『あなたがしてくれなくても』みちと新名の加速する婚外恋愛……二人には本当に“してくれる相手”が必要なのだろうか。

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『あなたがしてくれなくても』みちと新名の加速する婚外恋愛……二人には本当に“してくれる相手”が必要なのだろうか。
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「私たちは戦友のはずだった」。5月4日放送の『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~)第4話では、吉野みち(奈緒)と新名誠(岩田剛典)の心が近づきすぎてしまったがゆえに、ついに一線を超えてしまうか……? という展開に。二人は戦友としてではなく、このまま男女として茨の道へと突き進んでしまうのだろうか。

研修旅行……決してバレてはいけない大胆な密会

『失楽園』かよ! と思った。みちと新名が旅館で浴衣を着ながら求め合っているシーンをみて、同じく既婚者同士の恋愛を描いた不倫作品の代名詞『失楽園』を思い出してしまった。

不倫モノって一見お互いが求め合っているように見えて、実は男性主体の都合のいい物語になっていることが多い。特に前述の作品には男のロマン的願望を強く感じてしまうのだけど、『あなして』の場合はどうだろう。

時系列で追っていこう。3話で水族館デートからのキスまでしてしまった二人。翌日、みちが熱で会社を休んだ際は、新名がおかゆ、アイス、スポーツドリンクを持参して家の前まで行くという、“恋人同士であればされたいやつ”を実践していた。

みちのパートナー・陽一(永山瑛太)も帰宅したことでニアミスするところだったが、すんでのところで鉢合わせは回避。新名は「反省している、家に行こうなんて非常識なこと」と言っていたけど、新名のなかではリアルに家庭にまで踏み込まなければ二人の関係はまだ「常識」の範囲内ということなのか。

これ以上進んだらお互いにすべてを失うとわかっている。それでもエレベーターで隣同士になると、こっそり手の甲を触れ合わせ、そのまま小指を絡めてしまう。この描写、もはや前戯じゃん……。しかも仕掛けているのは新名からだ。

会社の研修旅行でも、新名のアプローチはすごかった。あの日、キスを拒絶されなかったことで何をしても拒否されないと思ったのだろうか。パートナーの楓(田中みな実)に対してはできないことをみちにすることで、征服欲を満たしているようにも見える。

新名は「好きです」とみちに伝えていたけど、その覚悟はどれほどのものかまだわからない。

セックスができればゴールなのか?

久しぶりに向けられたひたむきな情熱を、思わず受け入れかける奈緒の演技も目を見張るものがあった。新名に求められながらの涙。タイミングの良さに思わず驚いた。この涙の意味を考えるとあまりにも切ないが、きっと新名はその涙に陽一への思いがあったなんて気づいてはいないと思う。

それにしても「好き」と伝えただけで、そのまま浴衣の紐をほどくまでの展開に進んでしまうとは。「セックスレス」という共通の性にまつわる悩みを共有していたから、お互いに性行為へのハードルは低いのはわかる。でも、セックスができればいいという話だっただろうか。

そもそもは誰かに「愛されたい」「大切にされていると感じたい」という思いを解消したいという気持ちが根底にあったはず。新名の腕の中で「もう一度こんな風に愛されたかった」と思ってしまったみちだけど、「愛される=セックス」というのはあまりに短絡的だ。

もちろんセックスは愛を確認するための手っ取り早い行為ではあるけど、結婚相手以外との場合、セックスの代償はあまりにもでかい。

みちの涙のおかげで一線を越えることなく、いったんお互いに踏みとどまれたのは幸いだったのかもしれない。だって「不貞行為」こと肉体関係は、民法で定められた離婚事由になりうることだから。

不倫や浮気に明確な規定はないけど、体の関係まで進んでしまえばそれは損害賠償の対象になる。二人の関係を見ながら、そんなことまで考えてしまった。

楓とみち、それぞれの3分間

一方で、すでに三島結衣花(さとうほなみ)と「不貞行為」を行ってしまった陽一は気が気でない。罪滅ぼしの意味もあるのか、みちにいつも以上に優しくあろうと努めている。

料理を率先して作ってくれたり、早く帰ってきてくれたり、迎えにきてくれようとしたり。今までの陽一のコミュニケーション不足を思えば、それらの行為はちゃんと愛を感じさせる行動になっているといえる。

ちょっと前のみちならそれらの行為に嬉しさを感じて「愛されている」「大事にされている」と思えたはず。でも今のみちにとってはその行為もなんだか疎ましい。

陽一にとってはそのことで浮気がバレたのかという焦りもあるのだろうけど、自分勝手に三島を求めてしまった代償はやはりでかい。現状はみちと三島の両方を傷つける結果になっている。

三島は過去にも不倫経験があるようだけど、みちの後輩の北原華(武田玲奈)のように、日陰の恋を楽しむタイプなのだろうか。それとも陽一に対して本気になってしまっているのだろうか。陽一の背中に向けて「いかないで」と漏れた瞬間、彼女の中で禁断の扉が開いてしまったように感じた。

楓のためにカモミールティを淹れる3分という時間を大切にしていた新名は、いつしかその3分にも耐えられなくなっていた。しかし、みちに対してはオリオン座の形に似た砂時計を贈ることで素敵な3分間を提供しようとしている。その皮肉といったらなかった。

そしてこれまであんなに自分から指を絡めておいて、「もうあなたに指一本触れない」宣言は揺さぶりがすごすぎる。「いままでみたいにそばにいてほしい」は、肉体関係なしで恋愛めいた間柄のみを継続させたいということだろうか。

みちが「そばにいる」と返事を返したところで、3分の砂は落ちきった。ひっくり返しても、時間はもう戻せない。

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