『べっぴんさん』土村芳「きみちゃんの良いところを吸収して成長したい」

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NHK朝の連続テレビドラマ小説『べっぴんさん』で村田君枝役を好演し、注目を浴びている土村芳(つちむら かほ)さん。主人公・すみれ(芳根京子)の女学校時代の友人で、子供服店・キアリス創設メンバーのひとりだ。そのキアリスは昭和34年に10周年を迎え、全国的に知れ渡る企業に成長。物語は新たなステージに突入し、ますます目が離せない展開となっている。

生真面目で潔癖な性格で、体が弱いが芯の強さを持ち合わせている女性“きみちゃん”(君枝)を、丁寧かつ繊細に演じる土村さん。そんな彼女の素顔に迫るべく、インタビューを敢行。『べっぴんさん』出演に関するエピソードや、女優を志して過ごした学生時代、これまでの代表作品などについて、たっぷり語っていただいた。

――現在出演中の『べっぴんさん』も1月から新キャストが加わり新たな展開を迎えましたが、この作品への参加が決まった当初はどんなお気持ちでしたか?

『べっぴんさん』への出演は、私の中でとても大きなものだと思います。出演が決まったというお知らせをいただいた時は、この作品に参加できるということが純粋に嬉しかったです。あまり実感していなかっただけかもしれませんが、“浮かれる感じ”というのはなくて……。ホッとしたあとは、「頑張らなきゃ」という気持ちに切り替わっていたので、割と冷静に受け止めていたことを覚えています。

――村田君枝という役と向き合っていかがでしたか?

きみちゃんは、肉体的な弱さと、それを補う精神的な強さのバランスをとりながらずっと生きてきた人物なので、自分でも「すごい女性だな」と思いながら演じてます。ドラマが終わる頃には、私もきみちゃんの良いところを吸収して、人として成長できたらいいな、と思います。

――初めての連続ドラマレギュラー作品となりますが、現場を振り返っていかがですか?

これまでの時間の流れの速さに自分でも驚いています。放送が始まる前までは、「1日1日をちゃんと踏ん張ってやっていこう」と思っていましたが、あっという間にこんなところまでお話も進んで……。今は、毎日「少しでもきみちゃんの魅力が伝わっていたらいいな」と思いながら頑張っています。

――そんな土村さんですが、女優を目指そうと思ったきっかけは?

「女優になりたい」という気持ちが芽生えたのは、高校から大学へ行く時です。卒業した後の未来を思い描いて大学を決めなきゃなと思った時に、自分が本当にやりたいことはなんだろうと考え……。それまでの人生をさかのぼっていくと、小さい頃にやっていた子供劇団での活動を思い出しました。おそらく心の片隅にはずっと“女優”への気持ちがあったと思うのですが、これが“本当にやりたいこと”で、“叶えるチャンスをつかむきっかけ”だとしたら、このタイミングなのでは? と思い、京都造形芸術大学を受験することを決めました。

――演劇を学ぶにあたり沢山選択肢がある中で、京都造形芸術大学を選ばれたポイントは?

受験方法が凄く面白くて。芸術大学なので、デッサンなどの試験もあるのかな? と思っていたのですが、私が受けたいと思った映画学科の俳優コースというのは、オーディションのような受験方法でした。自分の身体一つで勝負する受験方法だったので、「これは受けてみたいな」と思い、これでダメだったら他には考えていませんでした。

――受験ではどのようなことをなさったのですか?

俳優コースの学生さんたちが受けている授業を受講したり、殺陣の体験をさせていただいたり、受験生同士でグループ分けをして、実際にお芝居をしたりしました。2日間にわたる試験でしたが、ワークショップやオーディションのような感じでとても楽しかったです。

――在学中の授業で思い出に残っていることは?

映画学科に年に一度、プロの方と学生が共同で作品を撮るという授業があり、『弥勒-MIROKU-』という作品を作らせていただきました。学生ではありますが、それぞれの役割を全力で楽しみながら、同じ方向に向かって進んでいる感覚がとても楽しかったです。

――映画『弥勒-MIROKU-』は稲垣足穂の自伝的小説を原作に、大学の教授でもある林海象さんが監督を務め、永瀬正敏さんや佐野史郎さんという豪華メンバーが出演されている作品ですが、とても貴重な経験になったのでは?

はい。このように大きな作品を、全国公開することを目指して作ることに参加する機会はなかなかありませんし、学生作品からは離れたところにある存在なので、卒業後に(映画にかかわる)仕事をしていくことを考えると、いちはやく現場の感じや、映画作りの現場を味わえるというのは、とても良い経験になりましたし、学生なので経験は浅いですが「良い物を作ろう」という気持ちがあったと思います。

――永瀬さん演じる主人公・江美留(えみる)の、少年時代の役でW主演を見事に果たした土村さんですが、永瀬さんの印象は?

初めての主演でしたので、すごく嬉しかったです。永瀬さんにお会いするまでは、すごく緊張していましたが、はじめてお会いした時に、「お! 江美留」と声をかけてくださり、永瀬さんのほうから“緊張の壁”を取り払ってくれ、学生に寄り添ってくださる本当に素敵な方でした。

――土村さんは、盛岡のご出身ですが、大学で初めての一人暮らしを経験?

はい。大学生ってすごく自由な存在ですよね。学生だけど高校生とはちがうし、大人だけど社会には出ていない……。すごく自由な期間を京都で過ごせたというのは贅沢なことですね。

――京都についてはどんな印象ですか?

暮らしやすい町だと思いますし、四季の変化をすごく感じられる場所なので大好きな場所です。学生時代は、ロードバイクタイプの自転車で色んなところへ行きましたね。自転車を買った日に、友達と夜中に左京区から嵐山まで行ってみたり(笑)。そんな事ばかりしていて、とても楽しかった思い出です。

――きみちゃんの役柄のせいか、アウトドアのイメージが浮かばず……驚きです。学生生活で得た一番の宝物は?

そうですか?(笑) 今はあまりできませんが、当時は自転車でどこへでも行っていました。高校を卒業して、大学へは行かず、東京に出る道もあったかもしれませんが、大学に入ったことによって、なかなか出会うことのできない方たちと沢山出会うことが出来ましたし、そこでの繋がりや、関係があったからこそ、今の私がいるので、どれが一番かというのは難しいですが……、そこで過ごした4年間のすべてです。

――卒業後に出演された舞台『母に欲す』(2014年)では、池松壮亮さん演じる菅原隆司の彼女・鈴木里美役を好演。『愛の渦』の三浦大輔さんが「息子にとっての母親」をテーマに挑んだ話題作でした。こちらはオーディションを受けられて決まった役ですか?

そうです。オーディションの時から三浦さんが演出をして下さったことを覚えています。これまで経験したオーディションだと「次ちょっとこうやってみて」というような要望は時々ありましたが、お芝居に対しての演出が入ったのは初めてのことだったので、すごく新鮮な気持ちで受けたオーディションでした。お稽古中も、人と人との間にピーンと張っている緊張の糸をすごく注意してみていらっしゃる方で、それが切れたら、すぐ気がつかれますし、空気感や話していること、場に生まれている空気をすごく大事にされている方だな、という印象です。

――映像作品とはまた違う感覚だと思いますが、舞台ならではと思うところは?

まだそんなに舞台経験はありませんが、舞台はその場ですぐお客さんのリアクションが返ってきて、伝わります。それが全体の空気になる場所なので、直で感じられるのは舞台ならではですよね。毎日演じていても、反応が全然違いますし、演じる側も違いますから、本当に“生もの”だと思いました。

――母を亡くし、残された菅原一家(父/浩二:田口トモロヲ・長男/裕一:峯田和伸・次男/隆司:池松)の暮らしに、ある日父が、新しい母親として智子(片岡礼子)という女性を家に連れてきたことで、男3人の家庭に静かなさざ波が立ち始めるという物語。次男の彼女・里美役を通して、この物語をどのように感じていましたか?

この物語に一番共感するのは男性だと思いますし、もしかしたら男性なら誰しも抱いたことがある部分を丸裸にしたのが、この物語だと思います。きっと舞台をご覧になった方は、ドキっとするところも沢山あったと思います。私の演じた里美という役は、隆司たちの変化とかを外から見て感じていた存在だと思うので、割と観客の目線に近かったのではないでしょうか。里美のようなキャラクターがいたから、そこの異様さが引き立ったのかな、と思うので、その役割を一生懸命果たすことに必死だったのを覚えています。私自身も、大きな舞台が初めてのことだったので無我夢中でした。

――一番大変だったシーンは?

家を半分に切ったようなセットなのですが、1階のダイニングと2階の隆司部屋、その隣の裕一の部屋とで会話が交差するシーンがあるのですが、そこは技術的なものが必要でした。そのシーンに参加するメンバーで、普通の稽古が終わった後に、自主稽古をしたこともありました。

――この舞台の後、三浦さんが監督を務められている映画『何者』(2016年10月公開)にも出演されていますが、これはオファーが?

いえ、オーディションでした。2年ぶりだったので「お久しぶりです」というような会話や、オーディションの時の私の表情が良かったとおっしゃってくださり、嬉しかったです。撮影時は、すごく愛情を持ってワンシーンワンカットを大事に妥協せずに撮っていらっしゃるという印象で、少しでも期待にこたえられるようにと思って挑みました。

――女優をやるにあたり、影響をうけた作品はありますか?

もともと映画を観るのが好きなのですが、女優をやる上での影響というとどうでしょうか。小さい頃、家で留守番をしていることが多くて、実家にあった映画のビデオをよく観ていて、記憶に残っていますね。これが今、女優業に影響があるかはわかりませんが(笑)。 インディ―ジョーンズや、ターミネーター、007シリーズやジブリ作品などが置いてありましたね。子供の頃はジブリ作品が大好きで、特に『風の谷のナウシカ』は、何回も観ました。

――大人になった今、好きなジャンルなどはありますか?

わりと何でも観るタイプです。幅広く観るようにしている……というか(笑)。

――演じてみたいジャンルや役はありますか?

幅広い役ができたら女優としてすごくいいことだと思いますし、いろんな役をやる度に新しい自分の可能性や広がりをどんどん見つけていけると思うので、一番は「幅広くできたらいいな」ということですが、『べっぴんさん』のきみちゃんと正反対の役もできたら面白いかもしれませんね。

――最後にメッセージをお願いします!

『べっぴんさん』が終わるまでは、きみちゃんとして生きることを精いっぱいやりたいです。きみちゃんとして私の事を知っていただいた方たちに、あらためて「土村芳」として、いろんな面を観ていただく機会が増えるように頑張りたいと思います。