『風間公親-教場0-』初共演とは思えない木村拓哉と新垣結衣の信頼関係、世間のイメージに抗い続けた二人の新バディに注目

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『風間公親-教場0-』初共演とは思えない木村拓哉と新垣結衣の信頼関係、世間のイメージに抗い続けた二人の新バディに注目

前回のラストで、風間道場の門下生は赤楚衛二から新垣結衣へとバトンタッチした『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)。4月24日放送の第3話では、風間公親(木村拓哉)と新人刑事・隼田聖子(新垣)の新バディ体制がスタート。シングルマザーとして幼い子供を育てながら、刑事の仕事が務まるのか。そんな隼田自身の心の葛藤も気になる。

初共演なのに強固な信頼関係が見える木村拓哉と新垣結衣

「問題は、これが自殺か他殺か。どう思う?」と隼田に問う風間。今回の事件の争点はそこだ。山間部の一軒家で発見された変死体。外傷がないことから、毒物による中毒死の可能性が高いようだが。

視聴者はもう犯人および犯行目的を知っているので、まずは事件をかいつまんで説明したい。犯人は、愁明医科大学の法医学研究室の教授である椎垣久仁臣(佐々木蔵之介)。

服毒自殺を図った遺体の司法解剖中、助教の宇部祥宏(浅利陽介)に胃の切開を頼むと、宇部は胃の中に溜まった青酸ガスを浴びて倒れてしまう。こういう場合、防毒マスクを着用してから解剖を始めるのが鉄則なのに、うっかり忘れたままメスを握らせてしまったことによる中毒事故だった。

後遺症に苦しみ数日休んでいた宇部の見舞いに訪れた椎垣は、宇部から正直に事故を大学側に報告すると告げられる。しかし次期学科長に就任することが決まっていた椎垣は、事故の発覚を恐れて宇部を自殺に見せかけて殺害したのだった。

風間は他殺の線で考えている上で、隼田に捜査上の質問を矢継ぎ早にぶつける。直前に隼田は、捜査一課の刑事・谷本進一(濱田崇裕)と尾山柔(結木滉星)から「いいか、風間さんの質問は絶対に答えろ」「パスはなし、すぐに答えろ」と風間攻略の助言を受けていたこともあって、それを即実践。

「自殺か他殺か、どう思うか」の質問には間髪入れずに「わかりません!」。その後も反射神経でとりあえず答えようとするやりとりはとても滑稽だった。コミカルさはもちろんながら、隼田はとても真面目で素直な人物なんだろうなと伝わってくる。

それにしても、“キムタク”と“ガッキー”。世間がいつのまにか愛称をつけ、それが定着して独り歩きするほどの人気を誇る二人の共演はとても感慨深いものがある。

そして本当に初共演なの? と驚いてしまうほどの、この相性の良さはなんなのだろう。二人が対峙しているシーンにはちゃんと、何度も共演したことがある者同士がみせる阿吽の呼吸のような信頼関係が見えていた。

あるとき自然発生して自分の意志とは関係なく世の中に広まった“キムタク”という愛称について、最初はとまどっていたと木村拓哉はかつてエッセイの中で書いていたことがある。

みんなが勝手にいろいろなイメージを描いて遊ぶ「共用物」である“キムタク”について、自分自身が乗っかって楽しく遊ぶこともあるが、いつもは楽しくない、と。

勝手につけられたパブリックイメージを受け入れながらも、本当の自分とは乖離した虚像に対しては抗いたい気持ちもある。そして、“ガッキー”もきっと同じ思いを抱いたことがあるに違いない。

シングルでの子育てと刑事の仕事は両立できるのか

“ガッキー”は母親役なのだとオープニングからすぐわかった。隼田は朝ごはんの準備と同時に夕飯のおかずの準備をする(いつも帰りが遅いのだろう)。小学校4年生の娘・ゆかり(諏訪結衣)もそれに甘えるだけでなく、自分のことは自分でしながら、さりげなく母用のお茶を用意してあげていた。

並べられた写真立てに写っていたのはイベントごとの家族写真。母と娘しか写っていないことから、母子家庭だとわかる。「出来ることは一人で。出来ないことは二人で」を合い言葉に(そのときの中指でこめかみを指すポーズもかわいい)、二人で助け合って仲良く暮らす様子はとてもほほえましかった。

しかし、母子家庭では仕事と育児を両立するのは難しい場合が多く、実際に悩みを抱えるシングルマザーはたくさんいる。この二人だって、楽しいだけの生活ではないことは容易に想像できる。

捜査が終わり、隼田が帰宅するのは深夜。家に着く頃には、娘はもう就寝中というすれ違いの日々も描かれていた。それに加えてゆかりが熱を出し、慌てて帰宅するというエピソードも。

そこに透けて見えたのは、子供と一緒にいられる時間が少ないことで、いつも寂しい思いをさせているのではないかと心配になる親心だった。実際、共働きでもそうだろうし、シングルであるなら助けてくれる人が少ない分、余計にそうだと思う(警察官という仕事柄、シングルでもそこまでお金に困っていないというのは救いなのだけど)。

風間からの着信には「連絡せず申し訳ありません」と事実を謝罪するに留めて、「娘が熱を……」と説明しなかったところは、子供を言い訳にしないという隼田の覚悟が感じられた。もちろん連絡がない理由を問わない風間も、最初から事情は察していたはずだ。

後進への指導が殺人のきっかけになるという皮肉

医学部生(西垣匠)との会話もヒントとなり、事件の真相にたどり着いた隼田。そもそも椎垣が宇部にメスを握らせたのは、経験を積ませてはやく一人前になってもらうため。大学の規定違反ではあるが、教授としての後進を育てていく義務を考えてのことだった。

後進の教育という意味では風間道場も同じだ。「私みたいな新米に任せていたら時間がかかります。犯人に逃げられたら……」という隼田の言葉に対して、「だとしたらそれも仕方がない。一人の犯人を取り逃がしても、次の世代の捜査能力を育てる方が大事なこともある」と風間は答えていた。

未来を見据えれば後進指導は大切なこと。でもそれが今回の殺人事件のきっかけになっていたこと、そしてそもそも司法解剖医までが罪を犯すという事実にはあまりにやりきれないものがあった。

疲れもあってか倒れてしまった隼田に対して、転属願の紙を突きつける風間。隼田の今後も気になるが、事件と同時進行で描かれる“千枚通しの男”のことも気になる。以前風間が逮捕した男が凶器として使っていたことがあるようだが、伊上幸葉(堀田真由)のバッグに入れられた千枚通しは新たな犯行声明なのだろうか。

(文:綿貫大介)

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