連城三紀彦氏の名作「隠れ菊」が原作の大人の濃厚ラブ・サスペンス『あなたには渡さない』(テレビ朝日系、11月10日スタート、毎週土曜23:15~)。
料亭「花ずみ」の御曹司で板長を務める旬平(萩原聖人)と結婚し、20年家庭を守ってきた通子(木村佳乃)。2人の子どもにも恵まれ平穏な日々を送っていたが、ある日突然、通子のもとに“旬平の愛人”と名乗る矢萩多衣(水野美紀)がやってくる。「ご主人をいただきにまいりました」という多衣の衝撃的な発言によって、女同士の強烈なバトルが始まる。
そんな修羅場のきっかけを作った通子の夫・旬平を演じているのが俳優・萩原聖人さんだ。濃厚な人間ドラマが展開される愛憎劇に「平成最後に昭和の匂いのするドラマを楽しんでいただければ」と語った萩原さんが、本作の見どころについて大いに語った。
――台本を読んで、旬平についてどんな印象を持ちましたか?
料理に情熱を傾けている男で、純粋でピュア。ズルいことがうまくできない不器用な人間なのですが、だからこそ妻に対して、普通なら言えないようなことまで言ってしまう……。許されないようなこともたくさんしてしまう男という印象ですね。
――無骨な昭和な男という印象がありますが、確かに信じられないような発言もしてしまいます。
「愛人も妻もどっちも大事」みたいなことも妻に言っちゃいますからね(笑)。普通なら考えられない発言ですよね。でも男って「自分は男らしい人間でありたい」という願望のもと生きているものだけれど、実際はそんなに男らしいことなんてできないというのが現実だと思う。そういう意味で、旬平みたいな生き方を否定することはできないんですよね。
――第1話で、愛人との夜の生活を妻に話し「男が家庭を捨てるのには十分な理由だろう」というところは衝撃的でした。
「それ嫁に言うか!」ってセリフですよね(笑)。でもすべてにおいて旬平は受身なんです。自分が原因で起こっていることなのですが、前線にはいない。ただひたすら寡黙な男なんですよね。
――思ったことをグッと飲み込みつつ、所々でビックリするような発言をする。すごく面白い役柄のように感じられます。
この作品って「ここまで言っちゃうの?」という部分と「そこはもっと言わないと!」という部分に視聴者がヤキモキするのが楽しみの一つなのかなと思うんです。時には“ストレス”に、時には“ストレス解消”になりながらはまっていくのかなと……。
――旬平という男性は演じていて楽しいですか?
僕は旬平という男が結構好きなので、彼の考えることや言うことは理解できるし、楽しんで演じています。
――木村佳乃さんとの夫婦関係はなかなかシリアスですが、現場はとても和やかだと聞きました。
もう木村さんは素敵過ぎます。僕は、彼女は人間じゃないと思っているんです(笑)。
――人間じゃない?
宇宙人なのか妖精なのか、はたまた天使なのかわかりませんが、きっとなにかとのハイブリッドなんですよ。初めて共演してから長い時間が経ちますが、あれだけ明るく元気で、それでいてお芝居も素晴らしい女優さんは出会ったことないですね。スペシャルな方です。あんな人が家に帰ってきたらきっと楽しいだろうなと思いますね。
――そこまで明るい方だと、今回のシビアな関係性は難しかったのではないですか?
難しさはありますね。でも愛人がいながらも、ベースとして旬平は通子を愛しているので、その部分は素直に演じています。
――試写会イベントでは、麻雀の試合で負けたあとでも、現場に行くと木村さんが癒しになったと話されていました。
そうなんです。落ち込んで次の日、現場に行っても「おはようございます!」という木村さんの声を聞くと「よし、頑張ろう!」という気持ちになるんです。助けられています。でも僕だけじゃなく(旬平の弟子の板前・矢場俊介役の)青柳(翔)くんや(女将代理・堀口八重役の)荻野目慶子さんもみんな癒されています。
――水野美紀さんとの共演はいかがですか?
彼女とも過去に何度も共演しているのですが、木村さんとは全然違うタイプですね。でもすごくニュートラルな方なので、安心感があります。
――息子・娘役の山本直寛さんや井本彩花さんはいかがですか?アドバイスなどされたりするのですか?
いやいや、そんなことはしませんよ。そんなことされたら迷惑でしょ(笑)。演技に関しては監督が話をすることだし、僕は普通に「いま中学生なんだ?」みたいな会話だけです。もちろん、なにか聞かれればちゃんと答えますけどね。
――ナレーションもすごく個性的ですね。
あれはすごいですね。このドラマをどのように見たらいいか一発でわかるようなインパクトがありますよね(笑)。
――萩原さんのオススメの作品の見方を教えてください。
個性的なキャラクターがたくさん出てきますが、誰かに感情移入するというよりは、客観的に4人を同時進行で見るのが面白いかもしれません。また「こんなこと言わないでしょ」とか「こんな展開ある?」みたいな突っ込みを入れるのではなく、面白いと思ったところは素直な気持ちで笑ってもらえたらいいかもしれません。回を重ねるごとに、次々と通子にピンチが降りかかってくるので、それをどうやって乗り越えるのか、平成の最後に昭和の匂いがするドラマを存分に楽しんで欲しいです。
(取材・文:磯部正和)