西島秀俊×内野聖陽、シロさん&ケンジと共に歳を重ねる喜び「すごく大きな、大切な作品です」

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西島秀俊×内野聖陽、シロさん&ケンジと共に歳を重ねる喜び「すごく大きな、大切な作品です」

西島秀俊さんと内野聖陽さんがダブル主演するドラマ『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)が10月6日よりスタートします。

2LDKのマンションで暮らす料理上手で几帳面な倹約家の弁護士・筧史朗(通称:シロさん)と、その恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二(通称:ケンジ)の毎日と、日々の食卓を描く物語。2020年には正月スペシャルドラマが放送され、2021年には映画も公開された人気作が、いよいよ帰ってきます。

お互いを前にするだけで、すぐ“シロさん”と“ケンジ”に戻れるというおふたりに、season2に込めた思いを聞きました。

自分たちにとっても、すごく大きな、大切な作品

――最初にseason2の制作を聞いたときの率直なお気持ちは?

内野:「やるんだろうな」という気持ちはありましたし、特に西島さんはすごくやりたがっていらして。もちろん僕もそうでしたし、意外ではなく「そんな時期か」みたいな感じですかね。

西島:僕はずっと「season2をやりたい」と言ってきましたけど、すごいキャストが集まっていて、若手はどんどん成長して忙しくなっているし、現実問題、無理なんじゃないかっていうのが正直なところでした。season2がクランクインできたのは、本当にたくさんの人の尽力があったからだなと感謝しています。

――そこまでおふたりが、season2をやりたかった理由を聞かせてください。

西島:街を歩いていても、ちょっと声をかけられたときに「本当に好きです。続編もあるんですか?」と聞かれたり、仕事場で同業者やスタッフにも「次を楽しみにしてます」と言われたり。一番大きいのは、やっぱり応援してくださっているみなさんの熱意。何年経っても、「次、まだありますよね?」と言ってもらえるのはすごく大きかったです。実際、演じている僕たちも楽しいし、やりがいがある。スタッフもそれを感じていて、作っている側の自分たちにとっても、すごく大きな、大切な作品です。

内野:僕はこの作品がこんなにも世の中に受け入れられたことにちょっとした意外性があって……。確かに、コロナ禍で“うちめし”が注目されたり、家族に対して思いやりを持ちたいよねと思っていてもなかなかできなかったり、男性同士のいたわり合うやさしい日常の風景に癒されたり……と、いろいろな分析をするんですけど、でも、きっと、この作品には、今を生きる人々の時代感覚のようなものが反映されているのだろうなと思うんです。でも、そんな今の時代感覚を自分が完全に理解できているわけでもなくて……。その時代感覚のようなものをもっと知りたい、もっと挑戦してみたいというのが一つ。それともう一つは、僕自身が今までマッチョなキャラクターを演じることが多かったので、“ケンジ”を演じることで、表現者としてひとつ自由になれたところがあるんです。そこが面白い経験だったので、求められるのであれば、とことんやってみたい、という気持ちです。

西島さんと目を合わせた途端にケンジになれる

――撮影がスタートして、すぐに役の感覚が戻ってきましたか?

内野:もう一瞬にして、西島さんと目を合わせた途端にケンジになれる、みたいなところがありますね。

西島:本当に、これは一瞬で元に戻るものなんですよね。セットもつい昨日まで撮っていたかのようにまったく同じだったので、美術やいろいろなスタッフの助けもあって、あっという間に元に戻ります。

内野:スタッフさんも同じメンバーも多いので、独特の空気感があるんですよ。ゲスト出演してくださる方も「ここの雰囲気すごくいいよね」なんて言ってくれるんですけど、和やかさの中にもテキパキとした、この世界観をみんなが愛している空気がある。気負わずにスッと入っていける環境なんです。

――シロさん、ケンジと一緒に歳を取っていくことに喜びも感じますか?

内野:シロさんもケンジも歳を取っていくので、引退が見えないちょっとした恐怖があります(笑)。おじいちゃんになって杖ついて「シロさ~ん」とか言ってるのかなとか。それもステキですけど(笑)。普通だったら、キャラクターは歳を取らずにそのイメージのままでいるんでしょうけど、やっぱり人間ですから。いろいろな人生経験の中で、劣化していくところもあり、成長していくところもあり……そういうものを取り込んでしまっているドラマなので、見栄を張ることなく、「シワが増えたな」「シミが増えたな、あーあ」とかっていうものも、背伸びせずに見せていける。それがいいですよね。

西島:こういう日常を描く漫画で、歳をちゃんと重ねていくってあまりないと思うんですよね。史朗もケンジもアラフィフになって、僕たちよりちょっと下なので、少し前に自分が経験して、今も実感してることに、まさに2人が直面していて。すごく共感するし、胸に迫るものがあります。この漫画は、どちらかというと人生の大変なことだったり、みんながぶつかる壁だったりを描いていて、それを日常のささやかな幸せで乗り越えていく話なので、どうしても厳しい現実みたいなものが時々出てくるんです。「これは本当にそうだよね」と思うことがたくさんあるので、やりがいがあるし、そこを繊細に感じて表に表現できるのは、この作品の特別なところかなと思っています。

――シリーズを重ねる相手が、お互いでよかったと思うことは?

内野:撮影中に「ちょっと辛いな、厳しいな」と思いながら、ふっと隣をみると、西島さんもハードそうにしているとホッとします(笑)。同時に時の流れを共有している、という意味では安心感がありますね。そうは言っても西島さんは美しい方なので、ジェラシーすら感じる瞬間もたくさんありますが(笑)、ゆったりと経年を受け入れていくという意味では人間みな一緒なので、それは心地いいなと思っています。

西島:内野さんは全身全霊を込めて役に向かう方なので、こういう人が相手役で良かったなと思いますね。内野さんの役への向き合い方に僕も引っ張ってもらっているし、現場の俳優全体が「こういうふうに役に向かうものなんだ」と。(シロさんとケンジの)日常会話は将来のお金の問題とか、健康のこととかだけど(笑)、そういうものをどれだけ役にのめり込んでやるか。内野さんが体現していることが現場にとってすごく大きなことで、内野さんなしにこのドラマはちょっと考えられないです。

内野:ずるいなぁ(笑)。

西島:いや、本当にそうだからね。

シロさんのケンジへの愛はパワーアップ!

――年齢を含めいろいろな変化がある中で、変わらないものはありますか?

内野:“なるべくお客さんの心にスッと入ってくるような、ナチュラルな世界観でいけたら”というのは変わらないところですね。LGBTQというテーマを扱っているかもしれないけど、そこで素直に何か普遍的なものを感じ取っていただけるようにするためには、僕ら表現する側が深く捉えながら、サラリと表現できたらいいなっていうのは、変えたくないなと思っています。

西島:season1から共通しているのは、「真剣にやる」ということ。真剣にやった結果がコメディになっていたり、面白くなったりするのは構わないけど……って、めっちゃコメディになってたらどうしよう(笑)。

内野:そうだよね。志とは別に、すごくあざとくなってたりして(笑)。

西島:(笑)。「自由にやってくれ」というときはコメディにいくときもありますけど、基本的には何を狙うわけでもなく、自然な演技を志しましょう、というのは、今回のseason2でも変わらないところだと思います。

――最後に、これまでの作品からパワーアップしたところも教えてください。

西島:セットはもう少し広くなるかと思ったら、そのまんまでした(笑)。でも、ケンジの優しさがパワーアップしています。これはプロデューサーから言わないようにと釘を刺されたのであまり言えないですけど、(そのエピソードは)ケンジが素晴らしすぎて、観る人がプレッシャーになるくらい。こんな素敵なことができる人なら、そりゃあ「この人のことを一生……」と考えるだろうなって。

内野:具体例を言わないと、何のことかさっぱりわからないですけどね(笑)。私的には、シロさんのケンジへの思いもすごくパワーアップしているなと感じました。シロさんは不器用な生き方をしている人なので、その分、心の声で処理されているんですよ。その声で観る方のハートを掴むような脚本でしたし、シロさんのケンジへの愛はパワーアップしていますね、確実に。

(取材・文:nakamura omame)

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