阿部寛「加賀恭一郎は大切な役」『新参者』シリーズがついに完結

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主人公・加賀恭一郎役を演じた阿部寛
主人公・加賀恭一郎役を演じた阿部寛

阿部寛さんを主演に迎え、2018年に公開された映画『祈りの幕が下りる時』のDVD&Blu-rayが8月2日に発売。同映画は、2010年4月にTBS系にて連続ドラマとしてスタートした東野圭吾原作の『新参者』シリーズの完結作として上映された。

阿部さん演じる日本橋署に異動してきた刑事・加賀恭一郎が、謎に包まれた殺人事件の真犯人を探すというミステリー要素と、事件の裏に隠された人の心の謎を解くというヒューマンドラマ要素がこれまでにない“泣けるミステリー”として人気を博した同シリーズは、ドラマに加え、2本のスペシャルドラマ『赤い指』『眠りの森』、そして映画『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』を経て、今回の完結作を迎えた。本作で、事件の鍵を握る美しき舞台演出家・浅居博美を演じるのは松嶋菜々子さん。そして『半沢直樹』『下町ロケット』『私は貝になりたい』などを手掛けた福澤克雄さんが監督を務めた。

テレビドガッチでは、長年に渡り主人公の加賀を演じてきた阿部さんにインタビュー。役作りや、『新参者』シリーズへの思い、初共演となる松嶋さんの印象などについて、たっぷり語って頂いた。

【ついに、シリーズ完結】

――シリーズ完結作を迎え、あらためてどんな心境ですか?

日曜劇場『新参者』(TBS系、2010年4月クール)で日曜劇場の初主演をやらせていただいてから8年。刑事という役もほぼ初めてで、それまではひとりで突っ走るような役どころが多かったんですが、加賀恭一郎というのはむしろ動かない刑事。相手と向き合って、自分の中に落とし込んでいく作業が必要でした。「刑事」というのは背中で芝居しているような深い人間で、相手の心の動きを読み、自分の演技を組み立てていくこれまでとは違ったアプローチでした。加賀という人間味あふれる役に出会え、その役を長い間演じられたことを嬉しく思っていますし、加賀を通して僕自身も多くのことを学べたと思っています。

――寂しさなどはありますか?

終わったという感じがしなくて(笑)。寂しいというよりも、良い終わり方ができたな、と思っています。福澤監督が、あのシリーズをきっちりまとめてくれたという満足感のほうが大きいです。

【加賀恭一郎という男について】

――当時、加賀を引き受けようと思った理由は?

ドラマ『新参者』の役を頂いた時、45歳位でした。そろそろ本格的な刑事役に挑んでみたいと思っていたタイミングでした。さらに東野圭吾さんが描く加賀恭一郎はすごく魅力的な役柄だったので良い機会だなと思いやることにしました。

――役作りにおいて、直接刑事の方にお話を伺うなどのリサーチはされましたか?

加賀に関してはしていません。色んな刑事ドラマを見るなど、一部参考にはしましたが、いままでの刑事ドラマとはちがうので、自分なりに作っていきました。加賀という男は、人の心をちゃんとくみ取って静めていくという、深みのある役。最初は手探り状態でやりながら、徐々に馴染んできたという感じです。

――特に意識されたところは?

“刑事の怖さ”を出したい、というのがテーマでした。幼い頃、近所で事件があったらしく、両親が不在の時に刑事が「こういう人、見たか?」って聞き込み捜査に来たんです。玄関先で色々聞かれた時、“優しいけれど、本当に怖かった。ものすごく怖い”って思って(笑)。4~5人の刑事がいる中で、ひとりの刑事しか質問はしてこないんですが、そんな印象を加賀の役作りにも反映させました。普通にしゃべっていながら色んなことを聞き出していくし、核心については決して表情に出さない……。

――何年も同じ役を演じ続けることはまれだと思いますが、阿部さんにとって加賀という役はどういう存在に?

同じ役を長くやっていると、そのときの自分のバロメーターが計れるなと思いました。調子が良いときもあれば悪いときもある。この8年間どこかで加賀に支えられていた様な気がしています。最初は、「加賀を演じることができるのか?」と思われた視聴者の方もいらっしゃったかもしれませんし、僕にとっても一つ挑戦でしたが、8年間演じたことで加賀の感じ方・考え方が僕自身の精神になったみたいな感じですごく大事な役です。

――ドラマと映画では、スケールも違うと思いますが、撮影において変化はありましたか?

福澤監督とは、ドラマ『下町ロケット』でご一緒しましたが、映画では初めてでした。撮影自体は、そこまで変わったところは感じませんでしたが、この完結作を、福澤さんに撮ってもらったらどうなるだろうという興味があったので、すべてお任せしました。これほど長いシリーズを、最後に自分がまとめなければいけないというのは難しかったと思いますよ。最初「刑事物は苦手なんだよ」っておっしゃっていましたから(笑)。

――演出の面ではいかがですか?

福澤さんが、原作を読んで「これは“マザコン”ってことにしましょう」っておっしゃって(笑)。きっと福澤さんだから、独自の世界観がおありだと思いお任せしました。捜査会議のシーンからテンポがあがり、すごくドキドキする展開ではじまっていくんですが、あれは福澤さんならではの演出だと思います。(観客を)飽きさせることなくラストまで引っ張り、その上に泣ける要素や感動があって……。これまでのシリーズとはまた違う魅力が出ていました。

――今回は、加賀の内面や過去も密接に絡むストーリー展開だったわけですが、演じる上でどんな工夫を?

“親父との確執”というのは、加賀の中で一番大事なことで、澱のようなものだからむしろ何も考えなかったです。ある種、客観視しながら、自分の過去や親子関係が片付いていくという感覚で臨みました。8年間、加賀を演じてきたから自然にそういう気持ちになっていたのかもしれません。

――今回は地方ロケも。印象に残っているシーンはありますか?

琵琶湖での撮影で、溝端(淳平)君が演じる松宮脩平の台詞で「何もかも飲み込んでしまうような」という表現があるのですが、大きな湖を見たとき、その台詞と同じ印象を受け不思議な感じがしたのを強烈に覚えています。琵琶湖の周辺で捜査をして行くのですが、福澤さんが選んだロケ地はこの作品の深みを際立たせ、何もかも飲み込んでいくような……魔の世界が見事に表現されていると思いました。

――DVD&Blu-rayが発売になりましたが、今だから言える事、このシーンは見てもらいたい、という箇所はありますか?

僕は出演していない箇所ですが、トンネルのシーンです。原作を読んだときにも、もし映像化するなら非常にロケの力が必要になるな、と思ったんです。派手な動きがあるわけではないし、登場人物もそれほど多くないので、どうやってつくっていくのか? と。すると、福澤さんの“ロケの力”で、あの地味なトンネルの中がとても印象深いシーンになりました。また、父親と娘の一連の流れが壮絶で、娘の博美が背負った運命の重さがしっかり表現されているので、あのシーンはもう一度僕も見直したいです。

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