『真夏のシンデレラ』恋愛リアリティショーに真っ向勝負、“お約束”を惜しまずやり切る覚悟がすごい!

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『真夏のシンデレラ』恋愛リアリティショーに真っ向勝負、“お約束”を惜しまずやり切る覚悟がすごい!

これが夏の月9だ! というべき作品が始まった。7月10日放送の『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系、毎週月曜21時~)第1話は、さっそく恋の矢印があちこちに発生。その向きがどう変わっていくのか、そして人気急上昇中の俳優陣を揃えての恋愛群像劇という最高のお題を、どういう脚本で仕上げるのか。注目でしかない。

男女8人の恋愛群像劇、月9で復活!

舞台は海辺の町。まず、ロケーションが最高すぎる。この夏、画面を通してずっとキラキラした海を見ていられるのは気分が上がる。

最初に登場したのは男性陣。一流大学を卒業し、有名建築家の父が経営する大手建築会社で働いている水島健人(間宮祥太朗)と、エリート思考の強い医師の佐々木修(萩原利久)、明るいムードメーカーの山内守(白濱亜嵐)は友人同士。

休みを利用してこの町にきて、サップ体験を申し込んだところ、インストラクターの蒼井夏海(森七菜)がやってくる。この時点で健人の矢印はすでに夏海に向いていそうだ。しかし、夏海は幼馴染の牧野匠(神尾楓珠)に片思いの真っ最中だった。

翌日に夏海は友人で美容師アシスタントの滝川愛梨(吉川愛)に誘われ、クリーニング店で働く小椋理沙(仁村紗和)とともに愛梨がマッチングアプリで知り合った男性とのパーティーへ出向く。そこにいた男性陣はあの3人組で、家は『テラスハウス』ばりのプール付きの豪邸で……。

これで大方準備が整いました。そうか、恋愛リアリティショー全盛期に、ついにドラマが本気を出したか。そんな印象だ。

そしてもう一人を忘れてはいけない。実はシングルマザーの理沙。海で溺れそうになったところを助けてとっさに人工呼吸をしてくれた相手が、ライフセーバーの早川宗佑(水上恒司)。劇的な出会い、そして翌朝お互い裸で寝ているというコテコテのシーンも。

従来のドラマであればヒロインが全部担うような、ラブハプニング要素も、登場人物が多い分いろいろなキャラでカバーできるから助かる。身体の関係にはまだ進展してないものの、恋はハプニングからも始まるから油断ならない。

この8人がひと夏をともに過ごすメインキャラクター。恋だけではない、さまざまな成長があるんだろう。それが夏のマジック。

恋の矢印、第1話のおさらい

夏海は父子家庭で、それほど裕福でもない。父の亮(山口智充)、弟の海斗(大西利空)と3人暮らしで、インストラクターをする傍ら、亮が経営する食堂の運営と家事全般をこなしている。

そんな夏海が思いを寄せる匠は、長谷川佳奈(桜井ユキ)に夢中だった。佳奈は結婚していることもあり、こちらは報われない恋のよう。とりあえず第1話の恋愛の矢印をまとめると……

健人→夏海→匠→佳奈

一方通行の思いがどう交わるのだろうか。ベタに考えたらだいたい展開の予想はつくのだけど、本作は役者陣の空気感や視聴者の反応で展開が変わるらしい。だとすれば、気になる。

夏海は匠に決死の告白をするも、爆死。「好き」「ごめん」「冗談だよ」のやりとりはせつないがこれもお決まり。『カルテット』でいうSAJの三段活用(「S=好きです、A=ありがとう、J=冗談です、とつながる不毛な告白のやりとり)で、夏海は告白をなかったことにした。

そんな夏海の心にするっと入ってきそうなのが、健人。夏海と匠がいっしょにいるところに立ち寄るシーンは、三角関係に発展のフラグだし、さらにその後水族館での再会はそれを決定的にする。

水族館の巨大水槽や夕日の海という、人を最高にきれいに照らしてくれる背景の中で2人きりになって恋に落ちないことがあるだろうか。これは最高にドラマっぽい描写だった。

さらに、その夜は花火が。もう、夏にみたいシーンが全部盛り。やりきり度が半端ない。それだけ第1話にかけてくれたのだろう。

現代のシンデレラ、どう成長する?

夏海は家族を大切にしている。亮と海斗は常に夏海を頼っていて、夏海も甲斐甲斐しく2人をケアしている様は、王道のヒロインみがある。というのも、やはりこの物語は童話の「シンデレラ」を下敷きにしているからだろう。

耐え忍ぶヒロインを現代風に仕上げているのだけど、今の感覚でいうとちょっと夏海は自己犠牲の精神がありすぎて心配になってしまう。

都会と田舎(舞台になっている町はそこまで田舎ではないが)、貧富、学歴……格差が描かれていたのも現代的な要素。それも身分違いな恋を描く「シンデレラストーリー」になぞられてのことだと思うが、ちょっと強調されすぎているのは気になる。

男性陣が別荘のある高い場所から花火をみていて、夏海は食堂の台所の窓から下半分だけの花火をみていた。この描かれ方を2023年にみるのはかなりしんどい。シンデレラのように誰かに助けてもらうヒロイン像よりも、自尊心が高い無敵のクイーン像が求められる今、夏海はどう変わっていくのだろうか。個人的には自分の力でクイーンに大化けしてほしいと思っている。

仮に恋愛リアリティショーを意識しているのであれば、視聴者の反応やツッコミは想定済みだろう。私たちはすでにまんまとのせられているわけだけど、ベタな展開も含めて楽しみたい。ベタな夏、あったっていいじゃないか。

(文:綿貫大介)