『パリピ孔明』上白石萌歌“英子”の「DREAMER」が繋ぐ奇跡のバトン 向井理“孔明”が伝え続ける「あなたは一人じゃない」

公開:
『パリピ孔明』上白石萌歌“英子”の「DREAMER」が繋ぐ奇跡のバトン 向井理“孔明”が伝え続ける「あなたは一人じゃない」

天才軍師・諸葛孔明(向井理)によって月見英子(上白石萌歌)ことEIKOの歌の才能が開花させられ、それに世間も気づき始めているブレイク前夜。

しかし英子の天賦の才というのは、敵をも仲間に率いることができるところにあるのかもしれない。そもそも周囲にファイティングポーズをとることなく、無防備で飾らない。必要以上に自分を大きく見せることもなければ、人の裏を読んだり陥れようとしたりすることなど決してない。“昨日の敵は今日の友”を地でいく。「AZALEA」の久遠七海(八木莉可子)然り、そして英子のことを自分のステージの当て馬にしようとしたミア西表(菅原小春)然り。

そんな邪気のない英子に確実に何者かの作為的な悪意が向けられた『パリピ孔明』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)第7話。しかし英子の身を救ったのもやはり“仲間”の存在だった。

ミアの知られざる人気シンガーとしての苦悩 英子に忍び寄る前園ケイジの魔の手

大型フェス「サマーソニア」への出場権を手にした英子に次に待ち受けていた試練は、新曲をもう1曲用意すること。曲作りに行き詰まった英子が救いを求めたのは、尊敬するアーティスト・ミア西表だった。

AZALEAも売れるために自分たちのオリジナルスタイルを一切封印しプロデューサーの意向を汲んだ打ち出しに徹していたが、人気シンガーのミアも実は同じように苦悩を抱えていた。激しいダンスシーンばかり求められ、歌唱力で勝負したいという自分の意向をレーベルに無視され続け意見は対立。英子の相談に対しても「私に歌のことなんて聞くなよ! 誰も私の歌なんか聞いてないんだから!」と突っぱねてしまうミアの叫びはなんだか悲痛だ。

言葉足らずで直情的、気性が荒くって大胆不敵に見えて、ともすれば高圧的で女王様かのような振る舞いをするミアだが、実は人一倍傷つきやすい。マネージャー・松田(村杉蝉之介)が自分と同じ熱量で取り組んでくれていないと思えば(これもミアの誤解だったわけだが……)所構わず怒鳴り散らかすが、それだけ信じて委ねてきた相手に裏切られたという思いが大きくショックを隠せないのだろう。

そんな中、英子にテレビ出演の話が舞い込む。地上波ゴールデンの歌番組のプロデューサー・高井戸(竹財輝之助)は生放送の特番内の“新人枠のシークレットゲスト”として英子に出演を打診。孔明はこの高井戸の魂胆を探るためにボウリング対決を持ちかける。あえてミスをし高井戸に花を持たせ、その隙に番組の構成台本の内容を拝借する。

イエスマンでしかない女性APを常に傍に携え自身の取り巻きかのように扱うところもなんだか嫌味で、AZALEAのプロデューサー・唐澤(和田聰宏)とは異なりどこまでいっても音楽を愛する気持ちやその矜持が滲み出てこないのが高井戸だ。そんな高井戸の外面の良さや英子に甘い言葉を投げかけ唆そうとするその裏に透けて見える確実にラスボスではない小物感や小賢しさを、竹財が巧妙に見せてくれている。高井戸はあくまで音楽をビジネスと捉えているTHEビジネスマンだ。

もちろん彼を裏で操っていたのは前園ケイジ(関口メンディーEXILE・GENERATIONS)だ。広告代理店の社長を務める父親の権力を振りかざし、番組のスポンサーへの忖度を匂わせて高井戸を自身の駒のように動かしていたのだ。

生放送の番組内で英子の大手レーベル「V-EX」への電撃移籍を発表し、その全く根も葉もない嘘を既成事実にしようとしたようだが、ここまでして前園が英子にこだわる理由はやはりオーナー・小林(森山未來)との因縁にあるのだろう。名目上は新人アーティストを移籍させて飼い殺しにして芽を潰すということらしいが、全くもって自身の脅威になどなることのない英子のことをただただ小林や孔明から引き離したいだけなのだろう。

高井戸のトラップを把握した孔明は、生放送を直前に控えた中曲作りのプレッシャーや過労から倒れてしまった英子の代わりにミアに代打出演を依頼し、これを秘密裏に行うというさながら“祖茂の身代わり”かのような計に打って出る。

英子から七海に送った「DREAMER」が今度はミアの傷を癒し背中を押す

テレビ出演について「死んでも出ない」と切り捨てていたミアだったが、今回の代打出演では元のレーベルで決して叶わなかったバラードを歌いあげることができ、友情出演という話題性も相まってミアにはもちろん英子にとっても「DREAMER」をより多くの人に知ってもらえる機会になる、まさにwin-winの策だ。

しかし最終的に頑なだったミアの心を動かしたのは、事もなげに自分のことを「敵じゃないです、友達です」と言ってのけ、自ら人を遠ざけてしまうようなところがあるミアに懲りずに、ずっとリスペクトを持って接してくれ慕ってくれる英子との関係性あってこそのことだったのだろう。

英子がAZALEAの七海との出会いに感化されて完成させた「DREAMER」が、七海らに無我夢中で自分たちの音楽をかき鳴らしていた青春時代を思い起こさせ仮面を剥がさせたのも胸熱だったが、まだまだこの「DREAMER」の奇跡は続いていく。

ミアが「DREAMER」を歌いながら、これまで見て見ぬ振りしてきた自分の傷に向き合いながらどんどん素顔を晒していく様が見事だった。これまではかっこいいキレッキレのダンスを披露し自信に満ち溢れていたかのようだったミアが、その身一つで直立不動で心の限りを尽くして大熱唱する様は「私はここにいるんだ」「本当の私を見て!」という彼女の心からの叫びにも聞こえた。彼女にとってもフィールド外での今回のテレビ出演、きっとその中で自分一人だけでなく友人である英子やマネージャー・松田などの存在を感じながらあの場に立っていたのだろう。差し出された手をすぐに自ら振り解いてしまうミアの手をずっと離すまいと握り続けてくれていた人たちの顔を思い浮かべながら。「あなたは一人ではありません」――孔明のこの言葉の意味を体感できたミアはうんと強く柔らかくなった。

この生放送出演を通して、ミアの歌唱力が世間に広く知れ渡っただけでなく、「V-EX」のプロデューサー・浩瀬(DJ KOO)から本当にレーベル所属の話が舞い込む。それより何よりミアにとって最も身近な最強の応援団・松田のこれまでの秘めた思いが本人に届いて本当に良かった。

英子が七海について「でも本当のななみんはもっとすごいんだから」とサラッと口にしたように、松田もミアについて同じようなことを話す。「でもあんなもんじゃありません。ミアさんが本気を出して今より歌とダンスをもっと磨けば必ず天下を取れます。僕はその景色をあなたと一緒に見たいんです」

自分以上に自分の才能を信じ抜いてくれる存在が近くにいてくれることはどれだけ心強いことか。だからこそ小林も英子のために必死に劉備(ディーン・フジオカ)からの迎えを拒むように孔明に口酸っぱく言うのだろう。

次回、マリア・ディーゼル(アヴちゃん女王蜂)が緊急来日するようで、そんな小林の過去も明かされそうだ。命の恩人で憧れの存在、そして親友・七海と引き合わせてくれたマリア・ディーゼルとの再会が、今の英子に何をもたらすのか。

文:佳香(かこ)