東南アジアのサッカーが“ニッポン流”で成長!欧州に対抗できる可能性とは?

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3月4日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、タイとカンボジアのサッカーを特集。現地取材を通じて、日本サッカーが両国に与える影響を探った。

アジアサッカー全体のレベルアップが日本の成長につながるというコンセプトのもと、Jリーグでは11年前からアジア戦略を進めており、これまでアジア各国にリーグ運営と選手育成のノウハウを提供。この戦略には、総人口およそ7億人、GDP300兆円を超える巨大なエリアを新たなマーケットにする狙いもある。

そんなアジア戦略の中でも、タイの代表選手であるチャナティップ・ソングラシンの影響は絶大だった。2017年にはチャナティップが北海道コンサドーレ札幌に移籍し、母国のスターが繰り広げるプレーを一目見ようと、北海道を訪れるタイ人観光客が急増している。チャナティップの加入が追い風となり、同年からはタイでJリーグの生中継もスタート。タイ語版のJリーグ公式フェイスブックは、日本の倍以上となる70万人がフォローする人気コンテンツになっている。

タイでのJリーグ人気は今も健在で、昨年にはバンコクの中心部にJリーグの情報発信基地「Jリーグ・ザ・ルーム・バンコク」がオープン。Jリーグと現地のプロモーションがタッグを組んで設立したこの施設では、JクラブのユニフォームやJリーグの歴史を彩ってきたレジェンドたちの写真が飾られている。シーズン中はサポーターが集まるパブリックビューイング会場としても賑わっており、あるファンは「タイでJリーグの人気が上がったのは、生中継が始まったおかげです」と教えてくれた。

別のサポーターは、Jリーグとタイリーグの違いについて、「Jリーグと日本人の魅力は、規律正しいこと。そして、タイよりも厳しい練習をしていることですね」と持論を展開。続けて「タイと比べて、サポーターにもまとまりがあって世界のトップクラブにも負けない迫力が魅力です」と語った。

日本のサッカー情報を発信しているタイ人インフルエンサーによれば、チャナティップの成功をきっかけに、Jリーグに挑戦するタイ人選手が増加しており、こうした一人ひとりの物語もタイでのJリーグ人気を押し上げた要因だと分析する。

番組の取材班は、そんなタイでのJリーグ人気を実感するある乗り物と遭遇。バンコク市内ではJリーグのラッピングが施されたトゥクトゥクが走っていた。トゥクトゥクは去年秋に行われたJリーグ・アジアツアーに合わせて作られた特注品で、J1全18クラブのカラーにラッピングされているという。

番組MCの勝村政信は「僕らがヨーロッパのクラブを見ているように、東南アジアの皆さんはJリーグを見てくださっている」と言及。東南アジアの選手がJリーグに来ることについては、「Jリーグで知識とかいろんなものを吸収して、地元に帰ったり、ヨーロッパに旅立ったりする選手が出てくるから、すごいことになりますよ」と想像を膨らませていた。

そして、タイの隣国であるカンボジアのサッカーも、“ニッポン流”を取り込んで、大きく成長している。カンボジアの代表監督兼GMといえば元日本代表の本田圭佑だが、カンボジア国内リーグの中枢にも、ある日本人が携わっていた。トップリーグがプロ化されたカンボジアでは、バルセロナやJFA、FIFAに勤務し、サッカービジネスのトップで活躍した斎藤聡をCEOとして招聘。手腕を買われた斎藤は「もともとはオーナーが自分のポケットマネーを出して選手の給料を払うなど、ただの趣味でしかなかったので、ビジネスとして回る仕組みを作らなきゃいけない」と、構造改革に着手した。

まず目指したのは、クラブ経営の健全化。CEOに就任した1年目の2021年には、クラブの代表者を集めて議論を重ね、ビジョンの共有を図った。また、クラブの成長を促すために厳しい基準のクラブライセンスを導入。新しいリーグはこの基準をクリアした8クラブでスタートしている。各クラブがチーム運営にも力を入れたことで、9割を超える客席が埋まるなど、早くも成果が出ているのだとか。

他にも、リーグ人気を高めるために、試合中継の強化にも注力。改革を託されたのは、日本人ディレクターの斎藤陽介だった。斎藤はかつて横浜F・マリノスや海外でもプレーした元サッカー選手。引退後のセカンドキャリアに選んだのが、スポーツ映像制作の道だった。

斎藤はカメラワークや見やすいテロップのデザインなど、魅力あるサッカー中継の基礎を現地スタッフにレクチャー。結果、リーグ中継は50万人が視聴する人気コンテンツへと成長した。カンボジアでは20年に渡る内戦の影響もあり、国民の平均年齢が23.9歳と日本の半分以下。リーグのスタッフも若者が多く、斎藤は「これからの人材がたくさんいる国。新しいことをやろうとしたときに、すごく積極的にやってくれるので、教える立場ではあるんですけど、そこから学ぶことも多い」と思いを巡らせる。

他にも、カンボジアではサッカースタジアムを中心としたホームタウンの建設や、子どもたちが無料で通えるサッカースクールの設立、バイクメーカーと組んでファンにバイクを安く提供する計画など、サッカーで国を豊かにするための様々な取り組みが行われていた。

さらに、湘南ベルマーレではユース選手たちがカンボジアの施設を訪れ、子どもたちにボールや用具を届ける活動を実施。こうした一連の取り組みについて、勝村は「もう夢しかないでしょう。素晴らしいね」と絶賛し、「日本人が良い風を吹かせているでしょ。人もインフラも進んでいって、そうすると東南アジア全てにおいて、日本も含めて考えていくと、ヨーロッパに対抗できるんじゃないかな」と期待を寄せていた。

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