菅野美穂、女優歴31年目も「ドラマは学びの現場」大先輩・三田佳子の姿に感銘【連載PERSON】

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菅野美穂、女優歴31年目も「ドラマは学びの現場」大先輩・三田佳子の姿に感銘【連載PERSON】

人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系、毎週木曜21:00~)で主演を務める菅野美穂さんが登場します。

1992年、中学3年生の時に芸能界デビューを果たした菅野さん。出世作となった『イグアナの娘』(1996年/テレビ朝日)では、母から愛されない娘・青島リカを演じ、高い演技力が評価されました。『君の手がささやいている』(1997年/同局)では、生まれながらにして耳が全く聞こえない重度の聴覚障害を抱えている女性という難しい役柄を演じ、「エランドール賞新人賞」の第3回大賞を受賞。その後も、自身初の時代劇『大奥』(2003年、フジテレビ)、『ギルティ 悪魔と契約した女』(2010年、関西テレビ)など多くの作品で主演を務めてきました。

そんな菅野さんが24年ぶりにテレ朝の連ドラで主演を務める『ゆりあ先生の赤い糸』は、今年の「第27回手塚治虫文化賞」で頂点となる「マンガ大賞」に輝いた入江喜和の同名作が原作。突然目の前に現れた夫の“彼氏”“彼女”“隠し子”と奇妙な同居生活を開始!? 時にぶつかり合い、時に手を取り合い……みんなで意識不明状態となった夫の介護に勤しみながら、これまで想像もしなかった数奇な人生と血の繋がりを越えた“家族”の絆を編み上げていく新時代のホームドラマです。

夫の彼氏と彼女と共同生活を送る主婦という、かつて演じたことのない難役に挑む菅野さん。役作りについてや共演者の印象、また長く女優として活躍する中で大切にしている「役者としての軸」を聞きました。

鈴鹿央士松岡茉優のおかげで「自然とゆりあの気持ちになれた」

――演じる伊沢ゆりあの印象を聞かせてください。

すごく尊敬できる、男前な女性だと思いました。ふつうは、夫が違う人と付き合っていたり、別の女性との間に子供がいたりしたら、「許せない!」という感情になると思うのですが、ゆりあは夫の愛人の子供のオムツまで替えてあげるんですよ。本当、見上げた女性だなと思いました。

――そんなゆりあを演じてみていかがでしたか? 演じやすかった/難しかったでいうと……?

鈴鹿央士くん(夫の彼氏・箭内稟久役)、松岡茉優さん(夫の彼女・小山田みちる役)と実際にお芝居を掛け合うと、自然とゆりあの気持ちになれました。

ゆりあと吾良さん(ゆりあの夫/田中哲司)は、長く一緒にいるからトキメキや愛の情熱みたいなものは少なくなっていたと思うんです。だからこそ、稟久くんの吾良さんに対する思いに「かなわない」と認めてしまったり、夫婦では作れなかった子供をよそで作っていたことに対してモヤモヤしてしまったり。そういった部分は、2人に気持ちを引っ張ってもらった部分がとても大きかったです。

――鈴鹿さん&松岡さんとは初共演だそうですね。印象はいかがですか?

撮影の合間に2人が話しているのを遠くから聞いていたのですが、「『蜜蜂と遠雷』ぶりだね」と言っているのが聞こえてきて、おふたりの共演されている作品が気になって、家に帰ってから見たのですが、本当に素晴らしかった! こんなおふたりと一緒に作品に出られるなんて、光栄だなと思いました。

――本読みの段階で、鈴鹿さんに「(役に)ピッタリだね」と言ったそうですね。何故そう思われたのですか?

佇まいや彼の持っている雰囲気が、稟久くんにピッタリだと思いました。前クールではダンスしている男の子の役をやっていて(※『18/40~ふたりなら夢も恋も~』黒澤祐馬役)、そのイメージを持っていたので「全然雰囲気が違うな」と最初は思ったのですが、うちに秘める感じの役もとても合っているなと思いました。

――共演者の方々の作品をよく見られているんですね。

今は小さい子供がいるので、なかなか見られないのですが、松岡さんが前クールに出演されていた『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』も見ていました。

――記者会見の雰囲気を見ても思ったのですが、撮影現場がとても楽しそうですね。

三田佳子さん(夫の母・伊沢節子役)をはじめ、皆さんが気を使ってくださって、ほのぼのしています。あと、松岡さんがいる時は男性スタッフが喜んでいる(笑)。冗談がいつもより多く飛び交って、それを松岡さんが軽妙なトークでまとめてくださるので、本当に楽しいです。

――大先輩の三田佳子さんとの共演はいかがですか?

三田さんはおばあちゃんの感じを出すために、衣装の下に肉襦袢を着ていらっしゃるんです。歩き方もそう見えるように研究されていて、役に対して真摯に向き合っている姿を間近で見られて、こんな贅沢なことはないと。私もこうなりたいと思いました。

――ゆりあは「カッコよく生きる」が座右の銘ですが、菅野さんにも人生のモットーにしていることがあったら教えてください。

子供がいる今思うのは、「毎日コツコツ」ですね。育児って毎日毎日同じことの繰り返しで、すごくしんどくなる時があるんです。子供を産む前は、子供が何をしても「大丈夫よ~」って笑い飛ばせると思っていたのですが、全くそんなことなくて……四六時中怒っています(笑)。でも、それを繰り返すことで子供は成長していくので、今はそれにひたすら向き合うしかないなと思いながら、育児の日々を過ごしています。

また、そんな時にドラマの撮影があると、すごくリセットできるんですよね。仕事に集中させてもらえる時間があるのは本当にありがたいことだなと、この撮影期間に改めて思いました。

大先輩・三田佳子の姿に感銘

――ここからは、菅野さんとテレビの関わりについて聞かせてください。影響を受けたテレビ番組はありますか?

和久井映見さんが主演されていた『ピュア』です。すごく大好きで、ずーっと見ていました。主題歌になっていたMr.Childrenの「名もなき詩」もすごく良くて、毎回曲が流れる度に感動して号泣していました。

子供の頃に大好きだったのは、『ウゴウゴルーガ』と『ドリフ大爆笑』『8時だョ!全員集合』。加藤茶さんの「ちょっとだけよ」が小学校で流行りすぎて、全校集会で校長先生が「禁止です」と言ったこともありました(笑)。あの頃はずっとテレビを見ていたし、友達との会話もほとんどテレビの話題だったような気がします。

――今見ている、オススメのテレビ番組はありますか?

今見ているのは、『クレヨンしんちゃん』。しんちゃんは妹のお世話もするし、何か問題が起こったら友達と協力して助け合うし、当初抱いていたイメージと「全然違う!」と思いました。映画も劇場まで観に行っています。

――やはりお子さんがいると、チャンネルを子供向け番組に合わせてしまいますよね。

そうなんです。でも、子供向けといっても面白い番組はたくさんあって。『診療中!こどもネタクリニック』は本当に最高の番組だと思っています(笑)。

――(取材時)TVerでは、過去の名作ドラマも配信していました。『イグアナの娘』『ギルティ』『君の手がささやいている』など、菅野さんが出演した作品も配信されていましたが、それらの出演作を経て、今の俳優業に活かされていると思うことはありますか?

それらの作品も、その他の作品も、出演するたびに得るもの・活かされるものはたくさんあります。また、自分に足りないものを自覚したり……。『イグアナの娘』を撮っていた時、母親役の川島なお美さんは35歳だったのですが、46歳になった今の私でも当時の川島さんの色気は出せません(笑)。

――最後に、菅野さんが役者として大切にしている信念や言葉を教えてください。

初めてドラマに出演したのは、おそらく15歳の時でした。それからこんなに長くお仕事を続けられるなんて思っていなかったです。31年経った今でもドラマの現場は学ぶことがたくさんあります。三田さんのように、いくつになっても良い演技を追い求める姿に感銘を受けますし、自分が三田さんの年代になった時にそれができている人間でありたい。子供が生まれて出演できるドラマの本数が減ったからこそ、一つひとつの作品・役柄を丁寧に作っていけたらと思っています。

取材・文:米田果織
撮影:フジタヒデ

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