金田明夫、亡き愛犬のリードをポケットに入れて…かつての散歩道をランニング「一緒に俺はいるよ」

公開: 更新: テレ朝POST

©テレビ朝日

「演劇集団円」に所属する俳優として多くの舞台やテレビドラマ、映画に出演している金田明夫さん。長年レギュラー出演中の『科捜研の女』(テレビ朝日系)シリーズでは藤倉刑事部長役、現在放送中の『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)では小山田管理官役でおなじみ。スーツ姿で渋い大人の実力派俳優として唯一無二の存在感を放っているが、撮影を離れるとイメージが一変。カジュアルで若々しい。

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◆京都ロケのお供はジョギングシューズとウォーキングシューズ

金田さんは、2009年に長年飼っていた愛犬、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアのハンク君を17歳で亡くしたという。ハンク君のために海外旅行に行くこともなく、晩年は具合が悪くなったらいつでも車で動物病院に連れて行けるように、お酒も飲まないようにしていたと話す。

「10年ぐらい前、55歳のときに可愛がっていた犬が亡くなっちゃって。ずっとそれまで犬と散歩をしていたんですけど、犬がだんだん年を取って歩けなくなっちゃったので、晩年はほとんど犬を抱いて散歩に行くという感じでした。

8キロの犬を抱いて1時間半歩いていたんですけど、人間のからだってすごいですよ。そういう生活になったときには、大胸筋と上腕二頭筋が、びっくりするぐらい太くなりましたからね。

すごい肉体労働だな、筋肉がつくものだなあって驚きました。カチンカチンの筋肉がつきましたからね」

-それを毎日やっていたのですか-

「はい、毎日です。それでそのうちに犬を抱いて、ただ歩くのも何だから、もも上げをしながらやってみようと思って、2000回もも上げをして。

そうやって犬と散歩しているうちに犬が死んじゃって…。もうすぐ18歳になるところだったんですけどね。

それで、亡くなっちゃった後、ちょっと犬の散歩道を歩きながら、少し走ってみようかなと思ったのが10年前です。

犬の散歩道を走ってみたら、最初は2km弱なのに息切れしちゃって、『あー、ダメだ。これはキツい』って(笑)。

でも、その2kmをちょっとずつ、毎日毎日犬の供養みたいな気持ちで、犬のリードをポケットに入れながら走っていたんですよね。

リードを持って犬と一緒に散歩した道を僕が走っている間は、『一緒に俺はいるよ』っていう感じでね。

そのうち2kmから3kmになって、気がついたら今は5kmでもちょっと物足りないぐらいで。週に2回位ですけどね」

-人間のからだはすごいですね-

「だから『継続は力だなぁ』って。今65歳を過ぎたけど、今年はどれぐらい走れるかなって(笑)。

セリフを覚えながら走るので、覚えなきゃいけないセリフが多いときは、『あともう少し走っちゃおう』って、8kmぐらい走って帰ったりしてね。セリフをレコーダーに入れて、走りながら覚えているんですけど、10kmぐらい走ることもありますよ。

走り終わったあとはからだじゅう汗だくになって、ストレッチして、近所の神社に必ずお参りに行って、それで帰ります」

-健康的ですね。『科捜研の女』のロケにもジョギングシューズを持って行かれていたそうですね-

「ウォーキングシューズとジョギングシューズを持って行きます。ホテルのそばに京都御所があるので、何日か泊まることになると持って行って、3、4kmぐらい御所の周りを走っていますよ」

-ドラマではスーツ姿が多いのでわからないですけど、ラフな私服になると体脂肪が少ない引き締まった体型ですね-

「女房に『好きなものを食べたら太る』って食べさせてもらえない(笑)。太ると顕著に体調に出るし、洋服が入らなくなるのもイヤだから、膨らんできそうになると、『あっ、いかん』って、また気をつけるという感じですね」

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◆新作映画の演技がカナダの国際映画祭で…

今年2月14日(金)から長野県で先行公開され、全国順次公開となる映画『いつくしみふかき』にはキーパーソンとなる牧師・源一郎役で出演。この映画は、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」で観客賞である「ゆうばりファンタランド大賞」の作品賞をはじめ、数々の賞を受賞。国内だけでなく、カナダのファンタジア国際映画祭の長編初監督コンペティションに正式出品され、海外でも話題に。

※30年前、母が進一(遠山雄)を出産している最中に、母の実家に盗みに入った父・広志(渡辺いっけい)。村の衆に袋叩きにされ、殺される寸前だったところを牧師・源一郎が止めに入り、広志は“悪魔”として村から追い出される。30年後、源一郎のはからいで、広志と進一はお互い実の親子だとは知らないまま、共同生活を送ることになるが…。

-この映画に出演されることになったのはどのような経緯で?-

「大山晃一郎監督からお話が来て、マネジャーに聞いたら『やるべきです』って言うから『じゃあ、やろう』って。やってみたら本当に面白くて、『出演させていただいて良かったなあ』って思いました」

-「生みの親より育ての親」という言葉もありますが、血縁とは何なのか、色々なことを考えさせられる作品ですね-

「すごく考えさせられますよね。すごく面白い人間ドラマなので、いろんな人に是非見ていただきたいです」

-金田さんが演じられた牧師は物語のキーパーソンですね-

「そうですね。村の人たちのいろんなことを知っている人物で、非常に面白い役でした。北大路欣也さんがこの作品をご覧になった後、わざわざ電話下さったんです。

『金田さん、すばらしい。僕は嫉妬(しっと)したね。あんなすばらしい作品に出られるとは何なんだ?泣いた。感動した。深い!』って言っていただけてね。すごくうれしかったです」

-この映画は進一を演じた遠山雄さんの知人とそのお父さんについての実話がベースになっているそうですね-

「そうです。だから、『事実は小説より奇なり』という言葉じゃないけど、『事実は映画より奇なり』っていう感じで、本当にこういう世界があるんだなあって。

僕は、この作品で、(渡辺)いっけいさんとお芝居ができてすごく楽しくて。いっけいさんとは、キャラは似てはいないけど、年齢も近いのでね。これまで同じドラマに出たことはありますけど、演技を交えたことがなくて、初めてだったんです。芝居をガッツリやったことがなかったから、ぜひやりたいなと思っていて、念願かなってやれたのは本当に幸せでした」

-この作品でのいっけいさんは、これまでと全く違うひどい男の役ですね-

「そう、極悪のね。良いじゃないですか。僕が現場に入ったときには、遠山(雄)君も、もう役作りしていたんですね。『あいさつもしないのかな?』って思っていたら、もう役に入っていて、すさまじい役作りをしていたんです。『すばらしい俳優さんだなあ。すごいエネルギーだな』って思いました」

-どうせ自分なんてとすねて生きていた進一が変っていく様も良いですね-

「すてきですよね。最初は屈折していて何もできないじゃないですか。うまくいかないことすべてを父親のせいにして、仕事もできない人間が、最後は『頑張っていこう、頑張って生きていくんだ』って。

多分、進一のような若者はたくさんいると思うんです。それで、この映画を見て、『もうちょっと頑張って生きていこう』って思ってくれたら、良い感じで世の中回るんじゃないかな」

© 映画『いつくしみふかき』製作委員会

-撮影はスムーズに進んだのですか-

「僕のところに関してはほんとにスムーズでした。まぁちょっと監督はしつこいですけど。

『しつこいなあ』って言うと『はい』って言ってね(笑)。

でも、『もうちょっと、こうしてもらえますか。こうしてみてくれますか?』って、非常に的を射ていることを言ってくれるので、うれしくダメを出され、チェックをされて、やっているのが楽しかったですね。

何でも『OKです』じゃなくて、『こんなことも、もし何だったらやってみてくれますか』とか言われて、『えーっ?!』なんて言いながらやってみると、『やっぱりそっちですね』って、いたずらっ子のような目ですぐ横に来たりしてね。

そうすると、『よし、やっちゃおうぜ!』っていう気になるんですよね(笑)」

-すごく熱い現場だったんですね-

「熱いです。飯田(長野県)でオールロケだったんですけれども、僕はすでに現場があったまっているところに行ったんですよ。飯田の町の人たちがみんな協力して下さって、お弁当を作って下さったり、差し入れをしていただいたり、エキストラとして参加してくれたり…もう『みんなで作るぜ』っていう感じで。

僕が最初に撮ったのは、盗みがバレた広志が村人たちに殺されそうになっているシーンだったんですよ。すごい熱気で、『すごい、こんなにたくさん人がいる、みんな松明(たいまつ)を持っている。うわー、何これ?映画じゃん』って(笑)。

僕が入る直前までは、みんなお祭りみたいな感じで軽い雰囲気だったみたいですけど、監督が『あなたの家族が本当にこんな目にあったら、こんなにワイワイしてられますか?』ってカツを入れたんですって。

そうしたら、みんなの目の色が変わって、殺気立ったところに僕が、『おはようございま~す。金田明夫です。どうぞよろしくお願いします』って入って行ったんですよ(笑)。だから『みんなすごい、気持ち入っているじゃん』っていう感じでした」

-出来上がった作品をご覧になっていかがでした?-

「感動しました。2回か3回見させてもらったけど、役者ってダメで、やっぱり1回目はどうしても自分の演技を追っちゃうんですよ。

それで、ちょっと時間をおいて、1年以上経ってから見たときに、改めて『すばらしい作品だなぁ。これみんな見なきゃダメだよ』って思いました(笑)。

『これを撮りたいんだ、見せたいんだ、やりたいんだ』っていう、みんなのエネルギーの結集がね。『こういうエネルギーって、いくつになってもなくしちゃいけないな』って思いました。

現場で撮影しているときとか、公開を決めるために、この人たちがいかに頑張っているのかというのを見ると、『物作りってこうだよな。こういうことを忘れちゃいけないな』って思いました。

やりたいことをみんなで結集してやっているその姿に本当に心打たれるし、そういうのがきっと映像のなかにも出てきていて、見ている人の心を打つんじゃないかなぁって。

だから決して派手なドラマではないけれども、じっくりとゆっくりと、ジワーッと、隅々まで意識して監督が作っている映画なので、是非映画館で見ていただきたいなあって思います」

-海外でも高く評価されていますね-

「そうですね。1番うれしいのは、『金田(カネダ)さんの演技、カナダでウケましたよ。カナダ人が笑っていました』って監督が言うんですよ。『うれしいなあ。カナダで通用した!インターナショナルな俳優じゃない?俺』って(笑)」

-すごいですね。今後はどのように?-

「僕の年齢になると、ルーティンじゃないですけど、いただいている仕事をきちんとやって、舞台もやれる限りはやりたいですね。

つい最近女房に、『あなたはまだブレーク前なんだから頑張って』って言われたので、『あっ、はい、頑張ります』って言ってね(笑)」

-ブレークされているじゃないですか-

「いや、女房は許してくれないので。理想が高いんですよ。『ブロードウェイで芝居がやれたらいいわね』とかって言うんですよ。『お前ね、ちょっと待って』って(笑)。

まあ、こうやってやれているだけでもありがたいなって、今思っているし、劇団のなかで若い子たちと一緒にやるのも楽しいのでね。

教えるっていうのは俳優同士なのでおこがましいので、『一緒に戦っていいもの作ろうぜ』っていう感じですね」

とにかく『演ずる』ことが大好きだという金田さん。ゴルフも麻雀も興味なし。「時間があったら演技のことをやるし、女房と一緒にいますよ」と言い切るところがカッコいい。(津島令子)

※映画『いつくしみふかき』全国順次公開
配給・宣伝:渋谷プロダクション
監督:大山晃一郎
出演:渡辺いっけい 遠山雄 平栗あつみ こいけけいこ 三浦浩一 眞島秀和 塚本高史 金田明夫
30年前、妻の出産中に妻の実家に盗みに入った広志(渡辺いっけい)は、悪魔として村を追い出された。その時生まれた息子・進一(遠山雄)は、仕事も長続きしない何もできない男になっていた。そんなある日、村で連続空き巣事件が発生し…。

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