ジュニア年代に新時代が到来!育成の多様化と海外経験豊富な指導者によって日本のクラブが躍進

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ジュニア年代に新時代が到来!育成の多様化と海外経験豊富な指導者によって日本のクラブが躍進

9月23日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、ジュニア年代の国際大会・U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジの創設者である濵田満をゲストに迎え、ジュニア年代の育成についてトークを展開した。

15歳以下の日本一のクラブを決める2023年の日本クラブユースサッカー選手権大会では、Jクラブユースを下して街クラブが優勝。その下の全日本U-12サッカー選手権大会でも、4年連続で街クラブが大会を制している。街クラブがJクラブユースを飲み込むという新時代の幕開けを予感させる今のジュニア年代。その変化は、8月に千葉県で開催されたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジにも現れていた。

世界の強豪と戦える絶好のチャンスとして、毎年、数多くのクラブが参加。2013年の第1回大会には、FCバルセロナのメンバーとして久保建英も出場している。今年も去年に引き続き、FCバルセロナやユヴェントスFCを始めとした名門が参戦。その中で、世界のクラブに引けを取らない激闘を見せたのが、日本のJクラブユースと街クラブだった。

かつて番組でも取り上げたサガン鳥栖アカデミーは「ハードワーク」が一つのキーワードだったが、その哲学は今大会に出場したサガン鳥栖U-12にも継承。クラブを背負いながらトップを目指す指導を行うことによって、選手たちはジュニア年代からクラブの一員であることを自覚してプレーすることができるのだという。

トップチームの哲学を受け継がせるために、Jクラブユースでは指導者にもこだわっている。しかし、濵田は「哲学に沿ったパーソナリティのコーチや、その教え方をするコーチを採用したいので、色のある尖ったコーチは採用しにくい現実がある」と、弊害があることも指摘。一方で、かつて子どもの父親がボランティアでコーチを務めることも多かった街クラブでは、指導者のレベルが上がり、子どもの性格や特徴に合わせたクラブ選びができるようになっていた。

今大会で準決勝に進出して、ヴィッセル神戸U-12を破ったソレッソセレクトは、九州の街クラブ。試合前のミーティングでは、監督が「笑顔でみんなが爆発的に盛り上がってるチームの方が絶対強い!」と選手を鼓舞するなど、戦術よりもモチベーションの向上に重きをおいている。声かけに人一倍気を使う監督の指導により、やる気をみなぎらせたチームは決勝に進み、FCバルセロナに破れはしたものの、街クラブの大きな可能性を見せた。

実は、今大会の優勝チームであるFCバルセロナU-12の監督も、日本の街クラブに注目。FCバルセロナU-12のジョルディ監督は「バルセロナと凄く似たようなサッカー。我々と同じようにパスをつなぎ、ビルドアップしていた。今大会で一番印象が強く残ったチーム」として、サッカースクールの選抜チームであるエコノメソッド選抜を挙げていた。

エコノメソッドはスペインで生まれた指導法で、エコノメソッド選抜を率いるのもスペイン人監督。その核となるのは“個”や“技術”ではなく、賢いプレーができる選手を育成することだという。もともとは「脳の発達と共に学び方を変えていく」という考え方に共感した濵田が日本に持ち込んだメソッドで、濵田が社長を務めるJ3の奈良クラブや、プロを多く輩出する興國高校でも取り入れられている。

選手が考えながらプレーすることについて、解説の坪井慶介は「自分で判断してチャレンジすると、それが良かったのか悪かったのか、悪ければどうすればいいのか、良ければもっと良くするためにどうすればいいのかと、考えられるようになる。そういう選手じゃないと上には行けないと思う」と主張。エコノメソッドの有効性を認めていた。

また、予選リーグでスーパープレーを連発して会場を沸かせた埼玉県のエクセレントフィートFCも、選手の考える力を養うことに注力。同クラブは、Jクラブの下部組織のセレクションに合格させるために作られた街クラブで、2009年の設立以降、52名のセレクション合格者を輩出しており、ヴィッセル神戸で活躍する大﨑玲央もその1人だった。

クラブでは、セクションの合格に特化しているだけあり、パスやシュートよりも、ボールを持った際の動きを重視。息子が同チームに所属しているという坪井も、「ボール持ったときにどういうプレーを選択していくかっていうことをすごく教える。(監督が)選手たちに“考えられる選手になれ”ということはよく言っていたので」と語った。

さらに、世界を見据えて結果を出している街クラブもある。神奈川を拠点とし、国内の数々の大会で好成績を収めているFC PORTAは、今年の5月にもヨーロッパで行われた大会に日本の代表として出場。育成の名門として知られるアヤックスやFCポルトなどに次いで、4位という結果を残している。すべてを世界基準で考えることで、どこへ移籍しても通用する選手を育成することがクラブの大きなテーマなのだという。

そして、海外経験豊富な指導者がいるのも、現在の街クラブの特徴の一つ。去年の大会を制したmalva future selectは、イタリア・アタランタBCでの経験を持つ監督が指導をしており、今大会も32チーム中、9チームの監督が海外でサッカーを学んでいた。

濵田は「自分の夢を子どもに託して、その子たちが上がっていくのを心の底から応援している感じがすごくある」と街クラブの強さの理由に言及。MCの勝村政信も「日本っていうフィールドの中では有名ですけど、海外で身を削られるような思いをした監督やコーチがいなかったのは大きな問題だったと思うんです。でも、海外を経験された監督たちが出てきて、主従関係のない形で指導できるようになってきている」と、ジュニア年代の育成の進化に驚いていた。

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