ディーン・フジオカさんが、久しぶりの共演で発見した岩田剛典さんの一面について語りました。
2019年10月期にフジテレビの月9で放送され、人気を博した「シャーロック」が、ファン待望の映画化。「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」として、6月17日(金)に公開されます。
本作は、世界的探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案とし、ディーンさん演じる誉獅子雄(ほまれ・ししお)と、岩田さん演じる若宮潤一(わかみや・じゅんいち)が名探偵バディとして難事件を解決する推理劇。
「シャーロック劇場版」では、ホームズシリーズ最高傑作の呼び声も高い「バスカヴィル家の犬」をモチーフに、華麗なる一族の闇に獅子雄と若宮が迫ります。
閉ざされた離島を舞台に展開する深い謎に、唯一無二の名探偵バディとして挑んだお2人。2年半ぶりにタッグを組んだ感想や、劇場版に込めた思い、お互いの知られざる一面について聞きました。
<「シャーロック」の関連記事>
<【写真9枚】この記事の写真を見る>
「若宮が独り立ちしていく感じで、より2人の関係性が強固に」(ディーン)
<ディーン・フジオカ、岩田剛典 インタビュー>

──久しぶりの「シャーロック」の現場には、どんな気持ちで臨みましたか。
ディーン:まず、作品を続けられるということがすごくありがたかったです。それだけ多くの方が、この作品を見たいと思ってくださったというのは、とてもうれしいことだなと。
今回、キャストの皆さんは「はじめまして」の方も多いですけど、現場自体は、西谷(弘)監督を筆頭に同窓会のような懐かしさや温もりがありました。
コロナの影響もあって、撮影自体はいろいろ大変でしたけど、連ドラで積み上げてきた「シャーロック」の物語を、映画という、また違う媒体で皆さんに楽しんでもらえるように、いい緊張感の中、良い作品を粛々とみんなで作っていくという現場だったと思います。
岩田:僕も、続編ができるということは、すごくありがたいことだと思いました。しかも、スケールアップして劇場版としてお届けできるのはとても幸せなことで。撮影はハードではありましたけど、現場に入っていく心持ちとしてはすごく楽しめましたね。
──2年半ぶりに同じ役を演じてみて、いかがでしたか?
岩田:久しぶりなんですけど、久しぶり感をそこまで感じなかったです。撮影に入る前に、キャストが全員集まるシーンでリハーサルを重ねたのですが、そのときに「あ、若宮こういう感じだったな」って、だいぶ勘が戻ってきた感じがありました。
なので、心配よりワクワクのほうが大きかったし、改めて、この作品はテレビドラマをワンクールやったということが、自分の中で大きな自信につながっていると感じました。
ディーン:確かに、ドラマのときに基礎がすごくしっかりできあがっていたので、特に不安もなく現場に入れたよね。
僕が演じる獅子雄は、謎を解くことに対して好奇心や抑えきれない衝動があって、ドラマのときは、若宮がそれに無理やり付き合わされて、ペースを崩されるところがあったのかなと思うんです(笑)。
でも、この「バスカヴィル家の犬」という作品においては、若宮は謎解きに対してより主体的に動いて、独り立ちしていく感じがあって。それによって、2人の関係性がより強固なものになっていく、という側面もあると思うんだけど、(岩田に)どうだろう?

岩田:僕もそう思います。僕ら、「リモートバディ」と言ってましたけど、今回は、脚本がこういう(コロナの)時期にぴったりな感じの作りになっています。距離は離れていても、2人が一緒に物事を解決していく感じは、ドラマよりもバディ感が強いですし、若宮の行動も、獅子雄にやらされている感じではないものになっています。
そこは、獅子雄と若宮が“離れていてもつながっている”ことの表れで、物理的な距離みたいなものは関係ないなと感じました。
──2年半ぶりの共演で、お互い、印象が変わったと感じるところや、新たな発見はありましたか?
ディーン:ドラマをワンクール撮ると、約3ヵ月間ずっと一緒にいるので、共演する方の人となりって、だいたいわかるんですよ。だから、そこから印象がまったく変わったということはなかったけど…今回、ロケが愛媛県の松山市であったのですが、岩ちゃんの荷物の少なさというのは、本当に新しい発見でした。
岩田:ふふふ(笑)。それ、僕はディーンさんに言われるまで気づかなかったんですけどね。ただ、自分でも荷物が少ないとは思います。本当に必要最低限のものしか持っていかないので。
ディーン:もしや旅の達人?
岩田:いや、逆に全然旅慣れしてないからだと思います(笑)。
「意外とドジで、忘れ物も多いです」(岩田)
──改めて、ご自身が演じる役の魅力と、役者として演じがいを感じる点について教えていただけますか。
ディーン:誉獅子雄というキャラクターは、セリフ回しも、立ち振る舞いも、ちょっと普通じゃないですよね(笑)。だからドラマのときに、この役のために1個、新たに「誉獅子雄スイッチ」を作る必要があったんです。
イメージ的にはF1の感覚というか…つまり、何かをやるときに、やたらスピードが速くて、スペックも高くて、それが奇人、変人的に映るといいなと思っていて。必要ないかもしれないけれど、呼吸しないで長台詞を全部言い切ってみたり(笑)。今思うと、すごく試行錯誤していたなと思います。

──ご自分の中にはあまりない要素だからこそ、「獅子雄スイッチ」を作る必要があったわけですか?
ディーン:そうですね。リアルな自分は、静か~に生きてる人間なので(笑)。獅子雄みたいに、周りに迷惑をかけまくって、奇行を重ねる感じではないですからね。
ただ、それが痛い感じに見えたら嫌なので、どうすればナチュラルに、「この人、普通じゃない」と見えるかを考えていました。とにかく一つひとつのアクションが極端だと一番わかりやすく伝わるだろうと思ったので、そういうふうに準備していったのを覚えています。
岩田:若宮は、泣いたり、笑ったり、怒ったりという喜怒哀楽の表現が豊かで、感情のふり幅が出せる役なので、演じがいはすごくあります。
それと、ミステリーやサスペンステイストの作品の中で、箸休め的に、ちょっとほっこりしていただくシーンづくりを担う役柄でもあります。そこは、狙ってやるみたいな感じもすごくあって(笑)。西谷さんが絶妙なさじ加減でさばいてくださるので、映画でも、重厚なストーリーの中で違和感なく、さらっとサブリミナル的な感じで出てきます。
──そんな若宮(=岩田さん)を見て「母性本能をくすぐられた」と、今作の完成報告会でディーンさんが話していましたが、それは岩田さんとしてもうれしい反応だったのではないですか?
岩田:狙ってやっているのでね(笑)。まぁ、僕がというより、監督のおかげですけど。
──岩田さんに対してクールなイメージを持っている人も多いと思いますが、普段のご自分の中にも、若宮的な人間味あふれる一面はありますか?
岩田:全然ありますね。意外とドジですし、忘れ物も多いですし。
ディーン:だから、あの荷物の少なさなの(笑)? 今まで忘れ物とか落とし物で、「これは自分でも引いた」っていうことはある?
岩田:財布と携帯の落とし物…ですかね(笑)。
ディーン:アハハ!ドン引きだ(笑)。

岩田:タクシーの座席とかに忘れちゃうんですよね…。タクシー会社に電話して見つかったんですけど、どの会社のタクシーに、どこからどこまで乗ったとか、いちいち覚えてないじゃないですか。もう大変でしたよ、本当に。ディーンさんはそういう失敗、ないですか?
ディーン:なんかあるかな…ああ、パスポートを持つのを忘れて空港に行っちゃったことはある。
岩田:パスポートですね。(自分も)ありますとも(笑)!
ゲストは「暴れてください!」というスタンスで迎え入れ

──今回、役を演じるうえで心がけたことは?
ディーン:自分としては、西谷さんがモニターで見たいと思う画をどうやってそこに成立させるか、ということを常に考えながらやっていました。同時に、獅子雄と若宮がバディとして事件を解決する中で、お互いの知恵や能力を持ち寄ってやっていく過程そのものが、作品の魅力であることも念頭に置いていました。
岩田:僕は、現場でリアルに感じた感情と、シーンの中でのお芝居の構築の仕方に集中していました。もちろん、基本、西谷さんが演出で導いてくださるので、そこにずっと神経を張り巡らせて。監督からどんなボールが飛んできてもキャッチできるように、ということは意識していました。
──今作には、新木優子さんや広末涼子さんをはじめ、多くのゲストが登場します。「シャーロック」という看板を守りながら、多彩なゲストを迎えるうえでの工夫や、気を配った点があれば教えてください。
ディーン:ゲストとの関係は、バラエティ番組に例えるなら、我々2人が司会者で、ゲストが来るという関係に近いだろうなと思います。だから、キャラクター一人ひとりの魅力がより前に出るほど、作品はさらに重層的な厚みのあるものになると思っていて。ただ、そこの調整は、主に監督がしてくださいましたよね。
岩田:続編に臨むにあたって、役柄に対する自分の整理はついていたし、バディとしての関係性も、ドラマシリーズの中で盤石なものが作れていたので、誰がゲストでいらしても、もうブレない。逆に、「暴れてください!」という感じで、ゲストの皆さんを迎えることができました。自分としては、本当にフラットでいられた現場でしたね。

──ディーンさんは、資産家の息子役の村上虹郎さんと、待ち時間に小道具のチェスで勝負をされていたとか。そうしたコミュニケーションも、現場の空気づくりのためだったのでしょうか。
ディーン:あれはたまたま、小道具にチェスがあって、待ち時間にやったら楽しいだろうなと思っただけです(笑)。とはいえ、一人ひとりの登場人物に本領を発揮していただくことが、作品の本質的な良さにつながっていくのは間違いないので、チェスをやったことも、そうしたことに結果つながっているのであれば、よかったなと思います。
役者同士に限らず、スタッフも含めて、関係者同士が現場でコミュニケーションをとったり、意見交換をすることは、作品の熱量を高めていくものだと思うので、仕事の邪魔にならない範囲でやれればなと、どの作品のときにも思っています。
2人の体調管理に欠かせないものは…?
──ハードな撮影を乗り切るうえで役立ったアイテムや、普段の体調管理で欠かせないものはありますか?
ディーン:撮影が24時を超えるときや、体調がいまいちなときは、インドネシアの「トラックアンギン」というオーガ二ックなハーバルシロップを飲んでいます。あと、たまに無性に入りたくなるのがサウナの水風呂です。今、自宅のバスルームを、熱い風呂と水風呂用にバスタブを2つ並べられるように作り変えようかなって本気で考えていますね。
岩田:僕は、連ドラの「シャーロック」が終わったあと、ディーンさんから薬膳のリフレッシュオイルを大量にいただいて、今も現場でめちゃ使っています。ペパーミントの香りで、耳のうしろに塗ると、スース―して目が覚めるんです。あとは、針治療。行けるものなら毎日行きたいですね。

──さらに続編があるとしたら、2人でどんな事件に挑みたいですか?
ディーン:願わくば、環境が体に優しい場所で展開する事件がいいですね。洞窟の奥深くとかじゃなく、空調が完備された、夏でも冬でも快適な場所での事件に挑みたいです(笑)。
岩田:いいですね~!僕はシンガポールでのロケもしたいです。
ディーン:シンガポールは、ご飯がおいしいもんね。
岩田:はい。次はぜひ、シンガポールのホテルの中だけで完結する事件でお願いします(笑)。
──最後に、改めて「シャーロック劇場版」の魅力を教えてください。
ディーン:仕上がったものを実際に見て、とても上質なエンターテインメント作品だなと思いました。テレビドラマから続けて我々2人がやってきた「バディを見せる物語」という軸に加えて、登場人物一人ひとりの持つ魅力や、それぞれが背負う宿命みたいなものが重層的に絡みあう形で物語は進んでいきます。見終わったあとに、その世界観の中からなかなか抜け出せなくなるような、見ごたえのある作品になっていると思います。
岩田:とても重厚感があり、いろんな感情にさせられるエンターテインメントになっています。映画館に入る前と出た後で、全然違う感覚になるところが、この映画の良さだと思います。迫力のある、美しく壮大な映像を、ぜひ映画館で楽しんでください。

撮影:河井彩美
取材・文:浜野雪江
ヘアメイク:花村枝美(MARVEE/ディーン・フジオカ)、下川真矢(BERYL/岩田剛典)
スタイリスト:村田 友哉(SMB International./ディーン・フジオカ)、渡辺康裕(W/岩田剛典)