<コラム>『新宿野戦病院』第8話
だめだ……。もう、あまりにもいろんな話が詰め込まれ過ぎて、そのどれもが濃密過ぎて、だもんで、脳内での咀嚼(そしゃく)ができなさ過ぎて…。面白い!楽しい!次も楽しみ!!程度のアホっぽい感想しか、出てこない…。
うん、だけど、それでは仕事にならない!!(当然)
っということで、もうドラマも第8話で、最終回までラストスパート!!だっていうのに、この『新宿野戦病院』ときたら、構成や展開が、意外や意外過ぎて…っという、このドラマの“外側”について、やいのやいの、語っていきたいと思います!
このドラマはスペクタクルを見せたいんじゃない!!人情を見せたいんだ!!!と言わんばかりの、あの演出の、粋さ!!
・次回予告にあった“爆破事件”=大スペクタクル!?が、まさか…
まず前回ですよ。登場人物も視聴者も、きっとみんなが内心すっごく気になっていた、「しのぶさん(塚地武雅)の物語」が、とんでもなく丁寧に、そしてハートウォーミングに描かれたわけだけど、そのお話っていうのが、しのぶさんというキャラクターを、ただただキャッチーな、気になる存在って“だけ”で、消費させなかった…。
誰にだって、どんな人にだって、楽しいことも辛いこともある=“ドラマ”はある!という、その覚悟みたいなもの見せつけられた。ある意味、今作のターニングポイント的回、だったと思うんです。
で、その“ドラマ”ってのが、しのぶさん親子の話も、医療も、“SM”も、ジェンダーも、命も、どれも、すべて、平等に、濃密に、何より“本気”で描いてみせる!そして、それをちゃーんと『新宿野戦病院』という作品の中に、美しく収まる物語として成立させる!…うん、つまり、第6話の“SM”があったからこそより活きた、第7話のしのぶさん回、だったと思うんです。
だもんで、そんな第7話が終わったなら、次回の第8話からは、またさらに、より深い人間ドラマが描かれていくんだな…そうに違いない!!…という気持ちにさせた…そんな余韻がたっぷり過ぎる前回だったというのに、次回予告に現れた、これまでとは毛色が違い過ぎる、“爆破事件”!!!
おいおいおい!それじゃあ、このドラマ、もう、それは、『救命病棟24時』とか『コードブルー』とかの、大スペクタクル大エンターテインメント医療ドラマじゃねーか!!(いや、『救命病棟』や『コードブルー』も、そのスペクタクル待ちなドラマだからこそいいんですよ?)
この、『新宿野戦病院』ってのは、それらの医療ドラマとは違う路線、一線を画す、ものだったはずじゃあないですか??いくらドラマが終盤だからって、後半への弾みをつけたいからって、あまりにも話がスペクタクル過ぎじゃねーか!?この、スペクタクルすぎる“爆破事件”を起点に、後半戦、そっち方面で(どっち方面だよ)、壮大な話が、繰り広げられるの!?どうなの?!え!?とか、ただただ、その、次回予告の“爆破事件”を見ただけで、そこまで、急激に、憤ってしまった僕なわけですが、うん、そうなの。
そんな次回予告にあった“爆破事件”が、こんな大スペクタクルな話が、まさか、1話で、あっさり終わってしまう…だなんて…とてつもない、潔さ!!!
いや、まだ次回へ続く枝葉のストーリーはあるのかもしれないんだけれど、爆破事件の、その真犯人くらいは前後編に分けて、来週解決!!とか、もったいぶってもいいくらいの、スペクタクルだし、そもそも、そこで描かれたストーリーも思いのほか入り組んでて、テーマもありつつ巧妙で、それでいてとっても人情な、この『新宿野戦病院』というドラマの骨格を、ちっとも揺るがさない、このドラマらしい物語が、楽しく美しく紡がれていたというのに、まさかのまさか、この1話でフィニッシュさせるだなんて!!!
で、そんななかでも素晴らしかったのは、その、大スペクタクルな事件の様子、その事件の瞬間、事件現場は俯瞰(ふかん)では一切映し出さなくて、最後の最後に、その焼け跡=戦いのあとのように見せて終わらせる…。
このドラマはスペクタクルを見せたいんじゃない!!人情を見せたいんだ!!!と言わんばかりの、あの演出の、粋さ!!ね!?河毛監督、粋すぎる!!もう、大好き!!!(告白しちゃった)
僕ってば、普通に、あの場面、大スペクタクルに見せると金がかかるから、見せない=予算の都合だとばっかり思ってたのに…うん、もう、そんな自分、ぶん殴りたい!!!
“決めつけ”や“偏見”といった、誰にも心当たりがあるであろう事象を表出
・今作の大テーマ『命の平等』をこう描くのか…
そしてそして、そんな大スペクタクル=“爆破事件”で、何を描いて見せたか…?ってのが、これまたすごくて、それっていうのが、このドラマが第1話から掲げている“命の平等”について…。
うん、で、今回の話の流れ上、“爆破事件”が起こる→犯人らしき人が運ばれてくる…というこの展開が来たら、ははぁー、この、大きな事件でもって、その犯人の命も、誰の命も、医者ってのは平等に助ける!!っていう、そういうことを改めて謳(うた)って、だからこそ、こんな大きな事件を描いたんだ…。
だから、その“誰の命も”の大きさ、意味が、より浮き彫りになるんだ…。とか、ド素人(=自分)が考えてたら、まさかまさか、その後、真犯人が現れて、ちょっぴり謎解きミステリー的な展開も見せて、ははぁー、そういう“すかし”を入れてきたのね!!巧い!!!とかなんとか、知ったような批評かましてたら(=自分)、真犯人こそ死なせるわけにはいかない!!ほかの重症患者よりも、真犯人を先に搬送してほしい!!!
とかなんとか、まさかまさかの展開になって、挙句、「犯人なんか助けるな言うたり、犯人だから死なすな言うたり何様じゃ!」「ド素人はすっこんでろ!」…(え?ド素人…??僕?!!?)という、見事すぎる、テーマを描くための、そんなこんなの二転三転!!
で、その二転三転ってのも、ただただドラマを飽きさせないための装置としてではなく、犯人を誤る、その怖ろしさのなかに、今回の物語を見ていた人ならみんな感じていたであろう、“決めつけ”や“偏見”といった、誰にも心当たりがあるであろう事象を表出させてしまう…。
事件はスペクタクル的でありながら、そこで描かれるのは、誰の心にも思い当たる感情=絵空事ではなく自分事、そして、それを深く感じることこそが、真のダイバーシティになるのでは?と思わせる、そんな、物語にしてしまう…。
で、そんなこんなの感情を、ヨウコ(小池栄子)の啖呵(たんか)によって“爽快さ”につなげるはつなげるんだけど、それ以上に何より、どこか苦みや痛みの方が強くて、こっちがすごく反省してしまう…複雑な味わいにさせてしまう…。
そんなお話を、この大スペクタクルを起因にして、描いてしまうこのドラマのすごみ!!!で、最初に提示されたテーマの回答を、最後の最後に、享(仲野太賀)の口から、丁寧に言わせてるのに、目を開けたまま寝る…につなげるとか…笑…もう感情が、無理!!!
かと思ったら、次回は「好きなお巡りさんができたの♡」(再びのパワーワード!)からの恋愛話!!!SM→しのぶさん回→爆破事件→恋愛!!!もう要素が、多すぎて、このドラマ、ついていけない!!(=楽しすぎるの意)