『最高の教師』許すことと許さないこと…今この世界に必要なのはどちらか?

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『最高の教師』許すことと許さないこと…今この世界に必要なのはどちらか?

この世界には、理不尽に搾取されたり、踏みにじられたりする被害者がいる。だが、時と状況に応じて、被害者は加害者に転じることもある。

最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系、毎週土曜22:00~)第2話は、被害者と加害者で構成された社会で、私たちはどう生きるかの物語だった。

瓜生陽介は被害者であり、加害者でもあった


第1話がいじめなら、第2話は毒親。今日の子どもたちが抱える問題を通して現代の闇を炙り出していくのは、ある種、学園ドラマの王道。それを単眼的に斬るのではなく、さまざまな視点からアプローチするところに、このドラマの良さがある。

第1話で九条里奈(松岡茉優)からお金を騙し取ろうとした瓜生陽介(山時聡真)。だが、学費の支払いにも困窮するほど経済的に苦しんでいるのは、本当だった。原因は、母(中島亜梨沙)の浪費。弟たちのために陽介が稼いだバイト代さえ、母は男に貢いでいた。

この問題をいかに解決するか。情に訴え、母親を改心させるまでは、よくあるパターン。しかし、このドラマはそこで終わらない。「なんで母ちゃんが許す側なんだよ」「絶対に許さねえ」――そう陽介は叫ぶ。

親がだらしないばかりに、貴重な10代の時間を奪われた。その理不尽を許さない。それが、陽介の出した答えだった。

家族なら、どんな裏切りや不実も受け入れなければいけない。相手がちゃんと謝ってきたなら許してあげなくちゃいけない。そんな美徳はもはや過去の遺物だ。家族だからと言って必ず愛さなければいけないことはないし、どうしても許したくないなら許さなくていい。本人の意思を最大限に尊重した方法で、機能不全家族の問題にひとつの決着をつけた。

血を分けた親からの影響はもちろん大きいが、人格形成を決定づけるのは親だけではない。友達、先生、アルバイト先の人たち。あるいは、それらに括られることのない、名もなき関係。呼吸をしやすい場所は、どこかにある。だから、家庭に縛られ続ける必要などないのだと示唆する。こうしたメッセージングは、とても令和らしい。

だが、ここまでの描写もまた近年のドラマではすでに常套手段となりつつある。あらゆる呪いから自由になろうという方向に世界は進んでいる。

このドラマの信頼に値するところは、毒親の被害者である陽介もまた立場が変われば加害者であるという側面から決して目を逸らさなかったことだ。

「そんな一時の感傷に浸るお礼などいらないと言いました」

瓜生からの感謝の言葉を、九条はきっぱりと拒絶する。瓜生がすべきことは、九条に礼を言うことではなく、いじめに加担した鵜久森叶(芦田愛菜)への謝罪。母からの許しを拒んだ瓜生だが、彼もまた許しを乞わなければいけない立場なのだ。

瓜生がいじめに関わったのには、いろんな理由があるのだろう。クラスのボス的存在である西野美月(茅島みずき)や相楽琉偉(加藤清史郎)に逆らえなかったのかもしれないし、家庭内でのストレスの捌け口にしていた見方も否めない。だが、いずれの理由も鵜久森をいじめたことを正当化する免罪符にはならない。

瓜生の母も母で、いろんな心の弱さから男に依存するしかなかったのだろう。それを瓜生が許すいわれがないのと同じだ。鵜久森が、瓜生の事情を斟酌する必要などない。

だが、鵜久森は瓜生を許した。瓜生の友人・向坂俊二(浅野竣哉)の誘いを断りつつ、「でも、駅までで良ければ」と受け入れた。あれは、鵜久森からの許しだった。

母を許さなかった瓜生だが、自らが犯した過ちについては鵜久森から許された。結局、許すことと許さないことのどちらが正しいのだろう。だが、きっと正しさなんてものはどちらにもないのだ。どちらを選んだ方がより幸せになれるか。傷を負った者が、自分自身で決めていくしかない。

おそらく瓜生もまたいつか母を許したいと願っている。だから、母に「一生かけて覆してみろよ。許させてみろよ」と言った。ほしいのは、口先だけの謝罪の言葉ではない。その先の行動だ。

どんな被害者も状況に応じて加害者になり得る可能性はある。家庭内では弱い立場だった瓜生が、教室内で自分より弱い立場だった鵜久森をいじめたように、人は自分より弱い者を見つけて、その傷口をいたぶることで、安心したり、優越感に浸ったりする。

願わくば、その連鎖に参加しない自分でありたい。そう思うけれど、現実は難しいだろう。被害者を生まない最大の方法は、加害者をつくらないこと。瓜生の母が、子どもたちを虐げない世界を。瓜生が、鵜久森を虐げない世界を。行き場のない不満や苛立ちが、より下流へと蓄積されることのない世界をつくるためには何が必要なのか。そんなことを考えさせられる第2話だった。

茅島みずき、當真あみ山下幸輝ら新世代のアイコンが集結!


今回の主役である瓜生陽介を演じたのは、7月14日に公開された映画『君たちはどう生きるか』で主人公・眞人の声を務めた山時聡真。5歳で子役デビューし、今最も注目の作品で一気に名を知らしめた成長株が、そのポテンシャルを存分に見せつけた。

どこか寂しさを感じさせるナイーブな瞳が印象的で、母に本音をぶちまける場面は迫真の演技。声を荒げながらも発声は聞き取りやすく、喉で芝居をするのではなく、全身を使って感情を放出するさまが強く心に残った。今後もしばらくは青春映画に欠かせない顔となりそうだ。

こうした学園ドラマは、これからを担う次代の俳優たちの顔見世の場でもある。すでに全国的な認知度を誇る芦田愛菜や加藤清史郎はもちろんのこと、『教祖のムスメ』(MBS)をはじめミステリアスな雰囲気で同世代と一線を画す茅島みずき、抜群の瑞々しさと透明感で「未来の朝ドラヒロイン」の呼び声高い當真あみ、『ポップティーン』出身であり10代から圧倒的な支持を集める莉子など、まさに才能の宝庫。

メンズも、『君の花になる』(TBS系)で脚光を浴び、ViVi国宝級イケメンランキングのNEXT部門にランクインした山下幸輝、『MOTHER マザー』で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた奥平大兼、父親譲りのオーラで強烈な爪痕を残す窪塚愛流など有望株が揃っている。個人的には、新世代のファッショニスタ・のせりんや、大きな瞳が古風な男らしさを醸し出す正統派美男子・岩瀬洋志を青田買いしたいところ。

作品の放つ深いメッセージと共に、画面の隅々で輝きを放つスターの卵たちにも注目したい。

『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』は、TVerにて最新話に加え、ダイジェスト動画が配信中。