『美しい彼』萩原利久“平良”と八木勇征“清居”が紡ぐハッピーエンドのその先

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『美しい彼』萩原利久“平良”と八木勇征“清居”が紡ぐハッピーエンドのその先

ハッピーエンドのその先を見たい人もいれば、見たくない人もいる。

恋は、結ばれた瞬間がクライマックス。そこからはゆるやかに下っていくだけ。日常に陳腐化されていく愛に幻滅するくらいなら、ずっと幻想のまま閉じ込めていたい。そんな気持ちも確かにわかる。

けれど、ドラマイズム『美しい彼』(シーズン2)(MBS、毎週火曜24:59~/TBS、毎週火曜25:28~)はハッピーエンドのその先を行く。

そこに待っているのは、成功したフォーマットの焼き直しじゃない。もっと甘美な熱狂の始まりだ。

寒波対策に必要なのは、八木勇征です

これが夢ならば、どうか醒めないでほしい。そんな平良一成(萩原利久)みたいなことを願ってしまった。

このドラマを観ていると、僕は息を吐くことさえ大罪に思えてしまう。自分が吐いた二酸化炭素が、画面越しに平良と清居奏(八木勇征)の神聖な世界を汚してしまったら……。ありもしないことを想像して、でも2人の世界をずっと見続けることができるなら、どんな罰も甘んじて受けよう。と、喜びに震える。

凪良ゆうの原作の中で噛みしめてきた、平良と清居の同棲生活。それがついに萩原利久と八木勇征で見られる。その破壊力は、想像を遥かに超えてきた。

目覚めのベッド。平良が、清居の前髪をいとおしそうにかき上げる。額があらわになった清居は、眉の凛々しさが際立って、平良と同じタイミングでつい口にしてしまった、「奇跡だ」と。

美しき清居を神のように讃え崇める平良と、平良に神としてではなく恋人として接してほしい清居。果てしないほど求め合いながら、まるで噛み合わない2人の関係はシーズン2でも変わらない。

特にこの第1話では、いつ捨てられてもおかしくないと思っている平良と、いつか誰かにとられてしまうことが不安で仕方ない清居の対比が鮮やかに描かれていて、「好き」という出発点は同じなのに、こんなにも見えている景色や心の内が正反対な平良と清居に、地球上のいとしさを全部かき集めて爆発させたような気持ちになる。

個人的には、2人の寝室がダブルベッドとかじゃないのがたまらない。平良がもともと使っていたベッドを清居が使い、平良はかしずく従者のように横にエキストラベッドをくっつけるだけ。そんなところが“ひらきよ”らしい。

コップに立てかけた2人分の歯ブラシに、色違いの半纏。あの頃にはなかったいくつものアイテムが、平良家を彩っている。

清居は思った以上に甘えたがりで、揚げたてのエビコロを前に「あーん」と口を開けて待っているのに、平良はそれに気づかない。

平良が女の子に連絡先を渡されて怒るところも、偉そうなのに、いじけた子犬みたいで。洗面所で「平良のくせに、モテやがって」とヤキモチを妬くところも、「今日は、するからな」と恥ずかしそうに視線を落として下唇を噛むところも、八木勇征が己のパラメータを「可愛さ」に全振りし、観る者の中枢神経を焼き焦がす。

たぶん地球にサーモグラフィをかけたら、『美しい彼』を視聴している世帯だけ局部的に真っ赤になっている。八木勇征がいれば一瞬で体温上昇。これはもう生きるヒートテックだわ。最強寒波対策に必要なのは、エアコンでも湯たんぽでもなく、八木勇征です。

もはや事務所の人の前でコーヒーを飲んでいるときさえ両手持ちで、いつの間にかナチュラルボーンお姫様になっているし、ドレスアップした平良にまごつきながら「惚れ直すくらい、イケてる」と言って、その恥ずかしさに耐えきれなくなって平良を蹴り上げるところとか最強ワガママプリンセス。平良だけが、キングをお姫様に変える魔法を使えるのだ。

“ひらきよ”を見られるなら大増税も納得しそう

萩原利久も猛威を振るっている。「昨日、しつこくしすぎたから」も「今日も、いいの?」も、文字だけ見ればおじさん感がすごいのに、平良ならキモいけど最高になってしまう。

うじうじと悩んでいるくせに、清居がコーヒー代を払おうとした瞬間、いきなり俊敏になって自分のスマホをかざす“下僕”魂が平良らしいし、せっかく清居にオシャレにしてもらったのに「(マシ)になったような気がしないでもないみたいな感じがしないでもないんだけど……」と自己評価が小学1年生のサドルの位置より低い。そんな“卑屈な王様”を萩原利久が骨の髄まで平良となって生きてくれるから、みんな平良が好きになる。平良の気持ちにうなずいてしまう。

どのシーンも「これが見たかった」というものばかりで、こんな幸せな景色を無料で拝ませてもらったら、もうこの後、どんな不幸が訪れても致し方ないというレベル。いきなり大増税とかされても、「まあ、あの“ひらきよ”を見られたしな……」と納得してしまう(でも増税は嫌です)。

さらに、TVドラマ『美しい彼』公式ビジュアルブックのためだけに凪良ゆうが書き下ろした「金木犀」のエピソードを汲んだ場面もあり、まさに原作とファンに最大のリスペクトを払った仕上がりとなっている。

こんな幸福を、ドラマ、さらに映画と味わえるなんて……。これから始まるハッピーエンドのその先に、もう正気を保てる自信はない。

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