富田望生さんが、ナレーション収録時の裏側を明かしました。
富田望生さんは、9月25日(日)14時~放送の『ザ・ノンフィクション「ボクと父ちゃんの記憶2022後編~18歳の夢 家族の夢~」』(フジテレビ/関東ローカル)の“語り”を担当。
番組が2021年に出会った、認知症の父を真摯に介護する大介さんと家族の日々を追うドキュメンタリー。昨年10月に放送された前作、先週放送の前編に続き、富田さんが語りで寄り添います。
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「父ちゃんに会いたい」涙の別れから1年で再会の時が
2022年春…高校を卒業した大介さん(18)は、造園会社に就職し、社会人としての一歩を踏み出しました。幼い頃から父に自然や環境のことを教えてもらった大介さんには、「いつか独立して農家になる」という夢があります。それは、今は離ればなれになっている家族の未来を思い描いた夢でもありました。

番組が大介さんに出会ったのは、2021年夏のこと。緑に囲まれた千葉・睦沢町で暮らす高校3年生の大介さんは、父・佳秀さん(65)の介護を続ける「ヤングケアラー」でした。
佳秀さんは、50歳の時に、若年性アルツハイマー型認知症と診断。それから15年で、病気が進み、次第に家族の会話もままならず、トイレに一人でいくこともできなくなってしまいました。
そんな佳秀さんを大介さんの母は介護施設に入所させることを決断。しかし、離れて暮らし、触れ合うことがなくなれば、父の記憶から家族の存在は薄れてしまう…それは、実質的に、父との「別れ」を意味することになります。

そして、佳秀さんが入所してから10ヵ月。まだ一度も面会を許されていない父の66歳の誕生日。大介さんは初任給でケーキを買い、母は手作りのお弁当を用意するも、直接、対面することは許されませんでした。
「父ちゃんに会いたい」。大介さんと家族の気持ちが募り、涙の別れから1年が過ぎようというころ、ようやく再会の時が訪れます。
前作、先週放送の前編に続き、“語り”を務めた富田さん。改めて感じた思いを聞きました。
前回とは違う希望や未来があるからこそ「なんてやるせないんだろう」
<富田望生 インタビュー>

――大介さんは高校を卒業し、社会人となりましたが、変化は感じましたか?
環境は変わっても「変わらないな」と感じました。自我が芽生えて…とありましたが、もちろん、さらに成長していく過程ではあると思うんですけど、高校生でも社会人でも、家族が大好きで大きな夢があって、大介くんは大介くんでした。すごくいい意味で「なんて変わらないんだろう」と思いました。
食べる姿も変わらないですよね。ご飯をボウルに入れてスプーンで豪快に食べる…そのひと口が大きい!そういう正直なところも含めて、本当に変わらない方だという印象でした。
――大介さん家族には、前向きな変化もありました。
そうですね。でも、前を向いているからこその“やるせなさ”も感じました。特にコロナ禍というのが大きくて、コロナさえなければ、インフルエンザの時期以外は、月に一度の面会ができるのに…という。
大介くんが「何がコロナじゃ」と言っていましたが、父ちゃんの記憶が失われていくなかで、焦りもあるでしょうし、そのやるせなさは前回以上に感じ、「しょうがない」とは言い切れないほどでした。
大介くんは社会人として5年間の修行を始めたところですが、修行を進めるためにも時間が早く過ぎてほしいという思いと、父ちゃんの進行を考えるとゆっくり進んでほしいっていう思いと両方あって。
前回とは違った希望や未来があるからこそ、「ああ、なんてやるせないんだろう」という気持ちになりました。

――今回、特に印象的だった場面といえば?
卒業式も、初めての就職の日も全部ですね。(家を出るときに、そこにはいない父に対して)「父ちゃん、行ってくるね」って言うところは、何度見てもグッときました。
離れて暮らしていても、一つ屋根の下にいられなくても、本当に“家族”っていう思いが強いんだというのを、その一言、一つの行動ですごく感じました。
大介くんはもちろん、お母さんが同じように「お父さん行ってくるよ」と言うのもそうですよね。きっと息子の卒業式をお父さんと一緒に見たかっただろうな、とも思いました。
――前回、今回とナレーションを担当し、ご自身にとってどんな作品ですか?
本当に“語り”で寄り添っていけるならば、寄り添っていきたいって思います。大介くんの家族に限らずこういったことを抱えているご家族は、本当にたくさんあると思いますので、そういった方々への思いも込めて、寄り添っていけるならありがたいです。

それと、今日読んでいて自分でビックリしたのは、止まらずに読めたこと。「私、止まらずに読めるんだ」と驚きました。「いける」じゃないですけど、「大丈夫」という感じがしたんです。なんだか「止まっちゃダメ」じゃないですけど、そんな気持ちがして。
このまま大介くんの家族と同じ流れで私も言葉を発しなければ、と思い。たまにイントネーションを間違えて止まることはありましたが、こんなに言葉を噛むこともなく同じ流れで語れたのは初めてでした。
去年に続いて語りをやらせていただき、その後の時の流れをリアルに感じられたからこそ、そういう時間になったんじゃないかなって。
大介くんの家族が途切れていないのと同じように、私も途切れたくない。読み始める前もそういう気持ちでしたが、読み始めたらさらにそんなことを感じました。