『風間公親-教場0-』シングルマザー役・新垣結衣と生見愛瑠の涙の演技と、背中で受け止める木村拓哉の安定感

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『風間公親-教場0-』シングルマザー役・新垣結衣と生見愛瑠の涙の演技と、背中で受け止める木村拓哉の安定感

社会で孤立しやすい人が少しでも生きやすい世の中になってほしいと強く思った。シングルマザーだってそう。5月1日放送の『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)第4話は、風間公親(木村拓哉)と隼田聖子(新垣結衣)のバディ後編。今回の事件の容疑者はシングルマザー。同じくシングルマザーとして娘を育てている隼田にとってはつらい事件なようで……。

我が子を守りたいゆえに起きた悲劇

被害者は工芸家の浦真幹夫(淵上泰史)。自宅のリビングで殺害され、イタリア人の婚約者によって発見された時はすでに死後4日ほど経過していた。容疑者(犯人)は19歳の大学生・萱場千寿留(生見愛瑠)。浦真との子供を妊娠していたが、堕ろすように要求されたことですでに別れている。

浦真の新しい交際相手のイタリア人女性は病気のせいで妊娠できない体になっていたが、子供が好きで子育てをしたいらしい。そこで浦真は、千寿留の子供を認知するから渡してほしいと詰め寄る。これもまた、身勝手な男の要求だった。

大理石の灰皿で一撃という千寿留の咄嗟の犯行は、まさにサスペンスの王道展開。でも我が子を誰にも奪われずに済むと思えば、罪の意識や後悔より安堵のほうがはるかに勝っていたに違いない。

とはいえ、警察に捕まったら結局、子供と離れ離れになってしまう。それだけは避けなければならない。千寿留は証拠を隠滅して、浦真の家を後にする。

犯行シーンの直後に規制線の張られた現場に刑事が到着するシーンがつながると、思わず『古畑任三郎』を思い出してしまいワクワクする。さぁここからが本題。

到着した風間を前に、隼田は所見を報告する。見ればわかることを口にしても、この指導官には無視されるだけ。風間を満足させる答えを言うには、最低限なにかの推理を働かせる必要がある。

「犯人は顔見知りだと思います」。後頭部にある打痕の位置が真横よりやや正面にあり、背後からではなく向き合っているときに殴られたと推測した結果だった。これはグッジョブ。それに、現場に少しでも異変や疑問があれば、そこを徹底的に洗うという捜査の鉄則もちゃんと心得ていた。

隼田に悔恨の念を抱かせる、虐待容認の過去

シングルマザーの隼田にとって、千寿留と向き合うのは相当しんどかったに違いない。担当が瓜原潤史(赤楚衛二)だったら、「気持ちがわかる」と千寿留に同情しすぎていたかもしれない。隼田も瓜原ほどではないものの、同じシングルという境遇の容疑者を前に、思うところがたくさんあったはずだ。

誰にも助けてもらえず孤立出産をしたことや、まだ病院にも行けていないことは、刑事ではなく子を持つ母として心配したのだと思う。

千寿留に子供への虐待の疑いがあったことも、余計に隼田を苦しめた。なぜなら隼田も離婚した夫が娘に虐待していたことを知りながら、見て見ぬ振りをしていた過去があったから。

以前「君の弱点は弱音を吐けないこと」だと風間に言われた隼田は、指導官部屋で初めて風間に弱音を吐くことができた。

隼田の元パートナーは、警察学校の同期。行為の内容はあきらかにいきすぎたしつけであり、児童虐待の域にあった。でも、隼田自身も日々の仕事で満身創痍になっていた中、娘をうっとうしく感じる瞬間がなかったかといえば嘘になる。育児ノイローゼの線も否定できない。

それでも、市民を守る警察官の夫婦が二人してこんな状態になってしまうなんて。あまりにも悲しすぎる。

隼田がのちに少年係で児童虐待の防止に取り組んでいたのは、その罪を償うため。涙を流しながら語る新垣結衣と、それを背中で感じる木村拓哉。第4話のハイライトは間違いなくこのシーンだった。目線を交えぬままでも俳優同士の緊迫感が伝わってきた。

傷つく人たちを減らすために隼田ができることとは

今は自治体が分娩費用を負担してくれる助産制度がある地域もある。それから出産育児一時金という制度も。金銭的に余裕がないシングルマザーも、どうにか赤ちゃんを産んで育てていけるための行政の支援を受けることもできる。

親権について家庭裁判所の争いになったとしても、千寿留が不利になることはなかったと思う。ただ、こういう知識はあまりに共有されていない。情報格差と言ってしまえばそうなのだけど、必要な人に必要な情報が当たり前にスムーズに届くシステムづくりを行政にはもっとがんばってほしい。千寿留の涙を見てしまうと、余計にそう思う(唇を震わせる生見愛瑠の演技が素晴らしかった)。

事件解決後、警察を辞めると話す隼田。風間は娘としっかり向き合って話をしろと語尾を強くして言う。風間が家庭のことにも口を出すのは、それが仕事をする上でも大事なことだから。「子育てしながら警察で働くものとして意見書をまとめてくれ」という風間の台詞は、仕事を辞めるなと暗に伝えたものだった。

子供の虐待は幼少期にも青年期にも影響を与える健康問題でもあり、世代間連鎖の問題でもある。虐待に苦しむ子供、悩んでいる親のためにできることが隼田にはある。風間が風間道場に隼田を引っ張ってきたのも、最初からそのつもりだったのかもしれない。

現状、深夜帯にも及ぶ刑事の仕事は隼田にとって負担が大きい。刑事としての素質は見込みつつも、今はできる範囲で自分のなすべき仕事を続けてほしいと思っているのだろう。

隼田と伊上幸葉(堀田真由)の友情めいたやり取りが好きだったのでここでの“退場”は寂しくもあるものの、次は『教場II』のラストに出演していた遠野章宏(北村匠海)が登場。風間の片目を奪った事件がついに動くのか……?

(文:綿貫大介)