『あなたがしてくれなくても』奈緒と岩田剛典は“戦友”?花束に込められた真意が届かない、それぞれの夜

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『あなたがしてくれなくても』奈緒と岩田剛典は“戦友”?花束に込められた真意が届かない、それぞれの夜

花を贈るという行為はなんのためにあるのだろう。4月20日放送の『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~)第2話では、吉野みち(奈緒)と新名誠(岩田剛典)それぞれの夫婦のける、花にまつわるエピソードが登場する。

大切な人を喜ばせたい。応援したい。癒されてほしい。感謝を伝えたい。頑張ってほしい。いろいろな意味を乗せられる花。それぞれの夫婦にとってはどんな意味があったのだろうか。

学ぶ機会も相談する機会もないから問題になる「セックスレス」

第1話は夫婦間でセックスレスの状態にあると互いに打ち明けあったみちと新名。誰にも打ち明けられず、人知れず悩みを抱えていただけに、境遇をともにする同士であることを知れたことで少し心が軽くなったように思う。だからこそ秘密を共有する、“戦友”関係になっていく。

ただそのときに新名がみちを抱きしめてしまうことで、その行為になんらかの意味があったのではないかという淡い期待に似た思いをみちは抱いてしまった。

その後二人はお互いを意識しないように、会社でも余計に距離を保つようになる。無理もない。だって、なにかしらの衝動に走ってしまったらその先には地獄しか待っていないのだから。

みちはパートナーの陽一(永山瑛太)を、新名はパートナーの楓(田中みな実)を愛していることに現時点では変わりない。ただ、セックスレスに至ってしまっている八方塞がりな状況に対して悩んでいるのだ。

もちろん陽一だってみちを、楓だって新名を愛している。ただ、していないだけ。セックスレスの問題は家庭それぞれの事情があり、万人のための正解例があるわけでもない。双方で解決すべき課題なのだけど、現状はどちらか一方が一人で重く抱え込んでしまっているという状況になっている。

そういえばNHKの朝の情報番組『あさイチ』でもセックスレス特集を放送した回があった。みちと新名が打ち明けあって安心したように、誰にも相談できずに一人で悩んでいる人が多い話だからこそ、その特集を興味深く見た人も多かったと思う。

しかし、朝ドラのあとの番組で「セックスレス」を扱うことに、放送時は「朝から話す内容ではない」という声もあがっていた。その反応は、性の話をオープンにすることを潔しとしてこなかった日本の性教育の影響が大きい。

日本は先進国の中で一番性教育が遅れているといわれている。性を肯定的にとらえるために、自分や大切な人を守るための性の知識は大切だし、本来もっとオープンに話さなくてはいけないテーマのはずなのに、日本だとそれは「タブー」とされてしまっている。

愛し合ってパートナーになっても、なにかのきっかけで関係にひびが入ったり、身体的状況が変化して、性生活に影響することは誰にだってあることなのに、私たちはセックスについて学ぶ機会や、相談する機会があまりに与えられてこなかった。

海外であれば性の問題を専門とするセックス・セラピストに相談するなどカジュアルにカウンセリングを受ける文化もあるけど、日本にはそんな発想にまで至りにくい構造がある。

だからこそ、このドラマは成立しているし共感の声が高まっているように思う。そして、ドラマ全体に漂う淫靡な湿っぽさは日本のエンタメという感じで楽しめる。

花の名前を知る男と、良心の呵責を花で済ませる男

新名は楓との結婚記念日に向けて、プレゼント用の花を買いに行く。選んだのはトルコキキョウ、アルストロメリア、カラー。やはりモテる男はちゃんと花の名前を知っているのだからすごい。花言葉まで理解していたかはわからないけど、「永遠の愛」「持続」「美」などがそれに当たる。

その光景をたまたま目撃したみちは、花をもらえる楓のことをうらやましく思ってしまう。「花が嬉しいんじゃない、その奥にある、気持ちが嬉しいんだ」。愛、感謝、応援……贈る人の思いが花にはちゃんと宿っているから。そういう気持ちを、みちは欲している。

しかし、当の楓は仕事で記念日のディナーに間に合うことはなかった。ヘトヘトでホテルに合流するも、疲れていて新名にうまく取り合えない。新名は記念日のムードに乗じてレス解消を狙うも、発してしまった「今日だけは頑張ることはできない?」という台詞はさすがにキツかった。セックスは「頑張る」ことなんだろうか。

一方で陽一は、自身が店長を務めるカフェで働く三島結衣花(さとうほなみ)と急接近。東京のきれいな夜景を背景にバイクの二人乗りという最高のシチュエーションで二人は盛り上がり、そのままキスをしてしまう。

夫婦の関係がぎくしゃくしたなかで、逃げるかのように他の女性といい感じになってしまうとは。なんて典型的でありがちな男なんだろう。一線を越えないまま、唇を拭ってみちの待つ家に帰宅したその手には、小さな花束があった。

それはスーパーの花売り場で売っているような、簡易的な花束だった。もちろん、どこで買おうがどんな値段だろうが、花に優劣なんてない。リボンなんて付いていなくても、ビニールにバーコードがそのままついていようとも、みちはうれしかった。花をプレゼントしてくれる、陽一のその気持ちが。

しかしその花に込められた陽一の気持ちは、愛でも感謝でもなく、自分を罪悪感を埋めるためでしかなかった。花束で罪の意識がなくなるなら、安いもんだ。

そして三島との欲情で気持ちを高ぶらせたまま、みちを求めてしまう。陽一の行動の真意は、みちの知るところではないのだけど。できることなら、みちにはこのまま知らないままでいてほしい。だってあまりにひどい仕打ちだから。

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