三竿玲子P セックスレスを扱う『あなたがしてくれなくても』の好調に「攻めることをやめなくてよかった」

フジテレビュー!!
三竿玲子P セックスレスを扱う『あなたがしてくれなくても』の好調に「攻めることをやめなくてよかった」

奈緒さんが主演を務める木曜劇場『あなたがしてくれなくても』は、夫婦のセックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。

結婚5年目でレス歴2年の会社員・吉野みち(奈緒)が、夫・陽一(永山瑛太)との夫婦関係の悩みを会社の上司・新名誠(岩田剛典)に打ち明けたことから、吉野家、新名家、2組の夫婦に変化が起こります。

第8話では、これまでセックスを避けていた陽一、新名の妻・楓(田中みな実)が、それぞれみち、新名の体を求め、ようやく2組の夫婦が再スタートを切ったかに見えましたが、みち、新名が相手を拒む展開に。

これにはSNSで「みちも誠も拒否…!」「ああああ複雑!!」「この流れはつらいよ」「両家とも遅かったね」「もうどっちも別れようよ」などと大きな盛り上がりを見せました。

<【毎週更新】木曜劇場『あなたがしてくれなくても』あらすじ完全版まとめ>

毎話、予想外の展開となりながらも登場人物の感情はリアルに描かれており、メインキャラクターであるみちと陽一、新名と楓の4人の誰かに共感し、誰かには共感できなくても「なんか分かる」と思ってしまう、不思議な感覚を生み出す本作。

センシティブなテーマを扱うため、「家族とは一緒に見られない」という意見もあり、TVerの放送後1週間の見逃し配信が累計2000万再生を突破。1人でじっくり楽しむ“こっそり視聴勢”の多さが話題となっています。

フジテレビュー!!では、三竿玲子プロデューサーにインタビュー。本作への反響や制作するうえで意識していること、奈緒さん、岩田剛典さんの印象などたっぷり語ってもらいました。

『昼顔』とは違った視聴者の盛り上がり方は「発見でした」

<三竿玲子プロデューサー インタビュー>

──物語は終盤ですが、ここまでの放送に対する反響や手応えはいかがですか?

私はすごく久しぶりに現場に戻ってきたこともあって(※)、正直TVerなど見逃し配信の重要性があまり理解できていませんでした。「『silent』がすごいらしいよ」と聞いていたくらいで。

ですから、初回放送後「TVerがすごい再生されている」「初回346万再生!」と言われても、最初はピンときておらず。でも、肌感として多くの方に見ていただいているんだということも実感しましたし、こっそり見ていただく方が多いんだなと知ることができました。

テレビ局なので、「地上波で見てもらえるものを」ということを意識して作っていますが、1人で見てもらう作り方もあるんだという発見でもありましたね。

(第1話より)

(※)ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(2014年/フジテレビ系)の続編である映画「昼顔」(2017年)を手掛け、近年は『やんごとなき一族』(2022年/フジテレビ系)に協力プロデュースとして参加

──その点は、ドラマ『昼顔』のときとは違う感覚だったのでしょうか?

そうですね。『昼顔』の当時は、見逃し配信はなかったので、ドラマを見ようと思うと、リアルタイムか、録画しかありませんでしたから。

ただ、不倫をテーマにした作品でしたけど、会社内で「(放送翌日の)金曜日のお昼は、みんなで『昼顔』の感想を話す時間」という反響もあり、地上波のリアルタイムで皆さんに楽しんでいただいている実感がありました。

それは数字でも明らかで、1話よりも2話、3話と視聴率がどんどんと上がっていくという不思議な現象が起こったんです。私がそれまで学んできたのは、「1話が勝負で、2話は視聴率が下がるもの」というセオリー。“そうじゃない”こともあるんだなと感じたことを今でも覚えています。

『昼顔』は攻めていましたけど、なぜかあまりお叱りは受けなかったんですよね。でも、『あなたがしてくれなくても』は、“セックスレス”という言葉がセンセーショナルで、子どもに見せづらいということもあって、結構お叱りを受けていて(笑)。

カメラマンがお家に台本を置いていたら、子どもに「パパ、これ何をしてくれないの?」って聞かれたそうなんです。うかつに台本を置けないな、と。

そういうセンシティブな部分がありますけど、今はTVerがあって、1人でこっそり見ていただけるということは発見でしたね。

実は、1話は、セックスレスというセリフが入っていることもあり、PRスポットを昼間に流すものと夜に流すもので内容を変えていました。でも、SNSに同じPRスポットを投稿しても、それに対する苦情は来ていなくて。SNSの可能性も感じています。

──そうしたセンシティブなテーマを扱う本作を制作するうえで、大切にしていることはありますか?

原作が、性描写含め、結構攻めた表現、展開になっていて、それに対して、みち、新名、楓、陽一の4者4様の心理描写が丁寧に描かれるのが面白かったんです。

地上波で見てもらうために、原作よりもマイルドにする選択肢もあり、迷ったのですが、面白いと思った部分を変更することに疑問を感じたので、日和(ひよ)るのはやめようとスタッフとの話し合いで決めました。

もちろん地上波の放送では描けないこともありますが、“エロ”がやりたいわけではないので、そこをフィーチャーするのではなく、ちゃんと必要なシーンとして、下品にならないことを意識しながら攻めていこう、と。

ただ、蓋を開けてみたら、過激な表現も多く、全国の家庭を凍り付かせていたという(笑)。それはそうなりますよね。でも、作品のために、攻めることをやめなくてよかったなと思っています。

岩田剛典はずるい!笑顔も切ない顔も「なんでも許せてしまう」

──奈緒さんや岩田剛典さんについて、「キャスティングしてよかった」と思うエピソードはありますか?

ヒロインのみちは、漫画を読んだときから本当に“普通にいる人”だなという印象を受けました。そのため、ドラマ化する際に、誰が見ても「これは、私だ」と思える人じゃなきゃダメだと思っていたんです。

奈緒さんはどんな役もチャーミングに演じる方。奈緒さんにみちを演じてもらえたら、愛される主人公になるなと思いオファーしました。

(第1話より)

現場では、すごく自然体で、本番以外の部分でもかわいらしさが印象的ですね。そこがみちっぽいですし、お願いして本当によかったと思っています。

この間、陽一とラブラブだった頃の回想シーンを撮影しているときに、「最近、新名さんといても、陽ちゃんといてもつらいシーンばっかりで心が暗くなって、つらかったんですけど、今日は楽しかったです」とおっしゃっていて。

しっかりとみちを演じてくださっているからこそ、ずっとつらい気持ちなのでしょうし…ごめんなさいという感じです(笑)。

──奈緒さんの一つひとつの表情や仕草がリアルだと話題です。

夫婦なので、どんなに大喧嘩をしても、どんなに嫌なことがあっても、同じ家に帰らなきゃいけない。それがリアルだと思うのですが、そこがドラマの一番大事なところ。

第6話で「一度だけ、みちのことを裏切った」と告白した陽一を避けるみちの姿が、第7話で描かれましたが、リアルなことを言うと、家を飛び出したみちは荷物を取りに帰らないといけないですよね。

顔を合わせたくないと思いながら家に戻ったとき、どんな行動をとるのか、「もし家に陽一がいたとしても話しかけてこなかったら、ムカつくよね」などと、みんなで考えています。

(第6話より)

──その意見交換の場には、奈緒さんもいるのでしょうか?

それは台本を作る段階の話なので、奈緒さんいらっしゃいません。ただ、奈緒さんは台本の意図を汲んで演じてくださっていて。ですが、自分が思うことはしっかり言ってくださるし、監督とディスカッションをしてシーンを作り上げている感じです。

──岩田さんの印象はいかがですか?

岩田さんは、本当に王子様。このドラマで何を見せたいかというと、王子様が崩れるところなのですが、悲しい顔が抜群にセクシーなんですよね。こんなことを言ったら、ご本人に怒られてしまうかもしれないですけど(笑)。

(第4話より)

くしゃっと笑う顔もすごくステキなのですが、切ない顔をしたときに「なんでも許せる」と女性が思ってしまう、あの表情ができるのは素晴らしいです。「こういう新名さん見たかった!」というキャラクターを体現してくださっていますね。

いつも楓に何か言いたげだけど言えない、つい言いすぎてしまって反省してしまう、そういう感情の起伏を演じるのは大変だと思いますが、台本に忠実に、一生懸命演じてくださっていて、うれしいです。

第5話のラストで、プラネタリウムを予約してみちに会いに行ったときの笑顔と、その直後みちから「同僚に戻りましょう」と言われたときの悲しい表情の落差は、特によかったですよね。

みちとの約束に心躍らせる満面の笑顔を見せてくださって。あの笑顔にもやられるけど、その後の悲しい顔にもやられてしまう…本当にずるいです(笑)。

──第4話第5話では、新名と向き合うために仕事をしながら、家事などを頑張る楓を冷たくあしらう姿には、少なからず批判の声もありました。

本当に…それはボタンの掛け違い。お互いにうまくいっているとき、新名は楓がイキイキと頑張る姿がうれしかったでしょうし、ご飯を作ってあげられることもうれしかったと思うんです。

でも、ボタンを掛け違えてしまうと、新名は「ご飯作ってあげてるのに」と思ってしまったり、楓が家のことも頑張っても「今さら、なんだ」と思ってしまったりして。楓もまた、新名がいろいろしてくれることがプレッシャーになっていたり…。

うまく本音を伝えることができない2人なんですよね。

(第5話より)

みちの後輩・華は侍?楓の上司・圭子はあるセリフのためにMEGUMIにオファー

──みちの後輩・北原華や楓の上司・川上圭子のセリフは仕事や恋愛において、女性に刺さるものが多く、話題です。それぞれの役を演じる武田玲奈さんやMEGUMIさんに、「こういう風に演じて」などとリクエストはしているのでしょうか?

華はより良い男の人を選んで結婚したいということや、不倫はダメだとは言わないけど隠し通す覚悟をもつという、一貫した恋愛のルールを持っているんですよね。

ですから、武田さんには「華は侍。バッサバッサとかっこよく斬っていくんだけど、切れ味が抜群だから相手は痛みを感じない」と、華のイメージを伝えています。バサッとものを言ってくれるから、気持ちがいいんだと。

フワフワしているみちをちゃんと斬ってくれる、みちが迷ったときに道しるべになるべき人なので、「思いっきり斬ってほしい」と思っています。

(第2話より)

MEGUMIさんに関しては、第2話に圭子が会社で働く女性が結婚や出産することで会社での立場などを奪われる危機感を語るシーンがあるのですが、そのセリフを言ってもらいたくてオファーしました。自分が共感した大好きなセリフを誰に言ってもらったらいいのか、ということを基準にキャスティングしたんです。

私がAP時代に担当したドラマにMEGUMIさんが出ていらしたのですが、お芝居が上手で、多才で、サバサバした方という印象で、またご一緒したいなと思っていました。あの当時のイメージのMEGUMIさんがこのセリフを言ってくれたら自分は報われるな、と。

(第2話より)

その思いが強く、出演をお願いするときに、役柄の説明はそこそこに「このセリフを言ってほしいんです!」「このセリフが命なんです!」と熱弁してしまいました(笑)。お受けいただけて良かったです。

──最後に、終盤の見どころを聞かせてください。

みちと新名は、イルカが超音波で会話をするような関係。心で繋がっていて、「感じ取る」という。お互いに、夫婦の問題に向き合って頑張るんだけど、その裏で何か感じ取り合う2人もいて。

夫と、心がつながっている人(新名)との関係が深まっていくなか、みちはどういう選択をするのか。そして、第9話、第10話、最終話と、さまざまな展開を用意しています。

何をもって“ハッピー”とするかは、人それぞれですので、ハッピーエンドかどうかは言及できません。でも、人によって捉え方の違う展開は面白いと思いますので、最後まで楽しみにしていてください。

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