女優・北香那、ヒロインを演じた映画『春画先生』。共演した内野聖陽の役への姿勢に触れ「ただただ、追いつかなければと必死でした」

公開: 更新: テレ朝POST

『バイプレイヤーズ』シリーズ(テレビ東京系)のジャスミン役で注目を集め、声優初挑戦となったアニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』(石田祐康監督)では、主人公・アオヤマくんの声を担当した北香那さん。

『相棒season18』(テレビ朝日系)、『アバランチ』(フジテレビ系)、『連続ドラマW 事件』(WOWOW)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)など多くの作品に出演。

現在公開中の映画『春画先生』(塩田明彦監督)では、春画の研究者・芳賀一郎(内野聖陽)と出会って春画に魅了されていくヒロイン・春野弓子を演じている。

 

◆サプライズで誕生日プレゼントが

2019年、北さんは『相棒season18』の第1話と第2話に出演。過酷な訓練で強靭な肉体と精神力を磨き上げて戦闘技術を体得し、かつて陸上自衛隊特殊作戦群に所属していた岩田純(船越英一郎)の娘・ミナを演じた。

――父親に小さい頃から鍛えられ、殺人マシーンのように…という驚きの展開でした。

「そうですよね。殺人鬼だったという設定で、あれは初めてのアクションでした」

――アクションシーンは、かなり大変だったのでは?

「はい。アクションの練習は、殺陣の先生に教わって、何日も練習しました」

――からだを動かすのは得意なほうなのですか?

「運動神経はいいほうだと思います。3歳からバレエを習っていましたし、一番得意だったのがマット運動だったので、からだの使い方がわかっているというのはありました。だから、やっていてすごく楽しかったです。

あのときは初めての経験で大変でしたが、撮影中、船越さんが一緒になって、ああしよう、こうしようとアドバイスや提案をしてくださったので救われました」

――船越さんも優しい方ですよね。

「本当に優しいです。夏に撮影していたのですが、私は8月生まれで、あるとき船越さんから『北ちゃん、お誕生日おめでとう』ってプレゼントをいただいて、それがすごくうれしかったです。本当にステキな方です」

――サプライズでプレゼント、すごいですね。

「はい。ビックリしました。バックをいただいて、今でも使っています。そのあとで船越さんに殺されるシーンを撮ったんですけど(笑)」

――あれも切ないシーンでしたね。親としては、自分でそういう風に育ててしまった責任を取るというシーンで。

「そうですね、これ以上犠牲者を出さないために自分の娘を殺すというのが、そうせざるを得ない選択というか、歪んだ愛情というか、そういうものをすごく感じました」

――撮り終わったときはいかがでした?

「達成感がありました。『相棒』に出演させていただけることがうれしくて。放送されるのが楽しみでした。反響もすごくたくさんいただけたので良かったです」

――北さんが出演されたお話は、前編・後編の2話繋がりでした。

「はい。主に北海道で撮影していたのですが、洞爺湖やいろんなところに行って思い出もたくさんあるので、今でも再放送があるとうれしくなります」

 

◆数多くのドラマでキーパーソンとなる役に

2021年、北さんは『アバランチ』(フジテレビ系)の第5話と第6話に出演。このドラマは、謎の集団“アバランチ”が、さまざまな悪事を行う者たちを標的とし、その正体をンターネット上の動画チャンネルにアップロードして暴いていく様を描いたもの。

北さんは、綾野剛さん演じる主人公・羽生誠一が“アバランチ”のメンバーになることを決断するきっかけになるキーパーソン・あかり役を演じた。

――“アバランチ”発足の理由と真の目的が明かされる重要な回でしたね。

「はい。あの『アバランチ』の役は、今でも『すごく良かった』と言ってくださる方が多いのでうれしいです。ああいうちょっとギャルっぽいというか、やんちゃな感じだけど、1本芯が通っているという役で」

――華奢でか弱そうだけど芯が強い女性というのは、合っていますよね。とくに重要な回で、羽生がアバランチに加わることになるきっかけを作ったキーパーソンでした。

「そうでしたね。藤井さん(監督)と初めてお仕事をさせていただけてうれしかったです。あかりを演じる上で、藤井さんといろいろなお話をさせていただきました。タバコを吸いながら綾野剛さん演じる羽生と話すシーンは印象的でしたよね。

タバコを吸う役は初めてで、私はタバコを吸わないのですが、みんなが『タバコを吸っているシーンがすごく自然で、昔吸っていたのかなって思った』と言ってくれて(笑)」

――吸い方もちょっとガサツなキャラに合っていて、吸い慣れている感じに見えました。

「ありがとうございます。良かったです(笑)。少しそこが心配でした」

2023年、北さんは『連続ドラマW 事件』(WOWOW)に出演。このドラマは、元エリート裁判官の弁護士(椎名桔平)が残酷な真実に立ち向かっていく様を描いた法廷サスペンス。

北さんは、高校を中退して家を出て歌舞伎町のキャバクラに勤務した後、突然地元でスナックをオープンさせるが、刺殺体で発見される坂井葉津子を演じた。容疑者として逮捕されたのは、葉津子の妹・佳江の恋人・宏だった。

――冒頭から刺殺体で登場でした。

「はい。あれはなかなか悲しいお話ですね。葉津子が本当に大好きな人が宏で、宏の本当に大好きな人は葉津子で。妹が葉津子の代わりだったことは確かで、本当は葉津子と一緒になりたかった、葉津子も宏と一緒になりたかったのに、まさかの妹と付き合ってしまって、彼女が妊娠したから絶対にそこで葉津子に乗り替えるなんてことはできないというのがあって。

歯車が合わなくなって、負の連鎖という感じで、その流れがあまりにも切なすぎて。もう少しそれぞれみんなが素直になっていたら、違う結果になっていたんだろうなって思いました。だから、あの作品は演じていて、少し胸が痛むような感覚がありました。」

――北さんは切ない役も結構多いですよね。

「そうですね。『コールドケース』(WOWOW)とかでも殺されているので、結構切ない役が多いです」

個性的な役柄も多く、大河ドラマ『どうする家康』では家康の側室・お葉役。気がきく働き者というだけでなく、突進してくるイノシシをナタで仕留めて捌(さば)く、強くて頼もしい女性。家康との間に女児をもうけるが、好きな人ができたと伝える。

――凛々しくてカッコいいと話題になりました。極めつきはイノシシですよね。

「そうですね。みんなに言われます(笑)。『イノシシを倒して捌いていたね』って(笑)。お葉はお美代のことが好きで、側室の務めを終わりにしてほしいと願い出るのですが、大河ドラマでLGBTQを取り入れるというのがすごく新鮮でした」

――撮影はいかがでした?

「とても楽しかったです。本当に監督のおかげだと思っています。お葉というキャラクターは、自分の中では女子高にいるカッコいい女の子をイメージしていたのですが、ロボットのようにカクカク動くというのは監督のこだわられたところだったんです。

あと、あのお葉は、男性が苦手だというところで初めて感情が見える。そこの落差みたいなものを監督がすごく大事に丁寧に考えて作ってくださったので、感謝しています」

――家康に「殿に触れられるたびに吐きそうに」と告げるシーンは驚きでした。

「そうですよね。それを言われた殿はショックですよね。そこまで嫌われていたのかって(笑)。よく頑張って一児産んだなあって思いました」

©2023「春画先生」製作委員会

※映画『春画先生』
公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:塩田明彦
出演:内野聖陽 北香那 柄本佑 白川和子 安達祐実

◆いつかセンシティブなシーンを演じるときが…

ヒロインを演じた映画『春画先生』が現在公開中。北さんが演じたのは、春画の魅力に取りつかれた変わり者の研究者、“春画先生”こと芳賀一郎(内野聖陽)に弟子入りする春野弓子(北香那)。春画鑑賞を学び、その奥深い魅力を知っていくうちに芳賀に恋心を抱くようになる。

――『春画先生』に出演されることになったのは?

「オーディションです。初めて脚本を読んだときはちょっとわからなかったのですが、もう1回読んだらどんどんおもしろくなってきて。読めば読むほど、芳賀のセリフが最後に繋がっているんだなって思ったら、どんどん笑えてきて(笑)。

3、4回目ぐらいで、これはコメディーだなと気づいたら、弓子というキャラクターがものすごく魅力的に見えてきて、『この役を演じたい!』と思ったんです。それと、私は塩田監督が大好きなので、これは絶対にやりたいと思いました。

弓子のキャラクターが自分ととても似ているなと感じたんです。真っすぐで、自分の幸せに一直線に突き進んでいく、なりふり構わないみたいな。そこがすごく美しいなと思ったのですが、大人になるにつれてそういうことって減っていくじゃないですか。なんとなく距離を計ったり、自分がこう言ったらどうかとか、いろんなことを考えてしまう。『弓子という女性はすごく美しくて、少女っぽくて尊いな』と思いました」

――オーディションは何度もあったのですか?

「二次までありました。『色々センシティブなシーンがあるけど、大丈夫ですか』と聞かれたのですが、いつかこういうときが来ると思っていましたし、やるんだったら自分がやりたい作品でやりたいと思っていたんですよね。

その日のうちに『合格』と連絡をいただきました。私は映画の経験があまりなかったのですが、塩田監督の映画でヒロインをやらせていただけることが、すごくうれしかったです」

――相手役が内野聖陽さんと柄本佑さんで。

「はい。撮影前からキャストの皆さんと共演させていただけるのを、とても楽しみにしていました」

――覚醒してからの弓子さんがすごかったですね。一途で清純なイメージから激変して。

「おもしろいですよね(笑)、本当に。『春画先生』をやるにあたって、いろんな春画を目の当たりにして、見えない部分、すごく強調されて映っている部分じゃないところで答えが見えてくるというか。この2人の関係性が見えてくるおもしろさというのがあって、それがすごく印象的でした」

©2023「春画先生」製作委員会

――内野さんは本当に演じる役柄の幅が広いですね。春画先生のキャラも超個性的です。

「そうですよね。芳賀は一見気難しそうに見えるけれど、少年のようなところもあって。愛らしくて、可愛らしいところがまたギャップがありますよね。

撮影に入る前にリハーサルをしたのですが、内野さんの役への集中力や丁寧さを目の当たりにして、圧倒されました。撮影でも監督からの要望に1ミリ単位で応えている内野さんの姿勢に触れて、私も追いついていかなければと必死でした。ですが、考えれば考える分だけ役に生きるということを学びましたし、内野さんから色々アドバイスをいただいて勉強になりました」

――その内野さんを鞭で打っていましたね。

「はい。リハーサルを繰り返した後、内野さんが『思いっきり打って』とおっしゃったので、遠慮なく打たせていただきました(笑)。あれは馬用の鞭なのですが、痛かったと思います。

印象的なシーンはきっと、あの鞭を打つシーンだと思いますが、私の中での『春画先生』は純愛なんですよね。こんなに真っすぐで純粋で人のことを思って、自分を変えることができるんだって」

――登場人物みんなが結構不思議なキャラですが、ちゃんと調和が取れているというか。

「全員変ですよね(笑)。単体で見たら十分変な人たちですけど、組み合わさると何かイリュージョンが起きているような感じがおもしろくて(笑)。でも、現実になくもないんじゃないかなって考えたりとかして楽しかったです」

――出来上がった作品をご覧になっていかがでした?

「弓子という役は、普段自分が意識している芝居のやり方と真逆だったんです。普段は、いかに自然にしゃべるかということを自分の中で意識しているのですが、塩田監督から『意識的に表情を作って、はっきり発声して。だけど自然な芝居をしてほしい』という要望があったので、そこの壁を越えるのがすごく難しかったです。

映像で見たときに違和感にならないか自分の中ですごく不安でしたが、監督に委(ゆだ)ねて演じていきました。完成した作品を見て、おもしろくて笑っちゃいました(笑)。

私の中で『春画先生』は本当に得たものが多かったです。初めて挑戦することもありましたが、楽しみながらのびのびと弓子を演じることができましたし、自信もつきました。とても感謝しています。

映画には魅了してしまうほど美しい春画が出てきます。本当におもしろい偏愛コメディー映画だと思いますので、ぜひ弓子と一緒にこの世界にのめり込んで覚醒していただけたらうれしいです」

真っすぐな眼差しが『春画先生』の弓子と重なる。今は仕事に行っているときが一番楽しいと話す北さん。間違いなく代表作となる作品にも出会い、さらなる活躍に期待が高まる。(津島令子)