岡田将生、中井貴一と追求していく演技の壁「自分にとってキーになる作品」【連載PERSON】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、木曜ドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系、毎週木曜21:00~)で主役を務めている岡田将生さんです。

岡田さんは2006年にデビュー。2009年には映画『重力ピエロ』『僕の初恋をキミに捧ぐ』など出演作4作が公開され、『第33回日本アカデミー賞』新人俳優賞、『第52回ブルーリボン賞』新人賞など、同年の新人賞を総なめにしました。その後も作品に立て続けに出演。2023年夏には映画『1秒先の彼』 の公開も控えています。

『ドクターX』シリーズの中園ミホさんが脚本を手掛ける本作で、岡田さんが演じるのは、アメリカ帰りの“フリーランス看護師=トラベルナース”那須田歩。医療知識があって仕事ができるものの、プライドが高く態度もデカい……。そんな彼と同時期に「天乃総合メディカルセンター」にやってくるのが、謎のスーパーナース・九鬼静(中井貴一)です。まるでタイプの違う彼らが、患者のみならず、医療従事者や自分自身すらも救っていく! 

新時代のナイチンゲール・コンビの活躍が楽しみな『ザ・トラベルナース』。岡田さんに、作品への取り組み方、中井さんとのコミュニケーションについてお聞きしました。

リアリティを追求したドラマ

――歩はひとクセあるキャラクターです。役作りで準備したことを教えてください。

「トラベルナース」の存在を初めて知ったのですが、事前にスタッフの方々が資料をまとめてくださったので、それを見て勉強しました。歩はアメリカで優秀なナースで、もちろん日本でも通用するレベル。帰国してからコミュニケーション能力不足が露呈していく中、静さんと出会うことによって“変わっていく姿”を大切に演じようと思いました。

――歩にはどんな印象をもちましたか?

日本社会とアメリカ社会って全然違うじゃないですか。アメリカで生き抜くためには、歩みたいな精神力がないとやっていけないだろうし、そこはリスペクトするポイントかなと思います。(歩は)ほかのナースの方々と仕事のスピード感が違うし、(周囲から)「面倒くさいヤツ」と思われているけど、中園さんが、要所に“愛される抜け感”を入れてくださったので、演じていて“カワイイな”と思っていました。

つながりって反発すればするほど深くなっていくと思うんです。日本人ってやっぱり“言わない”じゃないですか。多分、アメリカでは思っていることをその場で言うし、それが歩の良さにもなっていて……。日本は、衝突したらそのまま離れてしまうけど、アメリカだと、お互いよりよい環境にするために、話し合いをすることが多い。日本人が避けがちなところを、貴一さんとお芝居でうまくやっていけば、より面白い関係性・面白いドラマになるのかなと思っています。

――本ドラマの会見では、岡田さんの発言でみなさんが笑顔になるなど、雰囲気の良さを感じました。現場で愛されているなと感じるエピソードがあれば教えてください。

いまだに人前に慣れなくて緊張もします。そういう意味だと、今年33歳になったんですけど、どこかで“引っ張っていかなきゃいけない”と思いつつ、そうじゃない自分もいるので、そこはウソをつかず、みなさんと接したいと思っています。

貴一さんもおっしゃっているんですけど、ナースは横のつながりがあって、みなさんと足並みを揃えて進んでいかないといけない。そんな中で、寺島しのぶ(愛川塔子役)さんや野呂佳代(森口福美役)さんが、すごく現場を盛り上げてくださるんです。スタッフも理解して現場の空気を作ってくださるから、誰かがNGをだしても、ただ盛り上がるだけのNGというか(笑)。すごくいい空気感で撮影しています。

みなさんがナースハウス(看護師寮)でごはんを食べているときもそうです。野呂さんが(役衣装で)食卓に出てくる食材が描かれたTシャツを着ていらっしゃるのですが、それがすごく可愛くて……。エビフライを食べている野呂さんを見ていると現場がほっこりします(笑)。あと、監督の演出としてナースはオペ看(手術室で働く看護師)として入るので、食卓の準備が手術シーンを彷彿とさせる演出になっています。はたから見ているだけでも演劇っぽく、すごく面白いなと思いました。

――中井さんとは11年ぶりの共演となりますね。

以前、貴一さんとお仕事をさせてもらったときは、深いお芝居のセッションがなかったので、“いつか貴一さんとお芝居できるように頑張ろう”と思っていました。だから、時を経てまさかコンビで共演できるとは思っていなかったので、ただそれだけで純粋に嬉しかったです。

今回、すべてをさらけだして、貴一さんとドラマを作っていくことが、正解なのかなと思っていて。空いている時間に、ずっとお話をさせていただいています。僕も作品と向き合っているつもりだったんですけど、(中井さんは)その何倍も深く考えて、向き合っていらっしゃって勉強になりましたし、貴一さんからは「お前がやりたいようにやりなさい。全力で守ってあげる」という言葉をくださったので、甘えさせていただきました。全力でぶつかっていけたのかな、と思っています。

――中井さんと共演したことで、今後の俳優人生が変わりそうな予感はありますか?

変わると思います。40、50歳になったときに、お芝居も人間力も含めてこのドラマが「自分にとってキーになる作品だった」と思うんだろうな、と感じていますね。

――今回、ドラマに入る前に中園さんとお会いしたそうですが、どんなお話をされたんですか?

お会いするのが初めてだったので、自己紹介やいま自分が考えていること、仕事とどう向きあっているのかを中園さんと内山(聖子)エグゼクティブプロデューサーにお話させていただきました。企画の段階から、脚本家の方とプロデューサーの方と会うのは初めてだったので、よりいっそう力が入りましたし、よりよい現場にしたいなと思えたので、すごくいい時間だったと思います。

――医療系のドラマに出演することへの思いを聞かせてください。

職業ものやスポーツものの作品を見たときに、ここ嘘っぽいなと思うときがあると思うんです。今回、ナースの方々も見てくださると思うので、貴一さんとは、注射をするシーンやベッドシーツを換えるシーン、会話のシーンなど「わかるわかる」と共感を得られるように作っていこう、とお話をしていました。そういう意味でも楽しんでもらえる作品になっていると思います。

“毎日来たくなる現場”がベスト

――ここからは、岡田さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。俳優という職業に就くにあたって、影響を受けたテレビ番組を教えてください。

宮藤(官九郎)さんのドラマですね。『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』などはずっと見ていて、10代のころ“宮藤さんの作品に出たいな~”と思っていました。

――いち視聴者としても、毎日ドキドキして拝見していた覚えがあります。

“やっぱりドラマって面白い”と思いますよね。(宮藤作品を見て)連続ドラマに出たいという気持ちになりました。

――2016年に宮藤さん脚本の『ゆとりですがなにか』にご出演されましたよね。

ひとつ夢が叶った瞬間でしたね。宮藤さんの脚本にはト書き(登場人物の動きや演出を指定した文章)がないんですよ。役者が台詞だけでどう動くかの自由があるのと、そもそも台詞が面白い。言いたくなる言葉がすごく散りばめられていて、そのドラマをやっていたときも毎日楽しかったですね。

――最近見て面白かったテレビ番組&配信系の作品はありますか?

最近だと(吉高由里子さん主演の)『最愛』というドラマがすごく面白いなと思いました。挑戦的でしたし、演出もすごく面白かったですし、ストーリーもよくできていたなと思いました。『ザ・トラベルナース』のような軸としては1話完結のドラマと、回を追うごとに真相がわかる『最愛』のようなストーリー系のドラマと、それぞれに面白さがあると思うんですけど、『最愛』は毎週追いたくなる連続ドラマだったなと思いました。

――役者をするにあたって大切にしている信念を教えてください。

どの仕事をやるときも「いい環境でいい芝居をする」ということですね。いい空気感を作ることをすごく大切にしていて、今回は貴一さんといい空気の中で、呼吸を合わせてお芝居できていますし、自分の手が届く範囲で、ひとつずつ丁寧にいい現場にしていきたいなと思います。

常々思うんです。毎日来たくなる現場が一番いいじゃないですか。だから僕がこうした立場でやらせてもらっている分、なるべく現場をいい空気にしておきたくて。たとえば時間が空いて、また現場に来るときってすごく緊張するんですよ。“いい緊張感”は必要なんですけど、そんな“いらない緊張感”をなくすためにも、より明るく、みんなが同じ方向を向いている現場にしたいなと思っています。

――その思いに至るまでに、なにかきっかけがあったんですか?

若いころ現場に行ったときに、緊張してなにもできなかった、ということがたくさんあったので、そういうのをなるべく排除したいなって。“どんな現場なんだろう”と思うゲストの方もたくさんいらっしゃると思うので、そういう不安な気持ちを緩和して、僕自身もなるべくコミュニケーションをとって、いい空気にしたいなと思っています。

――『ザ・トラベルナース』もゲストがたくさんいらっしゃいますよね。

貴一さんもたくさんフォローされる方なので、近くで勉強させて頂きました。毎話いろいろなゲストの方が来てくださいますが、いい空気で撮影ができたんじゃないかなと思います。

――最後に本作の見どころをお願いします。

ドラマならではの毎話すてきなゲストの方々が出てくださいます。ゲストの方に対して、ナースがどれだけ寄り添えられるかがひとつの見どころ。それに伴って、静さんと歩の関係性が少しずつ変化していきます。ドラマ数話を通して見ていただくと、歩の体に“静イズム”と呼ばれるものが少しずつ入っていくのが明確に分かって、“こいつ変わってきたな”と変化が楽しめると思います。

取材・文:浜瀬将樹
写真:フジタヒデ
スタイリスト:大石裕介
ヘアメイク:小林麗子

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