酒場詩人・吉田類が、酒場という聖地へ酒を求め、肴を求めさまよう番組『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS、毎週月曜21:00)。10月12日放送回では、東京・湯島にある居酒屋「玉善」を訪れた。
古い旅館のような外観の「玉善」の店内は、カウンター席はなく、奥にはテーブル席がたくさん並べられている。店の特徴は“相席”。一人客でもスタッフの促しで相席になるため、常連客は皆、自然と顔なじみとなる。先代女将は亡くなり、大将も数年前に引退。現在は二代目の息子とスタッフで、元気に切り盛りしている。
魚や鍋を中心に、刺身、日替わり煮物、炭焼、肉類とメニューは充実しており、味も確か。毎日河岸より仕入れた新鮮な魚貝類で、四季折々の一品を提供しているという。吉田は、まず瓶ビールで乾杯。まずは脂がのった戻りカツオの刺身を注文。
相席は「初めてのパターンです」という吉田だが、すぐに雰囲気に馴染む。他の常連客にカワハギの皮をもらったり、自分が注文した肴も分ける。この店の歴史なども教えてもらいながら、日本酒の杯を傾ける。
先代女将の味を受け継いだ、自家製の丸い形のさつま揚げや鶏ガラ出汁の効いた豆腐のスープなどは、長く定番の人気メニューとなっている。常連客は「何を食べても美味しい」と皆、笑顔だ。
吉田は「ここに入ると若返るような気がする、不思議なお店。味がおふくろの味で、全部、抵抗なくいただける。この温かみ、すごかったです。忘れられないですね」と、名残惜しそうに店を後にした。
本来、他人同士のはずが、酒を酌み交わすことで繋がる。昨今、男女の出会いの場としての名称が定着してしまった感がある“相席居酒屋”だが、これが本来の意味なのかもしれない。酒場を楽しみたい人のための、大人の社交場。