アラフォー世代の難題“後輩への接し方”。それでも「無関心」は選びたくない<アナコラム・矢島悠子>

テレ朝POST

<テレビ朝日・矢島悠子アナウンサーコラム>

先輩や上司の言葉をなんでもかんでも「マウント」と受け取る人が多いから、若い人には何にも言えないし、その人が成長してもしなくても自分には関係ない――。

アラフォーとなった同世代の仲間と話すと、よくこんなぼやきが聞かれるようになりました。

わかります! 若いスタッフや同僚と話す時などは、わたしも「どう伝えようかなぁ」と悩みますし、気を配ります。うまくいかないこともしばしばです。

とはいえ、あきらめムードにはなっていないのがわたしの現状です。

自分が誰かにしてもらって良かったことはきちんと受け継いで、ちょっと違った形でも良かったなと思うことは、自分なりのバージョンアップをして伝えていく。

普段はそんなことをモットーにしてやっています。元来お節介な性格なので、「無関心」は今のところ選択肢にありません。

というのも、事実、わたしは先輩アナウンサーにかけてもらったことばに救われたことが何度もあります。

そのことばは、ポトンと種をまいたようにわたしのこころに落ちて芽が出て育ち、今までに何度も何度も思い返しては、ありがたかったな、と思い返すのです。

わかりやすい「金言!」ということばではないけれど、悩めるわたしにはとても刺さりました。今回はそんなことばをちょっとおすそ分け…。

◆「泣いていい、そこで立ち止まって泣け」

新人アナウンサーのわたしはとにかく泣き虫でした。

ビビりで未熟なわたしは、日々至らぬことばかりで、指導してもらってもすぐ弱音をはきました。

めそめそしてるわりには理屈っぽかったし、先輩たちは、育てるのにとっても苦労したと思います。

そんなわたしを見捨てることなく、声をかけてくれたある先輩の一言。

「後ろを向いて走って逃げないで、まずはそこで立ち止まって泣こう。泣いていいから。逃げずに、その場で立ち止まって見よう。よく見たら、相手はそんな強敵ではないかもしれないよ。」

何でもすぐに「無理!」「出来ない~!」と逃げ出していたわたしには驚くべき一言でした。

まず、泣いていいと言ってもらえたのが心的負担を恐ろしく減らしてくれました。こんなこと初めて言われました。

こういう心理状態の時って、泣いちゃいけないのはもちろんわかっているし、なんでこんなに泣いているかも、もはやわからない状態です。

泣くなと言われたら、自分の不甲斐なさに余計泣けてきてしまう。そんなわたしにその先輩は、泣いたっていいと言ってくれたのでした。

漠然とした不安や恐怖、諦めで投げ出そうとしているわたしにきちんと敵を見定めることを教えてくれた。

悩んでいることって、よく考えたら、大したことじゃないかもしれないよ、ということですね。

この一言で、涙がすっとおさまり、妙に腑に落ちた感覚を鮮明に覚えています。

それこそ最初は泣きながらではあったけど、何に怯え、何に悩んでいるのかをはっきりさせようと思えた…本当に、一歩成長させてくれたことばでした。

わたしにファイティングポーズを教えてくれたことばです。

◆「重いけど、すべて持っていけ」

新人研修の時には、先輩たちのかけてくれることばが、高次元過ぎて理解出来ないことも多々あります。まだ現場に出たこともないのですから、それは仕方ありません。

初めのうちはわからない…それも承知で、先輩たちは指導してくれていたんだなぁということに、わたしもだいぶ先輩になってから気づいたのでした。

新人の次元に合わせすぎては成長出来ない。いつかわかることもあるだろう、と祈り、期待しながら声をかけることもあるんですね。

言われていることがわからなくて、きょとんとしていたわたしに、大ベテランの先輩は、笑いながら言いました。

「今は、わからないよなあ(笑)。研修はそんなことばかりだろう? でも、今は取捨選択をせずにいきなさい。重たいだろうけど、全部背負って持っていけ。突然わかる日がくるから。」

正直その時は、何を言っているのかわからなかった。

でも、本当に来たんですよ!

半年、1年、3年、はたまた10年経って気づいたこともありました。

特に、衝撃的だったのは、入社して10年近くが経った時、ある事故を取材したときのことでした。

事故現場に駆け付け、まだ撤去されていない凄惨な現場を生中継でリポートしなければなりませんでした。

現場についてわずか10分たらずで中継をつなぐと言われ、頭は真っ白! やったことのないことばかりで、何からすべきかもわからなかった。

でも周りのスタッフから見れば10年目近い、そこそこ経験を積んだアナウンサー。

どうしよう…。スタッフに相談したいけれど、10分後に中継ということは、みんな準備で大忙しでそれどころではありませんでした。

そんな時に、新人時代に教わった「情景描写」の授業をふっと思い出したのでした。

見えているものを正確に、忠実に描写していけばいい。易しいことばで、その場にいる人にしか見えないものを伝える。

テレビでは伝えられないにおいや風はどうか。画面に映っているもの以外で、聞いた話など、伝えられることはないか。

大先輩が、捨てずに持っていけと言っていたのは、まさにこの日のことを指していたんじゃないかと思いました。

実際必要になった場所でことばを思い返すと自分のためだけに言ってくれたことばのように感じ、「これはこのことだな。」と答え合わせをしているようにひとつずつがはまっていきました。

結果、生中継も大きなトラブルもなく伝えることが出来たのでした。

ちなみに、後日その「情景描写」の授業をしてくれた先輩に会った時に、こんなことがあったと話しました。

遅くなってしまったけど、ようやくわかりました、ありがとうございました、と伝えました。

先輩は、そういうことってあるよね~と共感してくれて、覚えていてくれてうれしかったとも言ってくれました。

「すべて持っていけ」と教えてくれた大先輩は、その時すでに退職された後だったのですが、本当にいいことを教えてもらったなと今でも感謝しています。

後輩たちにも機会があると、この話はよくするのですが、みんな当時のわたしのようなきょとんとした顔。それが微笑ましいです。

でもミニマリズムの時代だからなぁ。全部持って行ってくれるかな…(笑)。

毎日の何気ない会話の中で、ここには書ききれないほどたくさんの、ことばの宝物を授けてもらっていたんだなぁと改めてありがたく思うと同時に、わたし自身は、自分の後輩や出会う人たちに、こういったタイムレスに、こころを暖めてくれることばをかけられているのだろうかいつも不安です。

でもやっぱり、わたしはまだ「無関心」は選びたくないなぁと思っています。

だってアナウンス部はことばの部署。

その一員である以上、ことばで誰かを暖めたいじゃないですか!

わたしがそうであったように、ことばで心を暖めてもらったことがある人は、今度は必ずそれを誰かにしてあげたいと思うはずだから。

先輩でも、後輩でもある中堅世代の皆さん、いっしょに悩んで、あきらめずに、まだまだもがきましょう!

<文/矢島悠子、撮影/本間智恵

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