンボを見つけました。続いて捕まえたトンボを法師人さんの撮影テクニックによって観察してみると、オオシオカラトンボという種類でした。シオカラトンボは薄い青、オオシオカラトンボは濃い青の体色が特徴です。
さらにオニヤンマも捕獲。6月にみたヤゴが成虫になったのかもしれません。そして田んぼにはゲンゴロウの成虫も発見。
里山の昆虫たちに、養老さんは「一番大きいのは、自分も自然の一部だってこと。自然とのつながり、それを理屈ではなくて、理解する。それを繋いでくれるのが虫などの小さな生き物」「きっとこういうところで学んでいる学生は理屈ではなく、当たり前のことを身につけていく。しっかりした人ができてくる」と語りました。
白米千枚田で収穫を体験
続いては、いかちゃんと生徒たちが白米千枚田で収穫を体験した様子も養老さんに報告。
千枚田では棚田全体が黄金色に染まり収穫の時期を迎えました。高校生といかちゃんを迎えてくれたのは白米千枚田愛耕会の小本隆信さん・白尾友一さん・堂下真紀子さん。なお、この日は白米千枚田と友好関係を結んだかがくの里でも稲刈りが行われるとのことで、リモートで繋いでの交流も実施。
高校生たちは堂下さんに稲刈りの方法を教えてもらいます。ギザギザしている鎌を使って、稲刈りを開始。手作業で行う稲刈りは重労働ですが、「楽しい、単純な作業なのに、夢中になれる」と高校生たちは楽しみながら行います。
この様子に養老さんは「十分満たされていると、楽しいんですね」「辛い作業でも楽しい」とコメント。
そして高校生たちは落ち穂拾いへ。刈り取った稲を束ね、落ちた稲も無駄にはせずひとつひとつ手で集めていきます。このあとは、はざ干しという束ねた稲を天日干しする作業へ。はざ木と呼ばれる木の棚に手作業でかけていきます。地域によっては、はざがけとも呼ばれる伝統的な乾燥技術です。
初めての収穫を体験した高校生たちは「初めてだったけど楽しかった、勉強になった」「農家さんの大変さを知りました」と笑顔でコメント。養老さんは「全身使ってやってそれが楽しくなって、そういうことをずっと続けていければ。時々幸福とはなんですかと聞かれるけど考えているひまもない、必要もない。貴重な体験なんじゃないですか」と語りました。