浅香航大さんと木野花さんが出演するHuluオリジナル『THE LIMIT』の最終話(第6話)を含む全話がHuluで独占配信中。
サスペンス、コメディ、ラブストーリーなど、多彩なジャンルにわたる“半径3mの人間ドラマ”がテーマの本作。限定された空間や状況にて、リアルタイムに進行するストーリーを1話完結のオムニバス形式で紡いでいきます。
浅香さんと木野さんが出演するのは最終話「高速夜行バス」です。鎌田健吾(浅香)が乗り込んだ高速バスには、園田苑子(木野)ただ一人が乗っていました。ひょんなことから彼女と会話をするようになったものの、どこか怪しくて……。
今回、浅香さんに、ドラマのことはもちろん、木野さんとの共演、そして本作の肝となる一人語りシーンについて、たっぷり語っていただきました。

――“半径3mの人間ドラマ”という今回のテーマを聞いて、どんなことを感じましたか?
ワンシチュエーションで出演者が二人っていうのは、意外とありそうでないなって。役者の技量も問われるなと思った作品にチャレンジできるのは嬉しかったですし、プラス挑戦状を叩きつけられている感じがして、面白いなと思いました。
――Huluだからこそできるチャレンジングなテーマですよね。
いま、ワンシチュエーションで二人の会話劇って、なかなか怖くて作れないですよね。お相手が大先輩の木野さんでしたし、圧倒的な台詞量もあったので、プレッシャーもありましたけど、すごく脚本が面白かったので、ぜひやりたいって思いました。
――脚本を読んで、どんなことを思われましたか?
健吾が過去に回帰しながら長台詞を喋るシーンがあるんですけど、普通のドラマを作るとしたら、僕の声がベースになって(別撮りで)過去の回想シーンが入るわけじゃないですか。それを台詞だけで見せる……っていう。もちろん、そんなことやったことないし(笑)、それを書いて作るっていうのも挑戦ですよね。それを役者だけでやるって聞いて「よしっ! やらなきゃな」って感じがしました。
――回想シーンのない一人語りは、心理描写や情景が思い浮かぶよう誘導しなければなりません。何か工夫・意識したことはありますか?
想像力の強さで勝負するしかないなって思いました。“あれはここにあって、自分はここにいて”と、ストーリーを丁寧に決めて、綿密に作っていったんですけど、そのプランは監督とも一致していましたね。監督の中にも細かいディテールがあって、本読みのときに聞かせてもらいつつ、丁寧に作ったイメージを思い浮かべながら喋りました。
――ドラマを拝見しましたが、確かにはっきりと思い浮かびました。
そういうふうになってくれればいいなって思います。きっと、いろんな形が思い浮かぶんだとは思うんですけど、あとはお客さん(視聴者)に委ねるしかないですからね。

――何かを諦めているような印象の健吾ですが、彼についてはどんなことを思いましたか?
彼はある思いを持っていて、ある種、現代人の叫びというか、象徴的な役どころだと思いました。心のしこりを(苑子に)喋るシーンがありますけど、健吾も話したかったんでしょうね。
普段でも、初めて会う人だからこそ喋れることってあると思うんです。初対面なのに、やけに気が合って「このあと一杯いきません?」って言いたいくらいだけど、“いや、それは違うな”って(笑)。そういう感覚に近いというか。
――共演された木野さんには、どんな印象を持たれましたか?
パワフルな方でしたね。本読みのとき木野さんが、僕の会話の中で出てくる(キーワードや登場するものに対しての)ディテールにこだわって質問してくるんですよ。そのおかげで僕も救われましたし、監督やスタッフさんとも共有できましたし、作品を作るって“こういうことなんだな”って思いました。木野さんご自身も演出されたりしますし、ある種、舞台的なお芝居でもあるので、勉強になりました。
――木野さんの演技を拝見していると、ちょっとした仕草が、どこにでもいるような女性に見えました。浅香さんはどのようなことを感じられましたか?
木野さんご自身が持っているものもありますし、役でもそうですけど、すごくチャーミング。人柄、暖かさ、ちょっとしたおふくろ感を感じました。
――ふだん私たちの生活の中にも、半径3mのやりとりは多く行われています。浅香さんが思いつく中で、「こんなシチュエーションの3mドラマを作ってみたい」というものはありますか?
僕が作るなら逆説でいきたいですかね……。本当はいくらでも動けるのに動かない。何なら閉鎖的な空間ではなくて、すごく開放的な場所で、何でもできるのにジッとしているっていう。でも、なぜ動かないのか、その理由がほしいですよね。じっくり考えたいです(笑)。

(取材・文・撮影:浜瀬将樹)